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啓発

「白杖=全盲とは限りません」白杖の天使はくたんからのメッセージ

「はくたん」とは

「はくたんは、白杖の天使たんよ。」

唐突に意味不明なことを言ってしまいました。

視覚障害者が中心となり、ロービジョンや白杖に関することをたくさんの人に知ってもらおうと誕生した「白杖の天使はくたん」というキャラクターをご存知でしょうか?

かく言う私も、4年前に中途で見えにくくなった視覚障害者です。

皆さんは、街中で白杖を持っている視覚障害者がスマートフォンを操作たり、周りの様子をキョロキョロ見たりして不思議に思ったことってありませんか?

白杖持ってる人が必ずしも全盲では無いことを知っている方もたくさんいますが、中には「白杖=全盲」と言うイメージを持っている方がいるのも事実です。
さらに、白杖は視覚障害者以外にも肢体不自由や聴覚障害のある方でも使用することができます。

「そんなことは常識だよ。」

と思う方もいるかもしれませんが、お恥ずかしいことに、私自身が視覚障害者になるまでそのことを真剣に考えたことはありませんでした。
白杖持っていても必ずしも全盲でないということは、その人の行動や目の前で起きていることを元に考えれば、おそらく「あー、この人は見えにくい人なんだなぁ」と想像はついたと思います。しかし、そのことを一体いつどこで習ったのか定かではありません。

私一人とってもそんな状態ですので、理解がどうこうという話ではなく、単に知らない可能性も否定はできません。
そこで、「はくたん」と言うキャラクターにメッセージを託し、より多くの人に白杖に関する正しい知識を持ってもらうと周知活動を始めました。

そして、そのはくたんにまつわる活動のメインとなるのが「はくたんストラップ制作委員会」なのです。

はくたんのイラスト画像

この子が「白杖の天使はくたん」です。
白杖をモチーフにグリップについている紐を天使の輪っかに見立てて羽をつけた、にっこり笑顔のキャラクターです。


主に、「ロービジョンと呼ばれる見えにくい人達」でも白杖を使用するということを知ってもらうために「白杖=全盲とは限りません」というメッセージを添えています。
また、このメッセージを通じて白杖や視覚障害者に関心を持ってもらおうという思いもあります。

実はこのキャラクター、Twitterの中でとある視覚障害者が生み出したキャラクターなのです!

はくたん爆誕

そもそも「はくたん」は周知キャラクターとして誕生したわけではなく、
Twitterでのちょっとした友達同士のやりとりがきっかけでした。

あれは確か平成25年の夏頃だったと思います。
何人かの視覚障害者の仲間内で、自分の白杖に名前をつけるという遊びをしていました。
当然、遊びですから白杖にはみんなそれぞれ『ひのきくん2号』や『エスカリボルグ』等とふざけた名前をつけたりしていました(笑)
その仲間の中に、趣味でイラストを描く 網膜色素変性症 の当事者がいました。悪ふざけのノリで、それぞれの白杖を擬人化したイラストにして返信してきたのです。
みんな喜んで、笑いながら楽しんでいると、今度は突然白杖そのものをキャラクター化して見せてくれました。
今となっては原画は残っていませんが、天使の輪っかもなければ羽もない、まるでタバコをキャラクター化したようなものでした(笑)
ツッコミどころが満載なので、みんなゲラゲラと笑いながらあれこれとツッコミながら書き直して行った結果、現在のはくたんに落ち着きました。
「白杖の天使はくたん」の誕生です!

※実は、既に妖精さんが居られましたので、半ば自動的に天使になったわけです(笑)

シールからストラップへ

ある日、イラストの原作者本人が、はくたんのイラストをシールにして配布しました。私もそのシールをたくさんいただいたのです。

「お礼に何かできないかなぁ」と考えて思いついたのが、シールの絵柄を印刷して、プラスチックのケースでチャーム化して、それにパラコードという紐で編んだストラップに仕上げるということでした。

その完成したストラップの画像を試しにTwitterに投稿してみると思わぬ反響が!?

