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サングラスとどう違う?遮光眼鏡のおはなし

机の上に遮光眼鏡を2個置いている画像

「視覚障害者」というと、トレードマークとして白杖や盲導犬を思い浮かべる方が多いと思います。
それ以外というと、やはりサングラスでしょうか?

病気や障害による目の変形や変色などの外観を気にしてサングラスをする方もいれば、眩しさに極端に弱い「羞明(しゅうめい)」と言われる症状を改善するために使用する場合もあります。

多くの視覚障害者が愛用するサングラスですが、実は様々な見えにくさを改善する「遮光眼鏡(しゃこうがんきょう)」という特殊な眼鏡があることをご存知でしょうか?

今回は、私の体験談を元に遮光眼鏡についてお話します。

普通のサングラスと何が違うの?

一般的に言われるサングラスとは、眩しさを抑えたり紫外線をカットするものをいいますが、最近ではコントラストを上げるなど高機能なものも出てきています。
しかし、多くのサングラスは光の成分を全て丸ごとを減らしてしまうので眩しさを抑えると同時に暗くなってしまうものが多いのです。

一方、遮光眼鏡は眩しいと感じやすい特定波長を効率よくカットし、あまり暗くならないようにしながらも眩しさを軽減してくれるというのが最大の特徴です。
また、眩しさだけでなく色々な疾患が原因で起こる「視界の白っぽさ」を解消しコントラストを上げるという効果も期待できます。

「それでもさっきの高機能なサングラスとあまり変わらないじゃないか!?」

と思われる方もいるかもしれませんが、遮光眼鏡ならではの違いを2つご紹介します。

性能と品質

一つ目は、性能と品質です。
各レンズの性能や特性を数値化した資料をメーカーが開示していて、生産においてもその機能性と品質が保証されています。
また、それらの性能を発揮する皮膜の耐久性が安価なサングラスとは段違いなのです!
実際、私が4年間使っている遮光眼鏡もその耐久性を実感しています。

トライアルで自分に合ったものが選べる

二つ目は、専用のトライアルを用いて症状の改善度合いを確かめながら最適なものを選択できることです。
色や濃度の種類が豊富なのは、個人の眼の状態やシーンによって使い分けが必要なためです。

事前に実際に使って自分に合ったものを選ぶことで、安心して購入できますよね。

机の上に様々な遮光眼鏡が並べられている画像
色や濃度は種類が豊富

以上の2点がサングラスとは大きく違う特徴です。
この遮光眼鏡は「補装具」と分類され、視覚障害者が購入する際一定の要件を満たすことで公的な補助が受けられます。

※補装具購入費補助の申請手順は自治体によって異なりますので、お住まいの地域の市役所などでご確認ください。

補装具とは?

ここで、遮光眼鏡を始めとする「補装具」について少しご説明します。

簡単に言うと、障害者が生活する上で必要な器具などが補装具です。
義足や義手、車椅子なとが一般的に知られていますが、視覚障害者の場合は白杖、義眼、眼鏡(遮光眼鏡を含む)がそれにあたります。

見えにくさとの闘い

ロービジョンの人にとって眩しさや視界の白っぽさは大敵です。
外出中の太陽の光はもちろん、室内でも白っぽい部屋や強めの照明などの下では目を開けているのもやっと…という方もいます。

また、視界が白っぽくなると遠近感を感じにくくなるので、地面の段差や障害物を察知しにくかったり、目立ちにくい色の車に気づきにくくなるなど大変危険です。

疾患や見え方の違いで効果には個人差もありますが、そんな環境下でこそ遮光眼鏡が活躍します。

海岸から海を見渡している構図で、太陽の光が降り注いでいる画像
海でなどは特につらい…

遮光眼鏡との出会い

私は2015年4月に障害者手帳を取得したのですが、実はその頃は遮光眼鏡の存在はおろか、補装具として補助される制度があることも知りませんでした。
そのため、紫外線に反応して色が変わるタイプの「サングラス」の購入を検討していました。
もちろん全額自腹です(笑)

どんなものにしようかインターネットで色々と調べているうちに「遮光眼鏡」という言葉が偶然目に留まりました。
最初はサングラスを無理やり日本語的に表現したのだと思っていましたが、さらに調べてみると安価なサングラスとは違う特殊な眼鏡であることが分かり、同時に補装具として申請できれば購入の際に公的な補助があることも知りました。

遮光眼鏡との出会いです。

当然、サングラスの購入を止めて、遮光眼鏡を購入すべく申請方法などを調べまくったことは言うまでもありません(笑)

現在では、私も日常的に遮光眼鏡を使用していますので、ここからは私自身が所有している遮光眼鏡を例に挙げ、実際の利用シーンなどを紹介していきます。

太ももの上に遮光眼鏡を置いている画像

普段使い用「遮光調光タイプ」

私は遮光眼鏡を2本持っていますが、いずれも東海光学株式会社製のレンズと気に入ったフレームを選び、近隣の眼鏡店で作って貰いました。
その内の一つは、紫外線の量によって色が濃くなる遮光調光眼鏡です。

