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「視覚障害がある若い世代の『KOREKARA』に多彩な光を」 声楽家 北原新之助さん

ミュージカルの舞台に立つ北原さんの画像。

今回お話を伺ったのは北原新之助(きたはらしんのすけ)さんです。

声楽家として活動しながら、現在はSNSで視覚障害者が交流するコミュニティを立ち上げ、今月末には第1回目のイベント「KOREKARA(これから)」も企画しています。

網膜色素変性症の当事者でもある北原さんが、幅広い活動を行う思いをお聞きしました。

略歴

1990年香川県生まれ。中学校まで普通校で学び、筑波大学附属視覚特別支援学校高等部音楽科へ入学。同専攻科音楽科を経て、武蔵野音楽大学音楽学部声楽学科を卒業。2015年、公益財団法人ダスキン愛の輪基金のダスキン障害者リーダー育成海外研修派遣事業で欧州に1年間留学。現在は会社勤務の傍ら、声楽家として活動。
受賞歴に、第57回ヘレン・ケラー記念音楽コンクールヘレン・ケラー賞。第61回全日本学生音楽コンクール東京大会高校の部で入選し全国大会出場。

インタビュー

ー見え方や病気のことを教えて下さい。
網膜色素変性症を発症し、現在の見え方は両目ともに視力が0.1、視野は5度程度です。夜間だけは白杖を使って歩行しています。
姉が同じ疾患だったので、生まれてすぐに病院で受診して網膜色素変性症と診断されました。当時は日本で最も早く病気が分かった事例だったようです。


ー現在、お仕事は何をしているのですか?
声楽家として活動しています。イベントや舞台、結婚式などで歌っています。昨年は、NPO法人チャレンジド・フェスティバル主催「チャレフェス文化祭2019」にてミュージカルに出演しました。
現在、会社員としても少し勤務しているのですが、いずれは声楽だけで生計を立てたいと思っています。 


ーなぜ歌に興味を持ったのですか?
小学生の時、4.5.6年生は週に一度、朝の音楽の会というのがあり、体育館に集まってみんなで歌を歌っていました。
音楽の先生から「北原くんは歌がうまいから、みんなの前で歌ってごらん」と言われて、1人で独唱することになりました。歌い終わって拍手を受けた瞬間、胸を突き抜ける衝撃があり、「歌の道に進みたい」と直感的に感じたことがきっかけです。


ーそこから音楽を本格的に学んでいくのですね。
中学校では吹奏楽部に所属しながら、声楽の先生の個人レッスンを受けました。見えにくさは少しづつ進行して黒板も見えにくくなっていたので、高校は盲学校に進学することにしました。そして、筑波大学附属視覚特別支援学校高等部に音楽科があることを知って、入学しました。

北原さんが観衆の前で歌っている画像。
2018年、地元・香川県で凱旋の演奏と講演を行う。

ー海外での留学経験もあるのですね。きっかけは何だったのですか?
盲学校の先輩から、ダスキン愛の輪基金のダスキン障害者リーダー育成海外研修派遣事業があることを教えてもらって応募しました。約1年間、海外に留学し、宿泊の手配や研修先の選定、交渉なども全て自分で行います。私は、2015年度の第35期として採択されて、オーストリアとドイツに留学しました。


ーどんなことを学んだのですか?
私の研修テーマは、オーストリアとドイツにおける音楽療法と福祉支援、教育環境について学ぶことでした。現在の日本において、音楽療法はまだまだ浸透しているとは言えません。音楽療法に対する捉え方も「音楽を聴いて癒されること」といったように少し偏っている面があると僕は感じています。オーストリアでは、現地にいる日本人の音楽療法士からお話を伺いました。


ーオーストリアと日本では音楽療法にどのような違いがあったのでしょうか?
例えば、発達障害で足が動かない子どもの足の裏に太鼓を当てて叩くと、振動が脳に刺激をもたらして、今は歩けるようになったという事例もあります。オーストリアでは、音楽療法士が理学療法士と同等くらいの信頼があり、病院や介護施設など多くの現場で活躍しています。日本でも、音楽療法には様々な分野があることを広めたいと感じました。

北原さんがイギリスの施設で利用者や職員と風景画を見ながら話をしている画像。
イギリスの高齢視覚障害者が入居する施設にて利用者に話をする。

ー福祉支援や教育環境についてはいかがでしたか?
欧州諸国の盲学校や職業訓練施設、視覚障害者のためのサービスを備えた美術館や博物館など、約30施設で100名程の方にお話しを伺いました。その中で、リハビリ施設の施設長を務める全盲のオルガンティーニさんが日本に旅行された時のお話が印象的でした。


