視覚障がい者向けの「ファンケルメイクセミナー」

夏真っ盛りの8月8日(木)、東京都盲人福祉協会(東京都新宿区)で視覚障がい者を対象にしたファンケルメイクセミナーが行われました。

2時間の中で、スキンケアからアイカラーなど、様々なメイクのコツを知ることができるセミナーです。

Spotliteの下田も飛び入りで参加しましたのでその様子をレポートします。

基本情報

株式会社ファンケルとは

1980年に創業し、化粧品を中心に、サプリメントや発芽米、青汁から肌着まで幅広い事業を展開しています。
化粧品事業では、無添加スキンケアをはじめ、防腐剤や香料など肌に負担となる可能性のある成分を一切配合しない「無添加」にこだわった製品を開発しています。
参照:株式会社ファンケルHP

ファンケルメイクセミナー

ファンケルでは、社会貢献活動の一環として、1988年より「60歳以上のシニア」や「特別支援学校」、「視覚障がい等のハンディキャップをお持ちの方」を対象に、明るく前向きな日々をお過ごしいただくため、「メイク」や「身だしなみ」のセミナーを無料で実施しています。

ファンケルセミナーHP

視覚障がい者向けのセミナーは、2013年度盲学校からの依頼があったことから始まりました。

昨年度、社会貢献活動は全国各地で163件行い、そのうち28件が視覚障がい者向けだったそうです。

視覚障がい者向けファンケルメイクセミナーに参加しました

今回のセミナーには、視覚障がい者10名が参加しました。

株式会社ファンケルCSR推進室の中川亜衣子(なかがわ あいこ)さんがメイン講師として進行されました。

セミナーの流れ

講師の説明を聞いて、半顔はスタッフが行い、半顔はご自分で実施して頂く「実践型」のセミナーです。

  1. ふき取り
    やさしい肌触りの「フレッシュクリアシート」を使用して、顔の筋肉に沿って顔の中心から外側に向かって皮脂や汚れをふき取ります。

  2. スキンケア
    「1プッシュで1回分」と目安量が分かりやすい「ビューティブーケ化粧液」を使用します。さらに、1本で5役の高機能ゲル「ピンつやホワイトゲル」を使い、顔全体にうるおいとピンとしたハリを与えます。

  3. ファンデーション下地
    日焼け止めと下地が1つになった「スキンケアベースブライトアップUV」を使います。
    顔の中心は濃く、周辺は薄く塗るのが理想です。まぶたの上はくすみやすいので、丁寧に伸ばします。

    中川さんが参加者にファンデーション下地を塗っている画像
  4. ファンデーション色選び・塗布
    ほほと首の境目で色を確認します。肌の色は日焼けや美白ケアで少しずつ変化するので、ファンデーションを使い終わったら毎回確認したほうがよいそうです。
    ファンケルのファンデーションは、キメまで整えるスキンケア効果もあり、つややかな明るい肌になります。

  5. アイカラー
    アイカラーの下地としてクリーミィアイカラーを塗布したあと、一人ひとり、似合う色をスタッフが選んでいきます。おすすめは、「フラミンゴピンク」「ブリリアントグリーン」「アクアブルー」などの明るい色だそうです。乾燥を防ぐアイトリートメント成分配合で、デリケートな目元を守ります。

    色々なアイカラーがパレットに並んでいる画像

  6. アイブロウ(眉の形)
    「エクセレントアイブロウブラシ&コーム」を使って眉のバランスを確認します。

  7. リップカラー
    「アクアセラムルージュ」は、回す度に「カチッカチッ」と音がするので出しすぎる心配がなく、1回の目安量が分かるルージュです。3~4回回すとちょうど1回分です。
    ななめにカットされているので、直塗りでもキレイに塗れます。色は、アイカラーと同系色がおすすめだそうです。



  8. チーク・ハイライト
    チークはパレットを指の腹で2往復程度の量が基本ですが、肌の色によって回数が変わります。(色白の方は発色しやすく、日焼け肌の方は発色しにくい)
    ハイライトを使用すると、立体感と透明感が出て、写真写りがよくなります。

盛りだくさんの内容で、あっという間の2時間でした。

メイクのコツ

セミナーの中で印象に残ったメイクのコツをご紹介します。

ブラシは使わず直接指で

直接指で塗るのは、ポイントメイク(アイカラー下地、アイカラー、チーク、ハイライト)です。
5本の指の中で最も力が入らず、お手入れに適しているのは「薬指」だそうです。
チークを塗る時は、基本的に薬指と中指の2本を使うと、うまくできました。

中川さんが参加者の薬指を持って、眉毛の上にチークを塗る画像。

ファンデーションは顔を3等分して

  • 右頬
  • 左頬
  • おでこ、目元、鼻、口元

このように、顔を3等分してそれぞれ順番に行います。場所を決めて行うことで塗り残しや2度塗りを防ぎます。ファンデーション以外にも、ふき取りの時にも使える方法です。

眉毛のバランスはブラシの柄で確認

「エクセレントアイブロウブラシ&コーム」を目頭と小鼻に沿わせて真っ直ぐにあて、それより内側にある毛はカットします。逆に、長さが足りなければ描きます。
眉尻は、ブラシを目尻と小鼻の延長線上を目安にします。