遮光調光が濃い状態の遮光眼鏡
遮光調光の色が濃い状態

当初は、屋内用と屋外用をそれぞれ作ろうかとも思いましたが、外出時の持ち物を少しでも減らしたかったので、この遮光調光タイプ一本にしました。

普段外出する時は、基本的にこの一本をかけっぱなしです。

私の場合は、晴天時の太陽光だけでなく、曇り空の下の白っぽい風景の中でも眩しさを感じるのですが、そんな時に遮光眼鏡が眩しさをかなり軽減してくれます。

コントラストも上がるので、私の白っぽい見え方を補正してくれている実感があります。
私が選んだレンズは「調光機能」もあるので、室内など太陽光が届かない場所に入り、少し時間が経つとレンズの色が抜けて薄い色に変化します。

遮光調光が薄い状態の遮光眼鏡
遮光調光の色が薄い状態

色が薄くなっている状態でも遮光眼鏡としての性能を発揮し、白い物や照明の眩しさを軽減しコントラストをあげてくれるので、屋内外の兼用として便利に使っています。

屋外では信号の色の判別がしやすくなり、近づいてくる人や車などにも気づきやすくなったことで外出時の疲れを軽減し、安全の確保にもつながっています。

ステージ用!?「グラディエントカラー」

ステージの上に照明が降り注いでいる画像

私は、地元の吹奏楽団に所属し打楽器を担当しています。
その活動中に少々困ったことがありました。

普段の練習場所の天井照明が眩しい!

そして何よりも演奏会の時のステージが眩しい!

ステージでは、主に天井から照明の強い光が降り注ぎます。
ステージ全体を暗くする照明効果で足元は暗くなるし、上からはスポットライトなどが襲ってきます(泣)

私の場合、強い光が目に入るとまるで濃霧の中で車のライトを点けているかのように視界全体が白く飛んだ様になってしまって非常に辛い。

もう目を開けていられない程の眩しさなのです。

そこで考えたのがグラデーション。
音楽活動の中でも、特にステージで使用するために2本目の遮光眼鏡を作りました。

グラデーションタイプのレンズをアップで撮影している画像

私が選んだのは、東海光学の「グラディエントシリーズ」です。
レンズの上は濃いめ、下は薄めの色にすることで、天井からの光を軽減し、足元や手元の明るさを確保するのが目的です。
もちろん下側の色の薄い部分も遮光眼鏡としての効果を発揮してくれます。

狙いはバッチリ!
ステージでの行動がとても楽になりました。

遮光眼鏡の良さを皆さんにも

ロービジョンの視覚障害者の多くは、眩しさが辛くて思うように外出できなかったり、思い切って出かけても負担が大きく何かと疲れてしまいます。

もし、遮光眼鏡を上手に活用することができれば、残存する視機能を引き出し、より安全で楽しい生活を送る一助になるのです。

遮光眼鏡を知らなかったり使用したことがない方は、ぜひ一度体験してみてください。
もし、周りに眩しさで困っている方が居ましたらぜひ教えてあげてください。

今回ご紹介した私が使用しているタイプの他にも、フレームの形状に工夫がされていて横からの光も軽減してくれるものや、お手持ちのメガネの上から掛けられるものなどたくさんの種類があります。

展示会で机の上にカラフルな遮光眼鏡やパンフレットが並んでいる画像

眼科によってはロービジョンケアを実施していたり、 視能訓練士が在籍していて遮光眼鏡の選定を相談できる場合がありますので、まずはかかりつけの眼科で相談してみるのが良いでしょう。
ただ、眼科の医師では遮光眼鏡についての知識が少ない場合もあるので、そんな時は各地で開催される視覚障害者向け機器などの展示会や一部の眼鏡店などで、ご自身にどのようなものが合うかを相談したりサンプルを体験することをオススメします。

(記事協力:東海光学株式会社)

遮光眼鏡を使ってお出かけしよう

遮光眼鏡は、ロービジョンの視覚障害者が外出をする時にとても大切なアイテムです。

Spotliteでは、視覚障害者の外出時にガイドヘルパーを派遣する障害福祉サービス「同行援護」の事業所を運営しております。利用者、ヘルパーともに、若年層中心の活気ある事業所です。余暇活動を中心に、映画鑑賞やショッピング、スポーツ観戦など、幅広いご依頼に対応しています。お気軽にお問い合わせください。

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※ 当事務所は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、および香川県に対応しています。

筆者オススメ参考リンク

EyeLife (東海光学株式会社)

遮光眼鏡を体験できる展示会情報 (東海光学株式会社)

遮光眼鏡のお取扱店舗(東海光学株式会社)

この記事を書いたライター

渡辺敏之

1970年神奈川県生まれ。IT関係の自営業をしていたが糖尿病網膜症により、44歳で身体障害者手帳を取得。自分の経験を生かしてロービジョンや白杖に対する啓発活動を行うため、はくたんストラップ制作委員会を発足し、非営利で活動する。防災士。

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渡辺敏之

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