美しい作画や声優さんの迫真の演技が注目されるアニメですが、視覚障害者はどのようにアニメを楽しんでいるのでしょうか。見えない・見えにくいなかでの楽しみ方を3人の方に座談会でお聞きしました。
参加者プロフィール
はるかさん
見え方:先天性の全盲
お仕事:事務職、福祉関係事業所勤務、ピアカウンセリングなどパラレルワーク
好きなアニメ作品:宮野真守さん出演作品、『七つの大罪』
カイトさん
見え方:生まれつき弱視、日常的に点字を使用
お仕事:「漫画の音声化」をテーマに研究をしている大学院生
好きなアニメ作品:『灼眼のシャナ』
こずえさん
見え方:スマホ程度の視野、スマホの文字が見えるくらいの視力
お仕事:事務職(在宅)
好きなアニメ作品:『ダンダダン』、『光が死んだ夏』、『タコピーの原罪』
解説
- 宮野真守さん(声優)
声優業の他に歌手や俳優などもしている。声優としての代表的な出演作品(括弧内は演じたキャラクター)は『DEATH NOTE』(夜神月)、『東京喰種』(月山習)、『亜人』(永井圭)、『鬼滅の刃』(童磨)などがある。 - アニメ『七つの大罪』
鈴木央のマンガ原作のアーサー王伝説の前日譚を描いたファンタジー作品。 - アニメ『灼眼のシャナ』
高橋弥七郎によるライトノベル原作のバトル/ファンタジー作品。 - アニメ『ダンダダン』
龍幸伸のマンガを原作とするオカルト/バトル作品。 - アニメ『光が死んだ夏』
モクモクれんのマンガを原作としたホラー/ブロマンス作品。 - アニメ『タコピーの原罪』
タイザン5のマンガを原作とした、地球外生命体タコピーと複雑な家庭事情を抱える少年少女の交流を描いた作品。
見え方が違えば視聴スタイルも変わる?

―皆さんがアニメやマンガを好きになったきっかけはありますか?
はるかさん(以下、はるか) 6歳のときに『セーラームーン』シリーズにハマったのがきっかけです。ピンクや水色の“ゆめかわ”なグッズが、さわっても見てもかわいくて、友達を信じて戦うストーリーが好きでした。私は生まれつき全盲なのですが、家族が色やイメージを詳しく教えてくれていたので、見えなくて不便ってことはなかったです。『セーラームーン』の塗り絵とかもしてました。
こずえさん(以下、こずえ) 私はロボット系が好きで小学生の頃の『魔神英雄伝ワタル』が最初ですね。格好良くて、弟と一緒に観ていました。
カイトさん(以下、カイト) 幼稚園に入る前くらいから定番の『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』、当時やっていた『リロ・アンド・スティッチ』日本版や『怪談レストラン』、父が好きだった『こち亀』も少し観ていました。小学校高学年あたりで友達に勧められて『ポケモン』とか『ONE PIECE』を観始めました。アニマックスを契約してからは時間を合わせて毎週観るようになり、幅も広がりました。
―アニメを観るときはやはり音声ガイドがついているものなのでしょうか?
はるか 音声ガイドがついているかは考えたことないですね。ストーリー重視で台詞を聴いていて、どうしても見えないとわからないところは、感想ブログ読んだり公式ポッドキャスト(※作品の解説や見どころの紹介が行われる)を聴いたり見える友達に聞いたり、それから生成AIのGeminiに「このシーンってこういうこと?」と聞いたりしています。穴を埋めていって楽しむ形です。
もちろん作画なども見えたらいいけど、映画の場合は4DXで動きも楽しめるので、「見えなくてつらい」みたいなことはないですね。大好きな作品は放送後に補完しますが、放送時に聴いてストーリーを楽しんで満足する作品もあります。キャラクターの生死がわからないときは友達に確認します(笑)。もし原作の小説やノベライズがあれば、音声図書を読んで補う感じです。
カイト 小さいときから画面に近づいて、見えないところは音声で補っていました。音声ガイドがあったらラッキーなので、サブスクではあったらとりあえずウォッチリストに入れておきます。作画の細かさは僕も見えないので、ストーリーや声重視です。
字幕が見えないので、テレビ画面をOCRで読みこむなど方法はあるんですが、面倒くさくなってしまって。『無職転生〜異世界行ったら本気だす〜』の魔神語のような作中オリジナル言語は原作小説を読んで理解しています。
こずえ テレビくらいだったら視野に入るので、動作が速かったら一時停止や副音声を使っています。最近は『ダンダダン』や『銀魂』観ているので速度が(笑)。
読書バリアフリーが充実しているのは『ゴルゴ13』
―先ほど出てきた4DX(座席が前後左右や上下に動くモーションや水や風、香り、フラッシュを使って映画を体感する機能)はどんな風に活用されているのでしょうか?
はるか 私は正直動かなくてもいいんですけど(笑)。『スター・ウォーズ』なら宇宙船に乗っている気分、『鬼滅の刃』なら「今斬られたな」と、鬼になった気分や無限城に落ちていく感覚を味わえます。でも、苦手な人は酔うかもしれない……。鬼滅の映画は何回も行ったのですが、ほとんど4DXです。友達で、4DXで鬼滅を観るときにHELLO! MOVIE(映画の字幕と音声ガイドをスマホで楽しめる無料アプリ)を併用した強者がいて、「そんなに揺れると思わなかった」と言っていておもしろかったです。

