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視覚障害者の就職支援サポートとは?就業者の多い仕事や就職時のポイントも解説

白杖を持った人と晴眼者二人が談笑しながら歩いている写真。

視覚障害者が就職しようとするとき、就職支援サポートを利用するなどして、自分に合う仕事を見つけやすくすることができます。

この記事では視覚障害者の就職について、雇用状況や就職支援サポートについて解説します。就業者の多い仕事や就職時のポイントも合わせて説明していますので、ぜひ参考にしてください。

視覚障害とは

視覚障害とは、視力や視野に障害があることで日常生活に支障をきたしている状態です。

「視覚障害」と一言に言っても、症状や見え方は人によってさまざま。視覚障害は、主に以下の4つに分けることができます。

  • 視力障害:視力の障害
  • 視野障害:見える範囲の障害
  • 色覚障害:色の判断についての障害
  • 光覚障害:光の強さの判断についての障害

4種類の障害の中には、さらに障害のレベルがあります。視力障害だと、全く視えない(全盲)や、見えるが見にくい(弱視)などです。また、4種類のうちいくつかが重なっている人もいます。

視覚障害者については、以下の記事で詳しく説明していますので、ご覧ください。
参考:視覚障害者とは?法律の定義、人数、見え方、困ることを紹介 | Spotlite(内部リンク)

視覚障害者の雇用状況は?

視覚障害者がPCを使っている手元の写真。

厚生労働省が発表した令和3年度の就職率(ハローワーク経由のもの)は以下のとおりです。

有効求職者数就職件数就職率
視覚障害者8,738人1,297人36.0%
参考:令和3年度 ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況などの取りまとめを公表します | 厚生労働省(外部リンク)

視覚障害者の就職率は36.0%で、前年比0.7%プラスでした。

また、視覚障害者を含めた身体障害者の就職率は35.6%です。昨年よりも0.5%プラスでした。

職業別では、平成30年度のハローワークにおける視覚障害者の就職状況をもとに、社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合が職業別就職状況を発表しています。

職業別就職状況の就職件数と就職率を以下の表にまとめました。

専門的・技術的職業あんま・鍼・灸・マッサージ802件(39.3%)
福祉施設指導専門員(機能訓練指導員等)72件(3.5%)
理学療法士19件(0.9%)
その他82件(4.0%)
事務的職業301件(14.8%)
販売の職業38件(1.9%)
サービスの職業222件(10.9%)
保安の職業26件(1.3%)
農林漁業の職業18件(0.9%)
生産工程の職業63件(3.1%)
輸送・機械運転の職業12件(0.6%)
建設・採掘の職業2件(0.1%)
運搬・清掃等の職業383件(18.8%)
合計2,040件(100.0%)
参考:H30年度ハローワークを通じた職業紹介状況 | 日本視覚障害者団体連合(外部リンク)

最も多い職業はあんま・鍼・灸・マッサージの802件で、次いで運搬・清掃等の職業に就職している人が多い結果となりました。

視覚障害者に就業者の多い仕事の特徴

次に、視覚障害者に向いている仕事の特徴を紹介します。

平成30年度の視覚障害者の職業別雇用率を円グラフにまとめました。

グラフの画像。専門的・技術的職業が47.7%で最も多く、次いで運搬・清掃等の職業が18.8%、事務的職業が14.8%となっている。

最も多くの視覚障害者が就職しているのは、専門的・技術的職業です。また、事務的職業や運搬・清掃等の職業に就職している人も多いことが分かります。

専門性の高い仕事

専門性の高い仕事は、視覚障害者におすすめの仕事の一つです。中でも、あんまや鍼・灸・マッサージに関する仕事は、視覚障害者の多くが従事しています。

あんまマッサージ指圧、鍼(はり)、灸(きゅう)の頭の文字をとった「あはき」という呼び方があります。あはき業は明治時代から盲学校(現在の視覚特別支援学校)などで教えられており、視覚障害者にとっては伝統的な仕事といえます。

あはき業に従事するためには国家資格が必要ですが、専門学校や養成施設に通うことで資格が取得できます。

腰の指圧をしている写真。

Spotliteでは、専門性の高い仕事に従事されている視覚障害者へのインタビュー記事を掲載しています。ぜひ参考にしてください。

参考:「『我が身一つで3人目の人生へ』が私のテーマです」元プロボクサーのマッサージ師 三國文敬さん | Spotlite(内部リンク)

