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アイフェスタ2019 in横浜(前編)

神奈川県ライトセンターの入り口に立つ渡辺敏之さん

今回は、神奈川県ライトセンターで行われたアイフェスタ2019 in横浜の様子をSpotliteの渡辺(視覚障害者)と下田(ガイドヘルパー)がご紹介します。
盛りだくさんの内容でしたので、前編と後編の2回に分けてお伝えします。

アイフェスタ2019 in横浜とは

神奈川県網膜色素変性症協会が主催し、隔年で開催している視覚障害者向けの福祉機器展です。

見えない・見えづらいを補い、生活を便利に快適にする製品・サービスが一堂に会します。また、眼科医の個別相談会、今話題の視覚障害者向けデバイス「オーカム」講習会、好評のiPad、iPhone講習会、盲導犬歩行体験会等も開催します。

アイフェスタ2019in横浜 特設ページ
日時2019年4月14日(日) 10:00~15:00
会場神奈川県ライトセンター
主催神奈川県網膜色素変性症協会
協力神奈川県ライトセンター
後援神奈川県、横浜市健康福祉局、神奈川県眼科医会、神奈川新聞社、神奈川県難病団体連絡協議会、テクノエイド協会

主な内容

福祉機器展示コーナー

企業・団体数34社。福祉機器、便利グッズ、UD家電、開発中の機器が勢揃いしました。

講習会

メガネに取り付け、字を読み、人を教えてくれる話題の新商品「 オーカムマイアイ2の商品紹介」
「知っておこう!補装具・日常生活用具のあれこれ」
「ICTが作る視覚障害者への情報ケア」
NTTドコモ講座「初心者向け便利機能体験編」の各講習会が行われました。

個別相談会

事前申し込み制で、医療相談・ピア相談・就労相談が行われました。

その他

盲導犬体験歩行の他、パン、コーヒー、ハンバーガー、お弁当の販売もありました。

詳細が知りたい方は、アイフェスタ2019 in横浜特設ページをご覧ください。

印象に残った展示ブース

福祉機器展示コーナーの中でも、特に印象に残ったものを中心にご紹介します。

東海光学株式会社

多くの遮光眼鏡が箱に入っている画像

様々なカラーの遮光眼鏡が用意してあります。
見本を使い、実際に外に出て太陽の光の下での見え方も体験させてくれます。
オーバーグラスやクリップオンのタイプもあり、様々な形や色から自分に合った遮光眼鏡を相談することが出来ます。

担当者のお話

近くを見たいと思った時、ルーペや拡大読書器を使うことが多いですが、それと併せて遮光眼鏡という選択肢があることも知ってもらいたいです。
「外は眩しいなあ」と思いながらルーペを使うのではなく、遮光眼鏡で眩しさが軽減されればもっと楽に物が見られるかもしれないからです。
病気だから眩しいのは仕方がないと諦めるのではなく、改善できる可能性があるということです。
一般的なサングラスと違い、遮光眼鏡にはコントラストを上げる効果があります。カラーによってはコントラストを大きく上げる効果を期待できたり、視界の白っぽさを改善できることもあります。室内でも照明の眩しさが軽減されたり見え方が改善されたりする場合もあります。
また、黒いものが必ずしも良いというわけではなく、平昌パラリンピックの時に、視覚障害者の選手達は雪の中の競技の際に黄色やオレンジのゴーグルをつけて競技に臨んでいました。
今ある見え方を有効に使っていただくためにも、遮光眼鏡という選択肢を知ってもらいたいですね。
こういった企業は、はじめたらやめない努力をしなければいけない。
注文してくれる人が1人でもいるうちは続けなければいけないと思っています。

下田から一言

会場を歩いていた方からは「サングラス屋さんのブース」という声が聞こえてきました。
遮光眼鏡の知名度は決して高くはありません。
しかし、担当の方からは「少しでも楽に生活出来るようになる選択肢として知ってもらいたい」という視覚障害者に対する気持ちが伝わりました。
必要な人に届けるためには、私たちも情報発信が必要だと感じました。