ーどのようなお話だったのですか?
渋谷のスクランブル交差点を渡っていて感じたことが、「東京は色んなところに点字があり、点字ブロックもきちんと整備されてて、信号機は鳥の声が鳴くでしょ?あれは凄いよね。でも、交差点を渡ってて誰も僕に当たらないんだ」とおっしゃいました。私は、視覚障害者が歩いていたらよけるのが常識だから…と思いましたが、「イタリアは点字ブロックがそれほど整備されていない。でも歩いてると、みんなが触れて助けてくれるんだ。大きくハグしてくれたりもするしね」と。


ーハード面とソフト面、それぞれで環境が違うということでしょうか。
はい、視覚障害者のために設備が完璧に整った街、それを求めることが本当に豊かな環境と言えるのか私は疑問です。本当の豊かな街づくりに必要なことは、このオルガンティーニさんのお話の中にあるのだと思います。

イギリスの施設で廊下の壁にかけられた織物を触る北原さんの画像。
利用者が毛糸で編んだ織物を鑑賞。

ー最近、SNS上で視覚障害者が集まるコミュニティも運営されているのですよね。
はい、昨年の8月にTwitterで「なぜ、SNSで網膜色素変性症の人たちのコミュニティがないのだろう」と投稿すると、同じことを投稿している方がいました。
その方と一緒に「網膜色素変性症コミュニティ」というアカウントを作り、情報を発信したり、コメントをするなど、交流を行っています。更に活発な話ができればいいなと思い、9月からはLINEのオープンチャットも始めました。


ーLINEのオープンチャットとは何ですか?
LINEの中で、自由にやり取りができるクローズドなグループです。自分のLINEアカウントの紐付けはされず、あだ名でも参加できるので、プライバシーを守りながら交流ができます。今、120名以上の方が参加されています。視覚障害者が情報を共有する方法はメーリングリストが多いですが、今の時代にはSNSで気軽にやり取りができる方が合っているのかなと思います。


ー運営する上で気をつけていることはありますか?
視覚に障害のある方がたくさん参加しているので、画像を投稿する時は言葉で説明したり、スタンプは音声付きのもののみを使用するというルールは設けています。
それ以外は、最初に基本的な注意事項を最初に読んでもらうだけで、自由に交流ができています。


ー参加者からの反響はありましたか?
中途で視覚障害になって、当事者の意見を聞きたいけど、周りに相談できる人がいないという声がたくさんありました。私は盲学校に進学したので、自然と視覚障害者と関わっていましたが、多くの方は情報不足で困っていたのです。例えば、障害者年金のことを今まで知らなかったという人がいれば、申請の方法や具体的な注意点などを共有しています。

カフェでインタビューに答える北原さんの画像。

ー皆さんが集まるイベントも企画されているのですよね。
SNSの中での交流だけでなく、実際に皆で集まれる場所も作りたいと思ってイベントを企画しました。「KOREKARA」という名前で、視覚障害に関する色々なテーマについて考える機会にしたいと思っています。


ーどんなイベントなのですか?
今回のテーマは就労で、3人のゲストをお迎えしたトークセッションも予定しています。また、企業や団体向けのブース出展やパンフレットの設置も行います。
定員90名のうち、現在約60名の申し込みがあり、そのほとんどは20~40代です。私は、既存の視覚障害者団体には参加していないのですが、メンバーの高齢化や固定化が課題だという話を耳にします。
今回のイベントでは、それぞれ社会で働く若い世代が出会える機会を作りたいと思っています。


ーこれからどのような形に発展させていきたいですか?
イベントは今後も定期的に開催していきたいと思っています。そこでは参加者同士が交流するだけではなく、企業や団体の方とお話する中で、就職や転職につながるのもいいかもしれません。今回の申し込み者にアンケートをすると、就労に関する関心が圧倒的に高かったですから。
また、SNSの中では「メンバーの皆さんと旅行に行きたい」という声も出ているように、参加者の交流から新しい場やアイデアが広がって、暮らしやすい生活ができるのかなと思ってます。

白杖を木に立てかけて芝生の上に座っている北原さんの画像。

ー現在の日本の視覚障害者を取り巻く課題は何だと思いますか?
職業の選択肢が少ないことだと思います。イギリスの盲学校に伺った時に、16歳以上の方を対象にしたコースは、芸術、マスコミ、語学、スポーツなど、10以上の専攻があり、それを国が支援していることに感銘を受けました。日本の職業選択は、音声パソコンを使った業務とマッサージが主流です。


ー日本ではその2つが一般的だと捉えられているようにも感じますね。
コミュニティを始めて分かったのですが、実際は色々な仕事をされている方がいらっしゃいます。看護師や理容師さんもいました。理容師は、自分が見えにくいために、カットできる髪型を事前に伝えて理解してもらっている工夫をしているようです。視覚に障害があっても可能性を限定せず、自分ができる方法を一緒に考えていければいいなと思っています。