デスクワーク中心の仕事

デスクワーク中心の仕事も、視覚障害者におすすめの仕事です。

近年はさまざまなツールがあるため、視覚障害者もパソコンを使った作業がしやすくなりました。

デスクワーク中心の仕事には、事務職などが挙げられます。画面拡大ソフトや音声を使用して入力したり、エクセルを使った集計や分析も可能です。キーボードの配置を認識することでタイピングもできるようになります。

今後もさまざまなツールの登場によって、視覚障害者がより働きやすい環境になっていくことが考えられます。今後、より多様な職業に就きやすくなることが望まれます。

視覚障害者の就職・転職ポイント

視覚障害者の就職・転職のポイントは3つあります。

  • 専門スキルを身につける
  • 自分に合った仕事を見つける
  • 環境が整っているか確認する

ポイントを事前に抑えておくことで、自分の就きたい仕事に就職できる可能性が高くなるでしょう。

机に向かい合って座り、3人が話し合っている写真。
(写真素材:Unsplash)

Spotliteでは、自分に合った仕事をされている視覚障害者へのインタビュー記事を掲載しています。ぜひ参考にしてください。

参考:視覚障害者、MBAを取得する。ロービジョンのビジネスパーソンが経営大学院で見つけたキャリアと気持ちの変化とは | Spotlite (内部リンク)

「視覚障害者とエンジニアの仕事は相性が良い」。仕事のしやすさと課題を当事者に聞く | Spotlite (内部リンク)

視覚障害者の私が、大手通信キャリアの採用担当者として働いて感じること | Spotlite (内部リンク)

専門スキルを身につける

専門スキルを身につけることで、面接時に自分をアピールできるでしょう。

視覚障害者はほとんどの場合、面接の際に「できることはありますか?」と質問されます。その際に説明できるスキルがないと、企業側が不採用とする場合があります。

資格には、専門学校などで取得できるものもあります。夜間や土日でも学べる学校も増えています。

就きたい仕事がある場合は、仕事に合わせた専門スキルを身につけてから面接することをおすすめします。

自分に合った仕事を見つける

自分に合った仕事を見つけることも、就職する上で重要なポイントです。

視覚障害者の見え方や業務スキルは人それぞれです。視覚障害と一言でいっても、さまざまな状態があります。

まず、自分にできることと難しいことを把握します。そして、面接などで説明できるようにしましょう。条件によってできることが変わる場合は、それも伝えます。

詳しい状況を伝えることで、企業側も採用後の働き方をイメージしやすくなります。採用担当者が視覚障害について詳しくない場合、なんとなく「できない」と思われてしまうことも防げます。

ノートパソコンと白杖を持って立っている人。

環境が整っているか

視覚障害者が働く場合、環境は非常に大切です。視覚障害者が働く環境が整っているか、周囲の理解が得られているかも確認しましょう。

例えば、パソコン作業でも必要なツールが導入できない場合、作業は難しくなります。事前に職場で使用しているメールソフトや社内システムが、視覚障害者用のソフトに対応しているかも確認します。

また通勤についても確認が必要です。人の多い朝夕の通勤ラッシュは、視覚障害者にとって困難が大きい場合があります。勤務時間をずらしたり、他の移動手段が使用できると良いでしょう。

盲導犬を利用している人は、職場に盲導犬と一緒に出勤できるかどうかを確認します。

視覚障害者が活用できる就労支援サービス

視覚障害者が活用できる就職支援サービスがあります。

  • 就労移行支援事業所
  • 地域障害者職業センター
  • 障害者就業・生活支援センター
  • ハローワーク
  • 転職エージェント
  • 障害のある方専門の求人サイト

各就職支援サービスについて、詳しく解説していきます。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、国からの補助を受けて、障害者や難病の人の就職をサポートする就職支援サービスです。全国に3,300カ所以上の就労移行支援事業所があります。

