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視覚障害

「盲ろう者」とは?コミュニケーション方法や必要な支援も紹介

黄色く色づいたイチョウの葉が、公園の縁石と地面の上に敷き詰められたように広がっている。

「盲ろう」とは、視覚と聴覚の両方に障害がある状態です。そのような状態にある人を「盲ろう者」といいます。日本には約1万4千人いると推定されています。

見え方や聞こえ方は個人差があるものの、光と音の情報が判断できません。漢字では「盲聾」と書かれますが、一般的には「盲ろう」と表記されています。

歴史上の人物として知られるヘレン・ケラーも、盲ろう者です。

この記事では、盲ろうの種類や必要なサポート、盲ろうの人が日常生活で困ることなどを紹介します。盲ろうという障害の知識を深める際の参考にしてください。

Spotliteでは、触覚デザイナーで盲ろう者のたばたはやとさんに取材しています。
興味のある方は、以下のリンクから記事をご覧ください。
参考:触覚で世界を理解する盲ろう者のたばたはやとさんが、触覚デザイナーとして手すりをハックした遊具を作る | Spotlite(内部リンク)

盲ろうは大きく4つのタイプに分けられる

盲ろうは視覚と聴覚の両方に障害がある状態ですが、見え方や聞こえ方の程度によって4つのタイプに分類されます。

  • 全盲ろう:全く見えない・全く聞こえない
  • 全盲難聴:全く見えない・少し聞こえる
  • 弱視ろう:少し見える・全く聞こえない
  • 弱視難聴:少し見える・少し聞こえる
盲ろうの分類を図にしたもの。
全盲ろう=全く見えない、全く聞こえない
全盲難聴=全く見えない、少し聞こえる
弱視ろう=少し見える、全く聞こえない
弱視難聴=少し見える、少し聞こえる
画像引用元:知っていますか「盲ろう者」のこと | 長野県聴覚障害者センター(外部リンク)

それぞれの状態について説明します。

1.全盲ろう

「全盲ろう」とは、全く見えない・全く聞こえない状態です。

厚生労働省の平成24年の調査によると、盲ろう者2,744名のうち、全盲ろうの人は437名(15.9%)でした。

2.全盲難聴

「全盲難聴」とは、全く見えない・少し聞こえる状態です。盲難聴と呼ばれる場合もあります。

厚生労働省の平成24年の調査によると、盲ろう者2,744名のうち、全盲難聴の人は1,130名(41.2%)でした。

3.弱視ろう

「弱視ろう」とは、少し見える・全く聞こえない状態です。

厚生労働省の平成24年の調査によると、盲ろう者2,744名のうち、弱視ろうの人は211名(7.7%)でした。

4.弱視難聴

「弱視難聴」は、少し見える・少し聞こえる状態です。

厚生労働省の平成24年の調査によると、盲ろう者2,744名のうち、弱視難聴の人は244名(26.3%)でした。
参考PDF:盲ろう者に関する実態調査報告書 | 厚生労働省(外部リンク)

盲ろう者になるのは生まれつき?

一人の子どもが体の前で、水をすくうように両手を合わせている。その両手の間から黄色い花が一輪伸びている。
(写真素材:Unsplash)

盲ろう者が全員、生まれつき視覚や聴覚に障害があるわけではありません。

盲ろうには先天性(生まれつきのもの)と後天性(病気や事故などにより途中から盲ろうになる)があります。

盲ろうになる経緯は、視覚と聴覚に障害をもったタイミングで4つに分けられます。

  • 先天(早期)盲ろう:先天性の視覚障害、先天性の聴覚障害
  • 盲ベース盲ろう:先天性の視覚障害、後天性の聴覚障害
  • ろうベース盲ろう:先天性の聴覚障害、後天性の視覚障害
  • 後天(後期)盲ろう:後天性の視覚障害、後天性の聴覚障害

「先天(早期)盲ろう」には、生まれつきだけでなく、乳幼児期の視覚・聴覚障害も含まれます。また「後天(後期)盲ろう」は、成人期以降に視覚と聴覚の障害が発症した場合に使用されます。
参考:盲ろう者の状態・程度/盲ろうになる経 | 東京盲ろう者友の会(外部リンク)

盲ろう者との主なコミュニケーション方法

階段の手すりについている点字を指先で確認している写真。

盲ろう者は、主に以下の方法でコミュニケーションを行います。

  • 触手話:話し手が手話を使い、盲ろう者がその手に触れる方法
  • ローマ字式指文字:アメリカ式アルファベット指文字を話し手が表し、盲ろう者がその手を触れる方法
  • 日本語式指文字:日本語式指文字話し手が表し、盲ろう者がその手を触れる方法
  • 指点字:盲ろう者の指を点字の6点に見立て、話し手が盲ろう者の指を押す方法
  • 点字筆記:点字を使ったコミュニケーション方法
  • 手書き指文字:盲ろう者の手のひらに、話し手の指先で文字を書いて伝える方法。「手のひら書き」とも言う。
  • 弱視手話:視力の状態に合わせて、位置や距離を調整して行う手話
  • 文字筆記(筆談):弱視ろう、弱視難聴の人が紙に書いた文字やパソコンなどを利用して、筆談を行う方法
  • 音声:全盲難聴、弱視難聴の人が音声を使って行う方法。耳元や補聴器のマイク等に向かって話します。
  • 非言語的なオリジナルの方法:先天性盲ろう者の場合、オリジナルサイン、物、視覚的・触覚的シンボルなどを使うこともあります。

どのコミュニケーション方法を使用するかは、盲ろうの状態種類や盲ろう者になった経緯により異なります。

点字については、以下の記事も参考にしてください。
参考:点字一覧を紹介。読むとき【凸面】のルールを中心に解説 | Spotlite(内部リンク)

