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聞いてみた・やってみた

見えにくい2人の珍道中

網の上で肉を焼いている画像

見え方が異なる2人の視覚障害者で焼き肉屋に行った時のお話です。
お店を見つけて乾杯して、お肉を焼いて帰るまで、笑いあり涙あり(?)の珍道中でした。

見え方は人それぞれ

「視覚障害者」と一口に言っても、見え方は様々です。
全盲と聞くと、全く見えないイメージだと思いますが、全盲の中でもいろいろ違いがあるのをご存知でしょうか。
光も全く感じることができない人の他に、光だけ感じる人、目の前で何かが動いているのがなんとなく分かる人も全盲と言われることがあります。

全盲だけとってもこれだけの違いがあるのですが、これが「ロービジョンと言われる見えにくい人」ともなると大変!

真ん中しか見えない、真ん中が見えない、ランダムに視野が欠けている、そもそも視力が出ないし眼鏡等による矯正もできない…。
それ以外にも、眩しさに極端に弱い羞明、暗いところがほとんど見えない夜盲などなど様々な症状や障害があるのでもう何がなんだか訳が分からなくなります。

え?2人だけ?

ある日、みんなで焼肉を食べに行こうということになりました。
メンバーは視覚障害者2人と晴眼者1人。

先に視覚障害者2人がお昼に合流し、まずはランチ。
しかし、夜になって合流する予定だった晴眼者が突然の体調不良でキャンセルに…。

ただでさえ、見えにくい2人だけで行動するのは大変なのに、今回行く焼き肉屋は初めての場所。しかも夜です。
さすがに辞めようかと考えましたが、せっかくなので思い切って行こうということになりました。

普段行き慣れた施設の中で時間を過ごすと辺りはすっかり暗くなり、お腹もいい感じに空いてきたので焼き肉屋に出発です。

施設を後にすると、外はやはり真っ暗。
目に障害のない人にとってはそれほど暗くない街中も、2人の当事者にとってはかなりの暗闇なのです。

ここから視覚障害者2人の珍道中の始まりです(笑)

夕日が沈んでいる画像

2人の見え方

と、その前に。

2人の見え方を簡単にご紹介します。
以前、同じメンバーでレストランに行った時に出てきた1品を使ってご説明します。
題して、「食事から学ぶ見え方ミニ講座」です。


こちらが晴眼者の見え方とします。

お皿の周りに料理が乗っている画像

私は、中心暗点です。

真ん中が見えませんが周囲は見ることができるので大体自分がどの辺にいるのかという事は比較的わかりやすいです。その反面、細かいものが見えないので、ピンポイントで看板などを見つけるということが苦手です。
それをイメージしたお皿がこちら。

お皿の真ん中が見えずに周りの料理が見えている画像。

お皿の周りにまで豪華な料理が並び、「メインはなんだろう?」とワクワクしてしまいました。

一方、友人は求心性の視野狭窄です。

周囲の視野がないので周りの様子を見ることができません。
逆に真ん中が見えるので、自分で意識して注視した場所は何とか見ることができます。
それをイメージしたお皿がこちら。

お皿の真ん中だけ見えていて何も乗っていないように見える画像。

メイン料理が見えず、「取り皿かな?」と思ったそうです。

このように、周りの様子はぼんやり分かるけど細かいものが苦手な私と、視野は狭いけどその範囲は何とか見える友人。
得意分野が違うのです。
そこで、2人の見え方をニコイチして、焼き肉屋を探すことにしました!

いざ出発

焼き肉屋発見の第一歩に欠かせないのがフォーメーションです。
周りの人の動きを比較的察知しやすい私が前で白杖を振りながら歩き、友人は私の肩に捕まって後方から看板を探します。

にわかに編成された2人の焼き肉屋探し隊は、広域レーダー(私の周辺視野)を駆使して少しずつ前進。

やがて作戦領域に到達。
しかし、時刻はすでにヒトハチマルマル(18:00)を過ぎようとしている。

ヤバイ。店が混み始める。
もはや猶予はありません。お腹も鳴ってきました。

すると突然、何かの気配…いい匂いが…。

ここで切り札のピンポイントレーダー(友人の中心視野)の出番です。
匂いがする方向に目をやり、少しすると店先に置いてある看板を見つけることができました。

というわけで、何とか無事に到着することができたのです。

この時の会話はこんな感じです。

私 「そろそろこの辺だと思うんだよなー?」
友人「なんかいい匂いしてきたねー」
私 「えっと、この通りの右側にあるはず。看板は店先、店舗は二階!」
友人「んーどこかなー(キョロキョロ)」
友人「あ、あれかな?〇〇って書いてある!」
私 「おー!それそれ、そこだよ!」

ぼやけた状態で焼き肉屋周辺を見ているイメージ画像。見ている
実際の焼き肉屋周辺にて

おもしろ円卓会議

焼き肉屋には無事にたどり着きましたが、これまた店内が暗い。
それでも店員さんに丁寧に案内してもらい席につき、視覚障害者2人の焼肉スタートです。

まずは乾杯!

しかし…

あれ?

んん?

相手の持ってるジョッキが見えない。

むやみに動かすと状況が悪化すると判断した私は、ジョッキを持つ手を動かさずジッと待ちます。

友人は、声がする私の顔や口元から→胸→腕→手と、視線を辿ってジョッキの位置を確認してくれて無事に乾杯出来ました。


視野狭窄の友人は私の身体のどこかのパーツを見つけると、そこから辿って目的のパーツを探してくれます。
なので、視野狭窄の友人に何か物を見せたいときは、ブンブンと振らずにジッと持ったまま「右手に持ってるものを見て」というような声かけをすると比較的スムーズにいくのです。

[でもなぜか、手に持っているものを相手に見せようとする時って無意識に振っちゃいませんか?自分だけなのかな?]

とまあ、余談は置いといて…

いよいよ、薄暗いランプで照らされるロースターで肉を焼き始めました。
肉の色が見えないので、焼き加減を目で見て判断することはできません。
なので、焼き加減はトングで挟んだり突いたときの弾力を確認しながら判別。

若干焼きが甘い事もあったけど、そこは牛肉ということでセーフかな?

こうして、時にはテーブルに肉を与えつつも、軽く飲みながらおいしい焼肉を堪能しました。

七輪と網が写っている画像。

帰り道

友達との楽しい夕食を終えて帰り道。
楽しかった余韻の中、少し考えてみた。

実は視覚障害者になってから、当事者2人だけで食事に出たのは初めてだった。
もちろん不安もあったし、肉の焼き加減は分からなかったけど、案外何とかなるもんだ。
こういう食事以外にもそれぞれの個性やそれぞれの得意分野を生かして力合わせればいろんなことができるんじゃないかなーなんて。

これからも躊躇することなく、楽しそうだと思ったことはどんどんチャレンジしていきたいなと思います。

この記事を書いたライター

渡辺敏之

1970年神奈川県生まれ。IT関係の自営業をしていたが糖尿病網膜症により、44歳で身体障害者手帳を取得。自分の経験を生かしてロービジョンや白杖に対する啓発活動を行うため、はくたんストラップ制作委員会を発足し、非営利で活動する。防災士。

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渡辺敏之

1970年神奈川県生まれ。IT関係の自営業をしていたが糖尿病網膜症により、44歳で身体障害者手帳を取得。自分の経験を生かしてロービジョンや白杖に対する啓発活動を行うため、はくたんストラップ制作委員会を発足し、非営利で活動する。防災士。

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