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使ってみた!災害リスク情報を音声で聴ける「耳で聴くハザードマップ」操作方法解説と避難場所誘導利用レポート

「耳で聴くハザードマップ」のスマートフォン画面を操作している手元のクローズアップ写真。

昨今のさまざまな自然災害により防災意識が高まっています。しかし、自治体などから配布される紙媒体のハザードマップはリスク情報が地図に色分けで表示されていたり、また避難場所の表記が小さかったり、視覚障害者にとっては自身で災害リスク情報を取得するのが困難な状況にあります。

この記事では、視覚障害者も災害リスク情報を取得できるように開発された「耳で聴くハザードマップ」を試してみた感想、具体的な操作方法、視覚障害者の防災についてご紹介します。

以前イベントで避難シミュレーションゲームに参加した時の記事は、以下のリンクからお読みいただけます。

耳で聴くハザードマップとは?

スマートフォンを見ている視覚障害者を肩越しに写した画像。スマートフォンの画面にはSpotliteのサイトが表示されている。

耳で聴くハザードマップは、音声コード読み取りアプリ「Uni-Voice」または「Uni-Voice Blind」に搭載された機能です。現在地や周辺地域の災害リスク情報を自動音声で聴くことができます。

特定非営利活動法人 日本視覚障がい情報普及支援協会が企画・監修し、私も勤務するUni-Voice事業企画株式会社が開発・運用しています。

耳で聴くハザードマップを導入した自治体のみ閲覧することができ、利用料は無料です。

導入自治体はこちら

耳で聴くハザードマップ導入自治体 | Uni-Voice事業企画株式会社(外部リンク)

Uni-Voice Blindアプリのインストールは以下のリンクから

この記事を書いている私も先天性の視覚障害者です。私自身、住んでいる場所が、災害時にどのくらいのリスクがあるのか、実は全く知りませんでした。

自宅のある東京都では、2025年4月から耳で聴くハザードマップが導入され、23区を含む東京都全域の災害リスク情報を閲覧できるようになりました。

実際に使ってみた

早速、実際に試してみましょう。

Uni-Voice Blindアプリは、スクリーンリーダー(音声読み上げ機能)に完全対応した仕様となっています。今回はiOSのボイスオーバーを使用した場合の操作手順もお伝えします。

屋外でスマートフォンを捜査している人の手元と、その横に立つ白杖の人の手元。

起動後の操作から、避難情報の確認まで

Uni-Voice Blindを起動します。

右スワイプを数回して、「現在地の情報やハザードマップの画面へ移動、ボタン」をダブルタップします。

ここでまず開くのが「気象情報」の画面です。

この画面では気象庁のオープンデータを元に、現在地や指定した地域の天気予報、警報注意報、避難情報を自動音声で取得できます。

例えば、この画面に「警戒レベル3、高齢者等避難」の表示がでた場合には、視覚障害者も避難の対象に含まれるので避難が必要となります。

※以下の画像をクリックすると、「耳で聴くハザードマップ」の画面が動画で再生されます。

(動画提供:Uni-Voice)
※このデモ動画は、記事内容とは異なる場所です。

災害リスク情報を聴いてみる

それではいよいよ、現在地の災害リスク情報を聴いてみましょう。

耳で聴くハザードマップは、国土地理院のハザードマップのオープンデータを利用しています。

気象情報の画面にある「この場所のハザードマップ画面を表示する、ボタン」をダブルタップします。すると、災害リスク情報の自動音声が流れます。

果たして、私の自宅は安全でしょうか。ドキドキします。

男性らしき2人の人物の足元の写真。一人は白杖を持っている。

「この場所の洪水ハザードマップの情報を読み上げます。この場所の住所は、東京都A区B町……です。標高は35メートルです。この場所は洪水による浸水想定地域には含まれていません」

このように音声が流れ、私の自宅が洪水による浸水リスクがないことがわかりました。まずはひと安心。

自動音声は続きます。

「ただし、この場所の周辺半径1000メートルの範囲内の場所の27%で洪水による浸水が発生することが想定されています。そのうち、浸水の深さが……」

音声での詳しい情報が続きます。

「この場所から最も近い場所は北の方向、40メートルの場所で、洪水による浸水の深さは50センチから3メートルになることが想定されています。」

おっと、私の自宅の周辺地域には災害のリスクがあるのがわかりました。

音声の中で、ここから最も近いリスクのある場所の「方向」を知ることもできました。

この、どちらの方向にリスクがあるのかを“事前に把握しておくこと”は、実際の災害時に危険な方向へ行かないよう、速やかな避難行動へと繋がる大切な情報です。

「耳で聴くハザードマップ」で聴ける災害の種類は、洪水のほかに、土砂災害、高潮、津波です。現在マップではこれら4つの災害リスク情報を取得することができます。

※以下の画像をクリックすると、「耳で聴くハザードマップ」の画面が動画で再生されます。

(動画提供:Uni-Voice)
※このデモ動画は、記事内容とは異なる場所です。

音や振動で知ることができる避難場所

もう一つ、大切にしているポイントは、災害種別に対応した最寄りの避難場所の方向を、音声と効果音、そして振動で知れることです。

先ほどの洪水ハザードマップの読み上げ画面で、スクリーンリーダーを使用して右スワイプをしながら「以上です」まで聴きます。

その次の項目にある「この場所から半径5キロメートル以内にある洪水に対応した避難場所の一覧を表示します。」のボタンをダブルタップします。

ここでは最寄りの避難場所一覧が確認でき、画面上で避難場所を選択すると、「このスポットに誘導する」のボタンがあるのでダブルタップで実行します。

するとナビゲーション画面が開きます。コンパス機能によって、選択した避難場所の方向にスマートフォンが向くと、ピコンという効果音と振動で知らせてくれます。

学校らしき建物の横を歩いている、グリーンのカーディガン姿の白杖の人。

実際にこの機能を使って避難場所まで歩いてみましたが、方向を見失うことなく向かうことができました。また距離と徒歩何分かも表示され、スクリーンリーダーでも確認できるので大変便利でした。

災害時、初動の5分、10分が命を守る行動に繋がるとも言われています。

当事者は、事前に家族や支援者と一緒に避難場所、避難ルートを確認しておくことが大切だと思います。

※以下の画像をクリックすると、「耳で聴くハザードマップ」の画面が動画で再生されます。

(動画提供:Uni-Voice)
※このデモ動画は、記事内容とは異なる場所です

まとめ

今回、耳で聴くハザードマップを試してみて、自宅周辺の災害リスクについて有益な情報を得ることができ、これまであった災害に対する漠然とした不安や恐怖が払拭されました。

視覚障害当事者が、命を守るための大切な情報を「自身で」取得できる環境はとても重要だと思います。

この取り組みが全国の自治体に広がることを願っています。

株式会社Uni-Voiceの以下のサイトでも、操作方法を確認することができます。
耳で聴くハザードマップ スクリーンリーダーでの操作方法 | Uni-Voice事業企画株式会社(外部リンク)

執筆:北原新之助
アイキャッチ写真提供:Uni-Voice
記事内写真撮影:Spotllite(※写真内のスマートフォンの表示画面は記事内容とは関係ございません)

筆者の北原さんはSpotlliteのコミュニティアンバサダーです。

北原さんがはじめて同行援護を利用した時の感想は以下のリンクからお読みいただけます。

この記事を書いたライター

Spotlite編集部

Spotlite編集部は、編集長で歩行訓練士の高橋を中心に、視覚障害当事者、同行援護従業者、障害福祉やマイノリティの分野に精通しているライター・編集者などが協力して運営しています。

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