就職前の職業訓練や応募書類の添削、面接対策などから、入社後の相談対応などの職場定着支援が受けられます。

就労移行支援事業所を利用できるのは、一般企業への就職を希望する障害や難病がある人です。

就労移行支援事業所は各自治体の障害福祉課や専門機関で探すことができます。また検索サイトを使用して見つけることも可能です。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、障害者への職業リハビリテーションサービスや事業主への障害者雇用に関する相談対応などを行っているところです。各都道府県に1〜2カ所あります。

障害者本人や障害者雇用を検討している・行っている事業者が利用できます。

地域障害者職業センターでは、職業リハビリテーション計画の方針を決め、本人に合わせた職業訓練を実施。スムーズな就職や就職後の職場への適応についても支援してくれます。

地域障害者職業センターを利用する場合は、最寄りのセンターに問い合わせましょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、ハローワークや地域障害者職業センター、特別支援学校、企業などと連携し、就職面や生活面での支援を実施します。

職業訓練を始め、障害者に合った職務の選定、就職活動の支援、職場定着支援を行います。また、事業所への障害者雇用に関する助言や関係機関との連絡調整などを行うのも、障害者就業・生活支援センターの特徴です。

利用したい場合は、近くの障害者就業・生活支援センターにお問合せください。

ハローワーク

ハローワークでも視覚障害者の就職支援を行っています。一般求人以外にも、障害者雇用枠での求人を紹介してもらえます。

しかし中には、障害者を雇用することで受け取れる助成金を目的に求人を出している企業もあります。そのような企業では、視覚障害者に配慮した社内環境が整備されていなかったり、障害への理解が不十分な場合もあります。

就職活動を行う場合は、企業の受け入れ体制や障害者の雇用実績などを確認しましょう。

視覚障碍者が窓口にパスケースを提示している写真。

転職エージェント

転職エージェントとは、就職者と企業をマッチングさせる転職支援サービスです。

専任のアドバイザーがヒアリングから求人紹介、書類の添削、模擬面接の実施などを行います。年収や勤務条件などの交渉も行ってくれる場合が多いです。また入社後の支援もしてくれます。

障害者向けの転職エージェントには「dodaチャレンジ」(外部リンク)や「atGP」(外部リンク)などが有名です。

障害者枠での応募が中心となるため、基本的に障害者手帳が必要となります。障害者手帳の申請中でも利用可能です。

転職エージェントを利用する場合は、インターネットなどの会員登録を行いましょう。

障害者専門の求人サイト

求人サイトには、障害専門のサイトがあります。数多くの求人が掲載されているので、比較検討しながら自分に合った職場を見つけることができるでしょう。

障害者専門の求人サイトには「BABナビ」(外部リンク)や「ウェブサーナ」(外部リンク)などがあります。

会員登録をすれば求人情報が見られるので、試しに使ってみてから利用し続けるか判断しても良いでしょう。

視覚障害者が気持ちよく仕事をするためのコツ

タブレットを拡大し、オーディオブックを使用している写真。

視覚障害者が気持ちよく仕事をするためのコツは、次のとおりです。

  • 話しかけるときは名乗ってもらうようにする
  • 説明してもらう時は「あれ」「これ」などの指示後を避けてもらう
  • 物の場所を決めてもらう(定位置を作る)
  • 床にものを置かないようにしてもらう

面接時に社内の雰囲気を確認したり、入社前に要望を伝えておくことで働きやすくなるでしょう。

障害者本人の工夫も大切ですが、職場の人に状況を伝えて協力してもらうことも重要です。

最後に

専門性の高い職業やデスクワーク中心の職業に就職している視覚障害者は多くいます。また、視覚障害者が利用できる就職支援サービスもあります。そのようなサービスを利用して、ご自分に合った仕事を見つけてください。

Spotliteでは、視覚障害者の外出時にガイドヘルパーを派遣する障害福祉サービス「同行援護」の事業所を運営しております。利用者、ヘルパーともに、若年層中心の活気ある事業所です。余暇活動を中心に、映画鑑賞やショッピング、スポーツ観戦など、幅広いご依頼に対応しています。お気軽にお問い合わせください。
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この記事を書いたライター

Spotlite編集部

Spotlite編集部は、編集長で歩行訓練士の高橋を中心に、視覚障害当事者、同行援護従業者、障害福祉やマイノリティの分野に精通しているライター・編集者などが協力して運営しています。

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