日本盲導犬協会

盲導犬が2頭座って待機している画像。

ブースでお話を伺ったあと、視覚障害者で普段は白杖ユーザーの渡辺が盲導犬の歩行体験を行いました。
一緒に歩いてくれたのは白いラブラドールレトリバー。とても愛嬌のある子で、ハーネスを外すとしっぽをぶんぶん振ってくれました。

下の写真は盲導犬のグッズです。
洋服や携帯用の水を飲む容器、トイレ用のベルト、ブラッシング、靴下、歯ブラシなどが必要です。

盲導犬の洋服やトイレ用のベルト、水を飲む容器などが机の上に並んでいる画像

担当者のお話

盲導犬について、誤解がまだまだたくさんあります。
目的地を言うと自動的にそこまで連れていってくれると思っている人が多くいます。例えば、東京駅と言うだけでそこまで案内してくれると思われているのです。あとは、食事やトイレも我慢して仕事をさせられているという誤解もあります。
当事者にも正しく盲導犬について知ってもらいたいという気持ちから、今日のようなイベントに出展しています。

盲導犬は見えない・見えにくい人全員に必要だとは思っていません。
白杖歩行やガイドを使った歩行など色々な方法がある中の選択肢の1つです。
視覚障害者の中にも、「盲導犬は高いお金を出して買うもの」「全盲じゃないと持てない」と誤解している人も多いです。
盲導犬について正しく知ってもらって、その上で自分に合った歩行方法を選んでもらいたいなと思います。

盲導犬の体験歩行をする渡辺さんを後ろから撮影した画像

渡辺の体験レポート

実は盲導犬との歩行は初めてだったのですが、とにかくわんちゃんを全面的に信頼して歩いてみました。
自ら白杖で足元を探るのとは違い、安全確保を盲導犬に委ねることで周りの様子や人の賑わいを感じながら歩くことが出来ました。
きっと外を歩いたらすごく楽しいんじゃないかと思います。
なによりも「一人きりではない」という安心感がありましたね!

株式会社KOSUGE

いわずとしれた、白杖メーカーのひとつです。
たくさんの種類の白杖が並んでいて、実際に触れることが出来ました。
どんな白杖が合っているのかの相談も受けられます。

小菅社長とは何度も福祉機器展でお会いしていますが、自分の作った白杖への愛が溢れているステキな方です。

白杖本体だけでなく、信号の色が分かるシステムや道案内のデバイスなどのお話もしてくださいました。
小菅社長は、白杖の製造販売の他にも高精度GPSを利用した「みちびきプロジェクト」などをはじめとする視覚障害者を支援するナビゲーションシステムの開発などにも尽力されています。
毎回お会いする度に進捗状況や新たな取り組みなどに関するお話をしてくださるのですが、いつもとても楽しげにお話されるのが印象的です。

渡辺から一言

メーカーによって材質の違いやグリップ部分の工夫など様々な違いがあります。
握りやすさや、地面を叩いた時の感触など、結構違うものです。
私はKOSUGEさんの「マイケーン」を主に愛用していますが、毎日のように使う物ですから、皆さんも自分に合ったお気に入りのメーカーを探してみるのも良いのではないでしょうか。

ユーザー特典?

白杖の紐についたクリップを服に挟んでいる画像

KOSUGE製品のマイケーンユーザーには社長夫人お手製(?)のストラップ部分に取り付ける便利なクリップをプレゼントしてくださいました。
一時的に白杖から手を離したい時などに大変便利なグッズですね。
けっこうあちこちのイベントで配布しているとのウワサも!?

