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聞いてみた・やってみた

視覚障害者のみなさんと一緒にクレープを作りました。ガイドヘルパーのイベントレポート

両手で四角い白いお皿を持っているところ。お皿のはしの方に、扇形に畳まれたクレープが盛り付けられ、お皿中央にチョコレートでスマイルとハートのイラストが描かれている。

Spotliteが運営する、同行援護事業所みつきのガイドヘルパーである“みーちゃん”さん。今回は、みつき主催のイベント「手作りクレープパーティー」のレポートをしてくれました。

「学びたい」と「食べたい」の気持ちで依頼を受けた私

ガイドヘルパーのみーちゃんです!

先日、みつきで行われた「手作りクレープパーティー」に、ガイドヘルパーとして視覚障害者のSさんと参加しました。

この依頼を受けたのは、「調理」というヤケドやケガなどの危険も伴う行為では、ヘルパーとしてどのような声かけやサポートをするべきか知りたいと思ったからでした。実は、間もなく開催される「そば打ち体験会」の講師をする予定であったこともあり、実地調査も兼ねての参加です。

水族館のお土産ショップで、シャチの被り物を試着して満面の笑みのみーちゃん。
ガイドヘルパーの“みーちゃん”さん(写真提供:みーちゃん)

なにより、二十数年間生きてきて、私はクレープを一度も食べたことがありませんでした。初めて食べるクレープを自分で作るというワクワク感も手伝い、思わず依頼を受けました。 

「クレープネーム」を決めて自己紹介からスタート

当日は、まず参加者がそれぞれ自分の「クレープネーム」を決めました。クレープパーティーの間は、皆さんいつもとは違う名前で呼び合います。

クレープネームの発表と自己紹介が終わったら、クレープづくりに必要な道具と材料の紹介です。

生地を伸ばす道具「とんぼ」は、竹串に平らな板が斜めについているもので、実際に伸ばす動きを確認しましたが、安定した動きでぐるりと一周回すのは想像以上に難しいものでした。

 練習を終えたらいよいよクレープ作りです。ホットプレートの位置を確認して、お玉ひとすくい分のクレープ生地を流し込みます。生地を入れるとあっという間に火が通るので、とんぼを使ってまあるく生地を伸ばします。片面が焼けたらひっくり返して、両面に火が通ったら生地のできあがりです。

最後はトッピングです。おかずクレープ用のツナやレタス、スイーツクレープ用のチョコや果物とクリームなど、たくさんの具材から好きなようにトッピングしました。トッピングを終えたら、折りたたんでクレープの完成です!

クレープ教室の当日の様子。キッチンのあるレンタルスペースにテーブルが並べられ、2台以上のホットプレートでクレープを焼いているところ。視覚障害者もヘルパーも笑顔で楽しそうな様子。

失敗しても話し合って、2枚目を焼くときは一丸となる

ここからは、ヘルパー目線で感じたクレープ作りの難しかったこと、楽しかったことをお話しします。

まず難しかったことです。

ひとつめは、プレートの上で生地を伸ばす作業です。生地を流し込んでしまえば、火が通るのを止めることはできません。プレートや生地は熱々なので触ることもできません。

着々と生地が焼けていく間で、どのように成形すれば良いかを言葉で的確に伝えるのには工夫が必要でした。

焼く流れは、お玉を使って生地を流し込み、トンボを使って生地を伸ばし、最後に穴あきターナーでひっくり返す、というものです。道具をどんどん持ち替えていくなかで、トンボに引っ掛かり、生地が丸まってしまうこともありました。

その際に、焦ることなく道具の持ち替えをしたり、手を添えながらトンボを持つ角度をお伝えしたりすると、比較的上手くできたように思います。

ふたつめはトッピングです。Sさんに、どの位置に何が配置されているかをクロックポジションで伝えました。クロックポジションは、時計の針に例えて位置を伝える方法ですが、私は未だにこの方法が不得意です。

しかし、机で向かい合って作業している時など、左右でお伝えするよりも混乱がなく、具体的でイメージがしやすいと思うので、当日は主催スタッフの力を借りながら、利用者さんがトッピングしやすいように頑張りました。

今回は、Sさんに手に触れても良いと承諾をしてもらって、丸いお皿を一緒になぞっての位置確認もしました。

次に楽しかったことです。それは、利用者さんと試行錯誤しながらクレープ作りを繰り返しできたことです。生地は、参加者それぞれ3枚程度焼くことができたので、2回目以降は1回目の失敗から反省点を話し合い、まずプレートの前でイメージと動きの練習をしました。

言葉での伝え方、手を取っての誘導を、調理前にイメージトレーニングをして、焼き始めるときは2人で一丸となりました。

また、失敗の内容は、生地が丸くならないとかやぶれてしまうということだったので、その生地をいかにリカバリーしてクレープの形にするのか、利用者さんと楽しく考えられたと思います。

個人的には、初めて食べるクレープは、大変美味しかったです。おかずクレープとスイーツクレープ、どちらもハマりそうです。また参加したいのでイベントの開催と同行の依頼をお待ちしています。

ホットプレートでクレープ生地を焼いている視覚障害者とガイドヘルパー。お皿の上に焼きあがったクレープが畳んで盛り付けられている。

やりたい気持ちをどうしたらサポートできるか

今回、利用者さんと一緒に調理をする中で、ヘルパーとしてどのようなことができるのか、実際に視覚障害者が必要とすることや工夫ができることを、調理イベントの体験を通して知ることができました。

別の依頼で、中途で視覚障害になった方と出会ったのですが、その方から「お料理が好きだったけれど、もうできないんだ。でもやりたいなという気持ちはある」というお話を聞きました。

たしかに、難しい点はたくさんあります。調理中は危険もありました。しかし、それらをクリアして、「やりたい」という気持ちを少しでも多く実現する方法を、調理でもそれ以外でも考えられるといいな、とあらためて思った時間でした。

執筆:みーちゃん
記事内写真撮影:Spotllite(※注釈のあるものを除く)

この記事を書いたライター

Spotlite編集部

Spotlite編集部は、編集長で歩行訓練士の高橋を中心に、視覚障害当事者、同行援護従業者、障害福祉やマイノリティの分野に精通しているライター・編集者などが協力して運営しています。

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