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ひとつでも出来ることを増やす。視覚リハビリテーションを体験。

神奈川県総合リハビリテーションセンターの外観を撮影した画像。

残暑厳しい8月24日土曜日、七沢自立支援ホームで視覚リハビリテーション体験会が行われました。
Spotliteスタッフで視覚障害当事者でもある渡辺が体験した様子を、下田がお伝えします。

七沢自立支援ホームとは

施設名七沢自立支援ホーム
所在地〒243-0121 神奈川県厚木市七沢516番地
最寄り駅小田急小田原線 本厚木駅
運営団体神奈川県総合リハビリテーションセンター
実施業務機能訓練、施設入所支援
電話046-249-2308(総合相談室:下4桁は2309もしくは2352でも可)
受付時間月曜日~金曜日 8:30~17:00

視覚リハビリテーション(通称:視覚リハ)とは、歩行・感覚・コミュニケーション・日常生活動作・スポーツなどの機能訓練のことを指し、視機能の低下による不自由さ、不安感を軽減し、暮らしに広がりを持たせることを目的として実施されます。

今回の体験会では、以下の4つの訓練について、それぞれ30分ずつ体験しました。

  • 日常訓練
  • 点字・PC・タブレット訓練
  • 感覚訓練
  • 歩行訓練

様々な種類の訓練がありますが、全員が全てをできるようになる必要はありません。
家庭での役割などを考慮し、本人にとってできた方が良いことを学んでいきます。

日常訓練室の入り口で、角石訓練士と渡辺が写っている画像。
日常訓練室の前で角石訓練士と。

日常訓練

まず体験したのは日常訓練です。本日の担当は角石さん。
日常訓練室はワンルームの住宅のような作りで、アイランド型のキッチンとダイニング、和室があります。
日常訓練とはその名前の通り、日常生活を送るのに必要な訓練です。
料理、裁縫、掃除、布団敷きなど、家の中で生活するにあたって、当たり前に必要となる部分です。

お茶と裁縫

今回日常訓練で体験したのは、お茶を淹れることと裁縫です。
まず、湯呑二つにお茶を注ぐ体験をしました。

  • スプーン一杯茶葉を計る
  • 茶葉をこぼさないように急須に入れる
  • 電気ポットから急須、急須から湯呑へ注ぐ

などを行うコツを教わりました。

そのコツの一つで、湯呑にお茶がどれくらい入っているか確認する方法をご紹介します。
湯呑を持った時に、『とても熱くて持てない・なんとか持てる・熱くない』の3段階のうち、『なんとか持てる』と『熱くて持てない』の境目の位置がお茶が入っている高さの目安だそうです。
触ってみると、確かに下の方はとても熱く持っていられませんが、境目のあたりはそこまでの熱さではないことが確認できました。

渡辺が両手で湯呑にふれている画像。
実際に湯呑を触って熱さを確認している様子。

裁縫

裁縫では、針に糸を通すための3つの方法を紹介してもらいました。

  1. 昔ながらの糸通しを使う
  2. 上部に溝が切ってある針を使う
    糸を上から溝に引っかけて下の穴に押し込むと穴に通ります。
  3. エスコートⅡを使う
    エスコートⅡは針を煙突のような穴の中に入れて、糸をくぼみに渡し、中央のボタンを押して脇に出てくる糸の端を引っ張ると、糸が通せる道具です。

どれが正解・どれを使わなければいけないというわけではなく、その人がやりやすい方法を一緒に考えていきます。

手探りでも使いやすい糸通し、エスコートつーの画像
様々な糸通しを体験。

普段家事をやらないという人でも、『白衣のボタンだけは自分で付けられるようになりたい』『人が来た時にお茶の一つでも出せるようになりたい』という希望があるそうです。
このようなことは日常生活の中で出来たことが良いことの一つなのでしょう。

電子レンジのボタンに凹凸のシールが貼ってある画像
電子レンジのボタンに凸点シールを貼り、位置が分かるようにしている。

点字・PC・タブレット

次の体験はPC訓練室に移動して、点字・PC・タブレット訓練です。
本日の担当は鈴木さん。

中途視覚障害者で点字を読める人はそう多くありません。
実際、現在はPCやタブレット、スマートフォンで情報を取得したりコミュニケーションを取ることが出来るので、必ずしも必要なものではなくなってきています。
しかし、点字が読めることで、ちょっとした物の判別が出来るというのは、生活に大きく影響します。
物を見分けるのに点字で目印をつけたり、エレベーターのボタンの点字が読めるようになったりと、ちょっと知りたいことを補ってくれます。

また、点字は習得状況が分かりやすい訓練でもあります。
ここまで読めるようになった、前より早く読めるようになった、など、他の訓練と比べて上達が分かりやすく結果に出ます。
そうしてモチベーションを上げることで他の訓練にも良い作用があります。

訓練を行う際は、まずは1文字分の点字(6点)のブロックを使い、点字の構造を知ります。その後、大きい点字を読むことからスタートし、徐々に一般的に使用されているサイズの点字が読めるように訓練していきます。

手のひらサイズの点字一文字分のブロックを手に持った画像
1文字分の点字のブロック。

最近では幅広い年代の方々がPCやタブレット、スマートフォンの訓練を受けています。
新聞の代わりにニュースサイトを見る、天気を調べる、電話やメールをする、などその人に合わせた訓練を適切な機器で行います。