「それかわいい。私も欲しい!」
「どこかで売ってるんですか?どこで買えるんですか?」

といった声が何件か寄せられました。

「これは試しにある程度まとまった数を作ってみるか!」
と思い、自費で約200個のストラップを制作しました。

もともと思いつきで始めたことだったことと、こういうものが果たしてどれほどの反響や需要があるかを知りたかったので、送料含む代金を一切いただかず無料で配布しました。

あくまでもお試しという感覚です。

用意した約200個のストラップを配布し終えても、「欲しい」と言う声がまだまだ聞こえてきました。しかし、すべてに答えていたらきりがないので一旦収束することにしました。

制作委員会の誕生 ~チャリティー販売の開始~

それでもまだストラップを求める問い合わせがきます。
周りの友人などに相談した結果、販売と言う形で皆さんにお答えすることにしました。
ただ、営利を目的にするのではなく、「あくまでも継続するために販売する」「売り上げを視覚障害者のために使う」という考えのもとに、売り上げの一部を寄付をしていくという形になりました。

そして販売用に材料や制作の行程などを見直してリニューアルし、現在の「はくたんストラップ」が完成しました!

完成したはくたんストラップ
ストラップの色はバリエーションが豊富

当初、ストラップの制作と配布は完全に個人名でやっていたのですが、今後の活動を考えると便宜上何かしらの名称が必要だろうということになり、「はくたんストラップ制作委員会」というサークルを立ち上げました。

制作委員会のメンバーは

  • イラストを変えた原作者
  • ストラップの制作をする私自身
  • イベント等の販売要員として手伝ってくれる友人
  • 自分の地元である愛知県知多郡で販売をしながら周知活動する友人

この4人の視覚障害者当事者と

  • 私自身ではやることのできない細かな作業のサポートや、外に出て対外的に活動する際にサポートしてくれる晴眼者

以上の5人です。

販売は主にTwitterを窓口として通信販売での対応ですが、それと並行して「ここに行けば買える」という場所を確保するべく、日本点字図書館に直接お願いに行きました。
Twitterで知り合ったガイドヘルパーさんからのつながりが回り回って、日本点字図書館の担当者とうまくつながることができました。
主旨や販売の条件などを相談すると快諾してくださり、用具を販売するコーナーに陳列してくださることになりました。

こうして、平成28年4月「はくたんストラップ」の本格的なチャリティー販売がスタートしました。

メディアで紹介

チャリティー販売を開始した「はくたんストラップ」はたくさんの方が購入してくださり、反響は上々でした。

そんなある時、別件で取材を受けていた視覚障害者の方の白杖についていた「はくたんストラップ」が新聞記者さんの目に留まり、毎日新聞の紙面にて全国に紹介されました。
その後も、新聞記事に目を留めてくださった別の新聞社の記者さんやテレビ局の関係者、視覚障害者向けのラジオ番組を放送するローカルラジオ局などから「はくたんストラップ」を紹介してくださるとのお話があり、たくさんのメディアにて紹介して頂くことができました。

日本テレビ「日テレNEWS24」で取り上げられた時の動画はこちら

継続はチカラ

各メディアで紹介された「はくたんストラップ」は、より多くの方が知ることとなり、一時とてもたくさんの注文いただいていました。
現在はだいぶ落ち着いてきましたが、それでも日本点字図書館の店頭での販売や通信販売を希望されるお声はいただいています。
愛知県のメンバーの地元では、福祉まつりや産業まつりなどへの出展を始め、メンバー自身による手売りでの周知活動に対し、多くの方がご協力してくださいました。
また、関東でも東京ヘレン・ケラー協会や神奈川ライトセンターでの展示会などへの出展の機会を頂き、「はくたん」という周知キャラクターの紹介やストラップのチャリティー販売を行いました。
現在までにおよそ1500個を販売し、日本点字図書館を始め、愛知県の様々な支援団体等に15万円程度の寄付や募金などを実施する事か出来ました。
東京ヘレン・ケラー協会での出展はここ数年恒例となっており、次回も参加予定です!