株式会社QDレーザ

QDレーザの眼鏡が3個机の上の置かれている画像

レーザーを使用して網膜に直接映像を投影出来る眼鏡型デバイスです。
特殊なレーザーを使用することによって屈折異常や一部の視野障害に影響されることなく文字がはっきり見えたり、スマホで撮影した写真がクリアに見えたり、パソコンやスマホの動画を楽しんだりと、可能性は無限大。

渡辺の体験レポート

以前プロトタイプの頃にも体験した事がありましたが、その頃からかなり進化していました。
デザインもスッキリとしていい感じです!
今回、私は中心暗点がある左目で体験しました。
その人の症状などの違いによって得られる効果は様々とのことですが、私の場合は中心暗点のため、劇的な効果は得られませんでしたが、担当者さんのアドバイスで目線や機器のフレーム位置を工夫し調整することで肉眼では見えない中心視野に近い感覚の見え方を擬似的に体験することが出来ました。
最近、いくつかのメガネ型デバイスが開発されていますが、このQDレーザーも選択肢の一つとして今後の更なる進化に期待したいですね。
担当者の方は、まだまだ今後進化していくとおっしゃっていました。
小型化したり、無線にしたりすることは考えているそうです。
いずれは既存の眼鏡型文字認識デバイスと合わせて、ひとつのものが出来るのではないかという夢も聞かせていただきました。

QDレーザを実際に体験する渡辺さん

KGS株式会社

ブレイルメモが机の上に置かれている

埼玉県比企郡小川町に本社を置くケージーエス株式会社は、ソレノイドと呼ばれる工業用機器を製造するメーカーです。
そのソレノイド生産の技術を活かしたブレイルメモをはじめ、視覚障害者用の機器を生産・販売しています。
地域に根付いた昔からの社風で、福祉機器メーカーとしても愛されており、地元には同社を応援する人も多いと聞きます。
今回のアイフェスタでは、点字ディスプレイ「ブレイルメモ」シリーズの展示や、最近話題のオーカムマイアイ2を紹介していました。

SINKA株式会社

触って分かる素材が印刷された紙の画像

熱発泡素材をコーティングした専用シート(立体シート)を使用し、サーマルヘッドにより熱を加えた部分だけを精細に膨らませます。
立体イメージプリンターで点字や触地図の印刷をしたり、バスケットボールや畳、皮などの質感を表現したり。
「見ること=触ること」という視覚障害者は、とにかく触ってわかるものが増えるのはとても嬉しいです。

渡辺の体験レポート

材質の硬さや温度感の再現は難しい様でしたが、印刷面にしっかりとでこぼこがあるので、色々な物の感触を体感することが出来ます。
アイディア次第では何か楽しいことにも活用できそうです。

ドコモ・サポート株式会社

写真を凸凹印刷した紙をホワイトボードに貼っている画像

こちらも立体印刷なのですが、一つ前のSINKA株式会社の立体プリンターが物の表面の触感を再現するのに対し、こちらのプリンターは物の輪郭を強調して立体的に印刷するものです。

ブースでは、撮影した写真をその場ででこぼこのある絵に印刷してくれるサービスを行っていました。
顔の形やパーツ、髪型までそっくりに出してくれるので、本人の顔を触って確認しなくてもこの立体印刷を触ることでイメージが出来ます。

ちょうど株式会社KOSUGEの小菅社長が立体化されていたので、めちゃめちゃ触ってきました(笑)


後編でも福祉機器展示コーナーの様子をご紹介します。お楽しみに。

アイフェスタ2019 in横浜(後編)

この記事を書いたライター

下田ゆかり

1985年神奈川県生まれ。警備業に10年以上従事していたが、28歳の時、交際相手が視覚障害者になったことをきっかけに、ガイドヘルパーの仕事を始める。同行援護従業者養成研修一般過程・応用過程修了。介護職員初任者研修修了。

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下田ゆかり

1985年神奈川県生まれ。警備業に10年以上従事していたが、28歳の時、交際相手が視覚障害者になったことをきっかけに、ガイドヘルパーの仕事を始める。同行援護従業者養成研修一般過程・応用過程修了。介護職員初任者研修修了。

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