背景を選択

文字サイズ

施設・サービス

オープンキャンパス ~筑波大学附属視覚特別支援学校 専攻科~

筑波大学附属視覚特別支援学校の正門を正面から撮影した画像

2019年7月20日(土)、筑波大学附属視覚特別支援学校 専攻科のオープンキャンパスに参加しました。
筑波大学附属視覚特別支援学校 専攻科は、高校を卒業した人を対象にした専門学科で、鍼灸手技療法科・理学療法科・音楽科の3つのコースが設置されています。

オープンキャンパスでは、学校全体の紹介にはじまり、その後、各学科のブースにわかれて実技体験や個別説明・進路相談が行われていました。

今回は各ブースで聞いた内容をもとにレポートします。

学校の入口に、オープンキャンパスの案内板が置かれている画像。

鍼灸手技療法科

鍼灸手技療法科は、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師を養成することを目的に設置された3年課程のコースです。
1~2年次は解剖学や東洋医学などの基礎知識を座学で学びながら、学校内で実技も身につけていきます。3年次からは臨床実習が中心になり、より実践的な学びを深めていきます。

学生は年齢の制限がないため、10代から50代の方まで在籍しているとのこと。また、近年はアジア圏から技術を学びに留学する学生もいるため、生徒の国際化も進んでいるそう。
国内外からさまざまなバックグラウンドをもつ人と学ぶことができるのも、学校の魅力の一つになっているようでした。

卒業後の進路としては、病院や老人ホームなどの医療分野に身を置く人や、民間企業でヘルスキーパーとして、社員の健康管理などに従事する道もあります。
さらに、教員養成施設を受験して理療科の教員となる人も少なくありません。オープンキャンパスの日にお話していた在学生の方も、何人かが教育養成課程に入り、技術を極めたいと言っていました。

在学生の方に、勉強の難しさについてインタビューしたところ、「気・血・水」など東洋医学独特の目に見えない概念を理解することが難しいという人もいれば、筋肉の境目を探るのが難しいという人も…。

勉強の悩みは人それぞれのようですが、みなさん先生に相談したり、練習を繰り返すことで乗り切っているようです。

校内の廊下と階段を撮影した画像

理学療法科

理学療法科は、3年間の教育課程において理学療法の基礎知識や技術を習得し、国家試験の受験資格を取得することを目標としています。現在、理学療法士に必要な単位は解剖学や生理学などの基礎分野、運動療法や物理療法などの専門分野なども含めて102単位!

最近は4年間かけて理学療法を学ぶ大学などもあるなか、3年間で完結させるには、かなりハードなカリキュラムになっているとのこと。
1年次から実習があり、3年次には2カ月連続実習が年2回あるそうです。

厚紙や布などを使った人体の一部の模型の画像

理学療法科の先生方は、そうしたハードな授業内容を少しでもわかりやすく・わからない人が出ないようにさまざまな工夫をされていました。
たとえば、解剖学で使用する人体模型も、神経ごとに色を変えたり、触れるように工夫してオリジナル教材を一つずつ手作りしていました。

卒業後は、医療・福祉機関などで理学療法士としての道が開けます。都内の病院に就職する人もいますが、出身地に戻って就職する人も多く、そのため「視覚障害をもったはじめての理学療法士」として、各病院などに入ることもあるとのこと。たしかな技術があるからこそ、どんな場所でも活躍できるのかもしれません。

針金を使って複数の神経を表した模型の画像。

音楽科

音楽科は、音楽高等学校に準じた専門教育を行っています。

筑波大学附属視覚特別支援学校の創立以来130年以上の歴史があるそうで、器楽・声楽・作曲を学ぶことができます。たしかに、琵琶法師や八橋検校にも代表されるように、視覚障害と音楽の歴史は深く・長いものがありますね。

筑波大学附属視覚特別支援学校の音楽科で、器楽・声楽・作曲どれを学ぶとしても外せないのが、点字楽譜の学習。
筆者が恥ずかしながら「聞いて覚えるのはだめなんですか?」と質問したところ、先生からは「音楽は構造なので、プロは楽譜が読めないとだめなんです」と優しく答えてくださいました。

机の上に点字の楽譜と墨字の楽譜が置かれている画像。

確かに、聞いて覚えるという方法でも曲はひけますが、楽譜を読み曲全体の構造を理解すれば「お、ここのフレーズは第一主題と同じだな」「ここは低音が第二主題と同じだな」というふうに効率よく曲を理解することができ、また拍子を外すことも少なくなるそう。聞いて覚える方が楽ですが、音楽科では点字楽譜を読めることを大切にしているそうです。

また音楽科では、音楽を通じて社会とつながることを大切にしているため学校外でのコンサート・音楽会も積極的に引き受けているとのことでした。
それぞれのコンサート・音楽会は先生主導ではなく、生徒がコンセプト設計、プログラム、衣装のイメージなども決めており、卒業後も自分で音楽活動ができるように自主性を尊重していることがうかがえました。

最後に

オープンキャンパスに参加して、最も印象的だったのが学生の多様さと、その多様さに対応できるよう、真摯に向き合う先生方の姿でした。

同じ視覚障害者に会いたいと思って上京した全盲の方。海外から技術を学びにきた留学生。一度会社に入ってから、学びなおそうとしはじめたロービジョンの方。
それぞれ違った場所から、違った想い、違った見え方の人が学びに来る学校には、少しずつでもすべてにおいて個別の対応が必要です。

教育のなかにも「効率性」が求められるようになった昨今、学生の個別性を受け止め、のびのびと学べる場をつくり続けるには、日々の努力や細やかな工夫があるのではないかと思いました。

何かを学ぼうとする人を一人にしない筑波大学附属視覚特別支援学校 専攻科へ、ぜひ1度足を運んでみてください。

この記事を書いたライター

Spotlite編集部

Spotlite編集部は、編集長で歩行訓練士の高橋を中心に、視覚障害当事者、同行援護従業者、障害福祉やマイノリティの分野に精通しているライター・編集者などが協力して運営しています。

他のおすすめ記事

この記事を書いたライター

この記事を書いたライター

Spotlite編集部

Spotlite編集部は、編集長で歩行訓練士の高橋を中心に、視覚障害当事者、同行援護従業者、障害福祉やマイノリティの分野に精通しているライター・編集者などが協力して運営しています。

他のおすすめ記事