白黒反転されたデスクトップパソコンのモニター画面の画像
白黒反転したパソコン画面でニュースを読む、聞く。

PC訓練では視覚障害者専用の音声ソフト「PC-Talker」を使用し、マウスを使わずキーボードで操作をします。また、視力が使える人は画面表示を拡大したり色を反転するなど、残存視力を活かした使い方で訓練することもできます。

タブレットやスマートフォンは、アップル製品(iPad、iPod touch)が置いてありました。
(希望があればその人が既にお使いの他メーカーのものでも訓練できます。)

最近ではタブレットを使えるようになりたいという希望が多いそうです。

感覚訓練

次の部屋は感覚訓練室です。本日の担当は末田さん。
ここでは文字通り感覚訓練を行います。

人間は視覚から約80%の情報を得ていると言われています。
感覚訓練とは、視覚以外の感覚を使い、視覚で得られる情報を補う基礎的な訓練です。
他の感覚というのは、触覚・嗅覚・聴覚などのことを指します。
手で触ることなど、視覚以外の五感を鍛える訓練だと思っていただければ良いかと思います。

今回体験したのは、パズル、フレームパーツの組み立て、缶の弁別(違いを区別する)の3種類でしたが、部屋には他にもオセロなどのゲームや点線でできた漢字の筆記など、様々な訓練道具が置いてありました。

手の平サイズのパズルのピースをはめている画像
いくつかあるパーツを枠の形に合わせてはめ込む。

イカのような形と四角形の見本を並べた画像
見本と同じ形にパーツを組み立てていく。

たくさんの空き缶が並んでいる画像
同じ材質、形状の缶を触って当てる。

どれもゲーム感覚で、楽しく学ぶことが出来ます。


もう1つ体験したのが、音定位。
前後左右斜めの8方向にスピーカーを設置し、どのスピーカーから音が出ているか判断します。

四方八方をスピーカーに囲まれている渡辺の画像
どの方向から音が聞こえたかを判断する。

この他に、スポーツルームにはサウンドテーブルテニス(STT)の台があったり、フライングディスクなど身体を動かすプログラムもあります。

すえだ訓練士と渡辺が卓球をしている画像
サウンドテーブルテニス初体験。

歩行訓練

最後に体験したのは歩行訓練です。本日の担当は佐藤さん。

歩行訓練室はどの部屋の中でも一番狭い部屋でした。というのも、歩行訓練自体は部屋の中で行うわけではありません。

建物内や周辺で訓練を行った後、こちらの部屋で振り返りをします。
また、材質や長さ、チップなどの種類が様々な白杖がたくさん置いてあり、その人に合った白杖を一緒に選んでいきます。

佐藤訓練士と渡辺が対面で話をしている画像。
最初に普段の歩行の様子などをヒアリング。
グリップが青と緑の二本のはくじょうの画像
グリップが青や緑のオシャレな白杖もありました。

通所の方は1人で安心して施設に通えるようになるために、どの訓練よりもまず最初に訪問による歩行訓練をすることもあるそうです。

今回は階段の歩行を確認してきました。

左手で手すりに捕まりながら階段をおりる渡辺と、横で見守る佐藤訓練士の画像
階段で白杖を使った歩行訓練中。

入所

七沢自立支援ホームでは入所での訓練も可能です。

その間は、同じフロア内の居住スペースで生活することになります。

居住スペースは個室ですが、食堂やお風呂、洗面などは共用の集団生活を送ることになります。その中で、掃除や洗濯の方法なども学んでいきます。集団生活を送る上での必要なコミュニケーション能力も培われることでしょう。

洗濯機と乾燥機と洗面台が並んでいる画像
共同で使用する洗面台や洗濯機。

手続き等

七沢自立支援ホームは、厚生労働省の障害者総合支援法に基づいて設置された指定障害者支援施設です。
利用には一定の条件があるので、詳しくは直接お問い合わせ下さい。

佐藤訓練士が書類を見ながら説明している画像
利用方法など説明してくださる佐藤さん。

感想

今回はそれぞれ30分の体験でした。
その中ではとても体験しきれない、様々な取り組みがあります。

訓練士の方々が、日々アンテナを立てて新しい情報を利用者に提供できるよう努力されている姿が印象的でした。
それぞれ一人一人に合わせた訓練を考えてくれます。

どんな訓練が必要なのか、どんなことを身につけることができるのか、始める前は分からないことや不安なことだらけでしょう。
そんなみなさんに寄り添い、一緒に考え、一緒に成長していくという気持ちの伝わる訓練士の方々でした。

現在、実際に利用している人たちもお見掛けしましたが、みなさんとても楽しそうに過ごされていて、訓練施設は決して堅苦しい場所ではありません。

生活を今より少しだけ良いものにするために、興味があれば見学や相談だけでも構いませんのでお気軽にご連絡ください。

エレベータ前で訓練士三人が笑顔で並んでいる画像
担当してくれた職員の皆さん。左から末田さん、角石さん、鈴木さん。

問い合わせ先

七沢自立支援ホーム
電話:046-249-2308(総合相談室:下4桁は2309もしくは2352でも可)

この記事を書いたライター

下田ゆかり

1985年神奈川県生まれ。警備業に10年以上従事していたが、28歳の時、交際相手が視覚障害者になったことをきっかけに、ガイドヘルパーの仕事を始める。同行援護従業者養成研修一般過程・応用過程修了。介護職員初任者研修修了。

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下田ゆかり

1985年神奈川県生まれ。警備業に10年以上従事していたが、28歳の時、交際相手が視覚障害者になったことをきっかけに、ガイドヘルパーの仕事を始める。同行援護従業者養成研修一般過程・応用過程修了。介護職員初任者研修修了。

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