盲ろう者が困っていること

子どもの手と大人の手が、明るい室内で握手している。
(写真素材:Unsplash)

視覚情報や聴覚情報が受け取れない盲ろう者は、以下のような状況で困難を感じています。

  • コミュニケーションの困難
  • 移動の困難
  • 情報入手の困難

どのような状況で困っているのか、説明します。

コミュニケーションの困難

コミュニケーションの場面でも、困難が生じます。盲ろうの状況や盲ろうになった経緯などにより、盲ろう者のコミュニケーション方法は異なります。

例えば、以下のような場面で盲ろう者はコミュニケーションの困難を感じます。

  • 一対一が基本であるため、コミュニケーションに時間がかかってしまう
  • 声をかけられても気付くことができない
  • コミュニケーションの量が圧倒的に少なく、社会参加しづらく感じてしまう

盲ろう者は、日常生活において通訳介助員を利用する場合が多いです。
通訳介助員は、盲ろう者一人ひとりの状態に適した方法で情報の保証と介助をします。

利用にあたっては、各自治体で利用登録をする必要があります。詳しくはお住いの自治体に確認してみてください。

また、視覚障害者向けの同行援護事業所でも、通訳介助員が同行援護従業員として盲ろう者を支援することも可能です。必要な方は同行援護事業所に問い合わせてみてください。

移動の困難

移動において、視覚や聴覚からの情報は非常に重要です。そのため、盲ろう者の多くは移動で困ることが多いようです。

例えば、以下の状況が挙げられます。

  • 狭い道で自転車や車に気づくことができない
  • 通勤ラッシュなど人の多い状況では移動するのが怖い
  • 電車の遅延や運休時の対応がわからない
  • 災害時の避難など、状況把握がしづらく危険を伴う

どこに何が置いてあるかわからないため、買い物が難しいと感じる方もいます。

情報入手の困難

テレビなら音声や手話から情報を得ることができますが、盲ろう者はそのような情報を得ることは難しいです。

盲ろう者が感じる情報入手の困難には、以下のような場面があります。

  • 新聞やテレビが見られない
  • ラジオを聞くことができない
  • パソコンや携帯の操作が難しい
  • 公共交通機関でのアナウンスが聞き取れず、文字案内も見えない
  • 点字を知らなければ、本を読むことができない
  • 自然災害が起きた際の逃げ道や対策方法がわからない

特に災害時、盲ろう者が一人の場合は、サイレンなどが聞こえず、逃げ遅れてしまう危険があります。また、音声での案内や指示が伝わらず、十分な支援が受けられない可能性もあります。

盲ろう者への必要な配慮

広い公園の芝生広場をガイドヘルパーと歩く白杖の人の写真。

友人や家族に盲ろうの人がいたり、目の前に盲ろう者がいたりした場合の配慮を紹介します。

  • 声をかけるときは、そっと手や肩に触れてから
  • 周りの状況を詳しく説明する
  • 話すときは声を出して会話する

それぞれの配慮について、説明します。

声をかけるときは、そっと手や肩に触れてから

盲ろう者に声をかけるときは、そっと手や肩に触れてから話しましょう。視覚障害のある盲ろうの場合は、声をかけるだけでは気付かないことがあります。

突然触られると驚いてしまいます。強くつかむのではなく、優しくそっと触れてからコミュニケーションを取るとよいです。また話している間、手や肩を触れたままでいると、盲ろう者の方にも安心してもらいやすいです。

周りの状況を詳しく説明する

一緒に外を歩いている場合は、周りの状況や近くにあるものなどを伝えます。「あれ」「それ」などの指示語ではなく、「右手」「左側」など具体的に伝えることを意識しましょう。

周りに人がいる場合は、その人の性別や雰囲気、話している内容などを具体的に伝えます。そのように話すことで、周囲の人ともコミュニケーションが取りやすくなります。

話すときは声を出して会話する

少し聞こえる人の場合は、話すときに声を出して会話することも大切です。はっきりとした声で話しましょう。

通常の会話のように声を出して話すことで、周りの人とのコミュニケーションにもつながります。

最後に

盲ろう者とは、視覚と聴覚の両方に障害がある人を指します。見え方、聞こえ方には個人差があり、大きく分けて4つのタイプに分かれます。また盲ろうになる経緯や時期も人それぞれで、先天性なのか後天性なのかでコミュニケーション方法なども違います。

それぞれの人に適した方法でコミュニケーションをとるだけでなく、確実に情報が伝わっているかも確認しながら話します。そうすることで、盲ろうの人とよりよいコミュニケーションを取ることができますよ。

Spotliteでは、触覚デザイナーで盲ろう者のたばたはやとさんに取材しています。
興味のある方は、以下のリンクから記事をご覧ください。

参考:触覚で世界を理解する盲ろう者のたばたはやとさんが、触覚デザイナーとして手すりをハックした遊具を作る | Spotlite(内部リンク)

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監修:椎野めぐみ先生

略歴
眼科医。神奈川県生まれ。浜松医科大学医学部卒業後、横浜市立大学付属病院、みなと赤十字病院などを経て、横浜市立大学講師を務める。2018年上智大学グリーフケア研究所臨床傾聴士を取得。趣味は、美味しいものを食べること、感動する本を読むこと。

この記事を書いたライター

Spotlite編集部

Spotlite編集部は、編集長で歩行訓練士の高橋を中心に、視覚障害当事者、同行援護従業者、障害福祉やマイノリティの分野に精通しているライター・編集者などが協力して運営しています。

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