触って確認できる目印は、視覚障がい者にとって有効ですね。

中川さんがブラシの柄を使って参加者の眉毛のバランスを確認している画像。

参加者の感想

セミナー終了後、参加者に感想を伺いました。

ーこのセミナーに参加されたきっかけは何ですか?
東京都盲人福祉協会のメーリングリストの案内を見て申し込みました。今回は2回目の参加で、前回は秋くらいのセミナーに参加しました。季節によって特徴があり、前回とは色味も違って楽しかったです。


ー視覚障がい者向けメイクを通して気付いたことはありますか?

今まではすっぴんで洋服にも気を遣わずに外出している時期もありましたが、視覚障がい者向けメイクを知ってから身だしなみを意識するようになりました。指を使って化粧をするという発想はなくて、これなら自分でもできるかなと思えるようになりました。


ー指を使えることでどのようなことが1番変わりましたか?

指が肌に直接触れる感覚が分かるので、不安感が少なくなりました。仕上がりは確認できないのですが、このようなセミナーで周りの人に見てもらいながら自分の指の位置や強さを調整することで上達するのかなと思います。


ー難しかったことや次の講習会でマスターしたいことはありますか?

眉毛の手入れです。これは、視覚障がいの有無に関係なく難しいという話を聞きますね。
以前、眉毛の形に切り抜かれたアイマスクのようなものをつけて、その中を塗りつぶすという方法もあるようなので、これから挑戦してみたいです。

中川さん・上坪さんインタビュー

株式会社ファンケルの中川さん・上坪さんに、視覚障がい者向けメイクセミナーの中で気をつけていることや参加者からの反響などを伺いました。

株式会社ファンケルの上坪理紗さん(左)と中川亜衣子さん(右)が並んで立っている画像。
株式会社ファンケルの上坪理紗さん(左)と中川亜衣子さん(右)


ー視覚障がい者にセミナーを行う上で気をつけていることはありますか?

色選びにすごく困るというお声を頂きます。
そのため、「○○さんは色白だからピンクが似合いますよ、とか、逆にこの色は合いません。」と、理由を含めてはっきりと伝えるようにしています。
また、セミナーの内容を自宅でも行えるように、顔の半分はスタッフがお手伝いしても、残り半分はなるべく自分でやってもらうようにしています。


ー視覚障がい者と接する中で難しいことはありますか?
最初は全て言葉で伝えるつもりだったのですが、伝わりづらいことがありました。そこで、状況に合わせて視覚障がい者の肌に直接触らせて頂いています。
指の使い方や力加減などを伝えることができて、有効かと思っています。


ー参加者からどのような反響がありましたか?
中途で失明されて引きこもっている方が、たまたまセミナーに来て「やっぱりメイクは楽しいと思いました。これからはお出かけもしてみようと思います」と言われたことがありました。
また、視覚障がいのあるお母様がお子様から「授業参観で、なんでうちのママだけすっぴんなの?」と言われて、メイクセミナーに参加し、次の授業参観では、「今日のママきれいだった」と言われて嬉しくて涙が出たという話も聞きました。
こういったお声を頂くとやりがいを感じますし、これからも微力ですが、視覚障がい者の方のお役に立てれば嬉しいです。


ーこれからやりたいことはありますか?
以前から、男性向けのセミナーを開催してほしいという要望を頂いています。眉毛や鼻毛のケアだけでなく、ニオイのケアや身だしなみなどを含めた内容を検討しています。
現在、ファンケルのメンバーに視覚障がい者の男性がおり、講師として特別支援学校での講座を5回行いました。そのメンバーと一緒に、今年度中には実現させたいと思っています。

ファンケルの上坪さんが城谷さんの眉間にハイライトを塗っている画像
東京都盲人福祉協会青年部の城谷直人さんも体験中。

ファンケルセミナーの日程

ファンケルセミナーは、全国で開催されています。

参加をご希望の団体は、ファンケルセミナーお申し込みフォームからお願いします。
※ 団体様からのお申し込みを受け付けております。

最後に

セミナーが進むにつれ、参加者の表情が明るくなっていくのが印象的でした。
お化粧することで、外出したり、新しいことを始めるきっかけになるのかもしれません。
もし「視覚障がいになったから」と諦めている方がいれば、ぜひ1度参加してみてください。

このように企業が行う視覚障がい者向けの社会貢献活動が、もっともっと幅広い業種に広がればいいなと感じた1日でした。

ABOUTこの記事をかいた人

下田ゆかり

1985年神奈川県生まれ。警備業に10年以上従事していたが、28歳の時、交際相手が視覚障害者になったことをきっかけに、ガイドヘルパーの仕事を始める。同行援護従業者養成研修一般過程・応用過程修了。介護職員初任者研修修了。