イベントではくたんストラップを販売する制作委員会のメンバー
東京ヘレン・ケラー協会主催のサポートグッズフェア2018にて

現在の『はくたんストラップ制作委員会

ひょんなことをきっかけに始めたこの「はくたんストラップ」のチャリティー販売を通じての周知活動。これまでに多くの方のご理解やご協力を得てここまでやってくることができました。

元々、はくたんのメッセージはロービジョンの周知に関するものでしたが、ストラップを買ってくださる視覚障害者の中には全盲の方もいらっしゃいました。
そこで、全盲の方が身につけてくださる場合も想定して、「見守り声かけ ありがとう」というメッセージのものを制作したことで活動の幅が広がりました。

また、ストラップ販売以外にも「視覚障害者やそれを支援する人達のために何か出来ないかな」との想いから、平成31年3月にはくたんストラップ制作委員会主催の小さなイベントを開催する事が出来ました!
その様子はまた後日お話しさせて頂きたいと思います。

はくたんストラップが3つ並んでいる
メッセージにはいくつか種類がある

最後に ~想いを乗せて~

はくたんストラップのチャリティー販売にはこんな想いがあります。

  • 外出先で、白杖への不理解から来る誤解から心ない言葉をかけられてしまい外に出るのが怖くなってしまった人
  • 白杖持って出かける勇気がなかなか持てず、家に引きこもりがちになってしまっている人
  • 現在は白杖を持って外でガンガン活動されてる人

こういった方々の生活や外出が安全で楽しくなる為の手伝いができればいいなと思うのです。

そして、ちょっぴり不安になってしまった方たちの「お守りがわり」として、ほんのちょっとだけ背中を押すことができれば本当に嬉しく思います。

さらには、
家族や友人に白杖を使用する視覚障害者がいて、周知活動にご協力してくださるという方たちにも「はくたん」のメッセージが届き、健常者も障害者も関係なく、みんなで楽しく活動ができれば幸いです。

はくたんストラップの販売を通じて得られた良縁を大切にし、社会に対してほんの少しでも何かのお役に立てるよう、これからも細く長く続けていきたいと思います。

現在もはくたんストラップは日本点字図書館の売店で購入することができます。
それ以外にも、Twitter及びFacebookを窓口にした通信販売で購入することが可能ですので、お気軽にお問い合わせ下さい!

ストラップを編んでいる様子
1つ1つ、手作りです

お問い合わせ

はくたんストラップ制作委員会

参考

メディア掲載情報

  • 2016年11月22日
    朝日新聞に掲載(福岡、愛知、東京全国欄)

  • 2016年11月30日
    日本テレビ「news every.」にて放送
    関東(東京)エリア及び一部他エリアでも放送

  • 2016年12月24日
    福岡KBCラジオ生出演

  • 2071年1月15日
    山梨放送出演(録音)
  • 2017年3月6日
    東京新聞掲載

  • 2017年3月11日
    中日新聞(知多版)掲載(制作委員の榊原英雄)

  • 2017年4月4日
    ラジオ大阪出演(録音)

この記事を書いたライター

渡辺敏之

1970年神奈川県生まれ。IT関係の自営業をしていたが糖尿病網膜症により、44歳で身体障害者手帳を取得。自分の経験を生かしてロービジョンや白杖に対する啓発活動を行うため、はくたんストラップ制作委員会を発足し、非営利で活動する。防災士。

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渡辺敏之

1970年神奈川県生まれ。IT関係の自営業をしていたが糖尿病網膜症により、44歳で身体障害者手帳を取得。自分の経験を生かしてロービジョンや白杖に対する啓発活動を行うため、はくたんストラップ制作委員会を発足し、非営利で活動する。防災士。

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