ー北原さんは幅広い活動をしていますが、どのような社会を作りたいと考えていますか?
留学中、2012年ロンドンパラリンピックの閉会式で人気ロックバンドと視覚障害者の演奏家が共演する映像を見た時に、お互いをプロの演奏家として認めあって創り上げる音楽に大きな感銘を受けました。
日本では「全盲の〇〇」「車椅子の〇〇」というように、障害が先に捉えられる傾向にあります。でも、「歌が得意な人」「パソコンが得意な人」など、個々の尊重すべきところが先にあって後から障害という個性が付いてくる。SNSやイベントの運営を通して、皆が本当にやりたいことへ一歩でも近づけるためのお手伝いができればと思っています。


ー今、悩んでいる視覚障害者に伝えたいことはありますか?
私はよく「1人で悩まず、みんなで悩もう」と言っています。せっかく同じような境遇の人のコミュニティがあるので、そこで自分の悩みを共有してほしいです。そうすると同じ悩みを抱えている人のためにもなります。
また、やりたいことや得意なこともどんどん発信してほしいです。まずは発信することで、協力してくれる人とつながり、形になっていくと思っています。何か困ったことがあれば、気軽にご連絡ください。

ミュージカルで歌う北原さんの横顔をアップで撮影した画像。
2019年「チャレフェス文化祭2019」にてミュージカル初出演。

コミュニティのご案内

  • 網膜色素変性症コミュニティ
    網膜色素変性症の患者や家族が中心です。
    Twitter:@R_P_community

  • 視覚障害者コミュニティ
    疾患や見え方に関わらず、視覚障害者や家族、支援者が中心です。
    Twitter:@communityblind

KOREKARAのご案内

『KOREKARA爆誕!〜視覚障害者のKOREKARAに多彩な光を灯す〜』

こんなことを思った方はいませんか?
「視覚障害者の生き方の選択肢が限られている」
「悩みを共有できる場所がない」
「視覚障害があっても自分らしく生きている人と出会って自分も前に進みたい」

KOREKARAは視覚障害者が、仕事/スポーツ/芸術/恋愛/エンタメ/家族/支援者など、様々な角度から視覚障害者の新たな生き方を共に探していくコミュニティです。

第1回オープニングイベントとしてKOREKARAのご紹介、今後の展望および視覚障害者の仕事について、様々な職種で活躍されている当事者によるトークセッションを開催いたします!

《日時》
2020年2月22日日曜日 18時30分~21時

《会場》
文京シビックホール 会議室1
〒112-0003
東京都文京区春日1-16-21 文京シビックセンター3階

《アクセス》
• 東京メトロ丸ノ内線・南北線 後楽園駅(5出入口)直結
• 都営地下鉄三田線・大江戸線 春日駅(文京シビックセンター連絡口)直結
• JR中央・総武線水道橋駅(東口)徒歩約10分

《参加費》無料

《定員》90名

《応募方法》
以下のフォームをご記入ください。
https://docs.google.com/…/1FAIpQLSerhSRp5bc2bx4Ly…/viewform…
※フォームへの入力が難しい場合は、問い合わせアドレスに「氏名.メールアドレス.駅から会場までの誘導が必要な場合の到着駅と到着時刻、その他参加に当たって必要な配慮」をご記載の上ご連絡ください。

《当日スケジュール》
18時~
受付開始

18時30分~
オープニング&アイスブレイク

19時~
視覚障害者のKOREKARAの仕事を語ろう 〜トークセッション&ディスカッション〜

19時45分~
クロージング&写真撮影
※写りたくない方は当日スタッフにお伝えください。

20時~
交流会&ブース展示会

21時~
解散

こちらで飲み物、お菓子をご用意いたします!
また視覚障害者支援に関連する団体のブースを複数設けております。

《こんな人に来て欲しい》
・視覚障害者の新たな可能性について共に探求し、チャレンジしたい方
・視覚障害者で様々な分野で挑戦をしている方から刺激を受け、可能性を広げたい方
・似た困難に直面している人と、前に進むための工夫や情報交換をしたい方

《お問い合わせ》
korekara.toiawase@gmail.com
KOREKARAに関する質問はこちらにお願い致します。

この記事を書いたライター

Spotlite編集部

Spotlite編集部は、編集長で歩行訓練士の高橋を中心に、視覚障害当事者、同行援護従業者、障害福祉やマイノリティの分野に精通しているライター・編集者などが協力して運営しています。

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Spotlite編集部は、編集長で歩行訓練士の高橋を中心に、視覚障害当事者、同行援護従業者、障害福祉やマイノリティの分野に精通しているライター・編集者などが協力して運営しています。

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