カイト 音声ガイドと併用しているんですが、音声ガイドは「走り出す」とは言うんですけど、どっちに向かって走り出すかは言わないんです。キャラクターが走り出したときに座席がその方向に倒れたり、4DXの種類によっては背中を突かれる機能があって戦闘シーンでいつ拳を出しているのかわかったりします。個人的には音声ガイドの方が好きなので、音声ガイドがない作品や2回目以降で4DXにする感じです。
こずえ だいたいHELLO! MOVIEなんですけど、皆さんの話を聞いて1回観てみたくなりました。
Spotliteでは、過去に「HELLO! MOVIE」を利用した映画鑑賞について記事にしています。以下のリンクからお読みください。
―音声ガイドがついている作品の傾向はあるのでしょうか?
カイト アメリカでは法律がある(※ADA “Americans with Disabilities Act 障害を持つアメリカ人法”で障害のある人の社会参加が保障されている)ので、アメリカ企業であるNetflixのオリジナル作品は必ずついています。日本のテレビ放送ではほとんどないのですが、Netflixで配信されるとそれまでなかった作品に音声ガイドがつけられることもあります。
こずえ 音声ガイドがついていても、テンションが違う……とがっかりするときもたまにあるので、クオリティの差や好みは少なくないです。
―マンガの音声ガイドや点字図書などの作品数はどうなんでしょうか。
カイト 点訳や音訳と同じような形で図書のバリアフリーとして点字や音声にされています。ただ、作品には偏りがあって……。『鬼滅の刃』だと点字はあるんですが、音声は全巻はなくて。多分一番充実しているのは『ゴルゴ13』なんじゃないかな。自分が研究しているのもありますが、マンガの音声化が進むともっと楽しめると思います。
アニメから広がっていく世界

―アニメを観てやってみたことはありますか?
こずえ アニメの主題歌から音楽フェスに参加したり、作品のグッズを集めていたりします。
はるか “『鬼滅の刃』の宴”と名付けた会食を、自宅でやりました。『鬼滅の刃』をイメージした和食を作って、参加者は全身だったりウィッグだけだったりそれぞれコスプレをしました。あとは、旅行のときに何かの作品をオマージュした服装をするなどしています。聖地巡礼もしています。『東京喰種』の痛バ(痛バッグの略。バッグにグッズをたくさんつけて好きなキャラクターや作品への愛を表現する)も持ってましたし、30年前の『セーラームーン』の応募者全員サービスのアクセサリーを今も持っています。コスプレもするのでキャラクターにできる限り近づけたいですし、グッズになっていると、さわることができるので形もよくわかって嬉しいです。
カイト 聖地巡礼は『デュラララ!!』で友達と池袋、『BANANA FISH』で妹とニューヨークに行きました。それからフィギュアは昔少し集めていたんですが、今は場所を確保できないのでやめてしまいました。フィギュアは、さわれば技の動きや武器の形状がわかるので楽しいのですが、店頭の等身大フィギュアだとさわれないのが少し残念です。聴ける・さわれるサポートが増えるともっと楽しめると思います。
最後に
私自身も弱視でありアニメは大好きなのですが、PCで視聴すれば困らない程度の視力なので音声ガイドやHELLO! MOVIEの使用経験はなく、今回お話をお聞きしていて驚くことばかりでした。私の好きなアニメのあのシーンが音声ガイドだとどうなるのか気になります。
視覚障害があるとアニメを楽しむのは難しいのかなと思っていましたが、参加者の皆さんが熱く語っていて安心しました。アニメを一生楽しんでいきたいです。
この執筆を通して、アニメは視覚的な要素が多いものの、それだけではない芸術なのだと気づきました。以前アニメ関連イベントで白杖ユーザーとすれ違ったのですが、それが当たり前のことになっていけば楽しみ方ももっと広がっていくのではないでしょうか。
執筆:雁屋優
取材:aki
アイキャッチ写真撮影:Spotlite
編集協力:株式会社ペリュトン