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「おでかけくん」導入で、同行援護の事務負担を大幅に軽減できました【NPO法人松本視覚障害者福祉協議会さま】

ヘルパーと視覚障害者が、待ち合わせをしている様子。ヘルパーはスマートフォンを持ち、視覚障害者は左手でOKサインを出している。

NPO法人松本視覚障害者福祉協議会が運営する訪問サービス事業所「ふらっと」では、視覚障害者の同行援護を行っています。

同行援護サービスの提供において大きな負担を感じていたのは、事務作業の煩雑さです。そこで、株式会社mitsukiが開発した同行援護DXシステム「おでかけくん」を導入し、事務作業の負担を大幅に軽減することができました。

今回は、おでかけくんの導入までの課題や経緯、導入して良かった点、今後の展望などを伺いました。

「おでかけくん」とは?以下のリンクより概要をご確認いただけます。

お話をうかがった事業所

NPO法人松本視覚障害者福祉協議会 訪問サービス事業所「ふらっと」

  • 代表 前野弘美さん
  • サービス提供責任者 石田さち子さん
ワイシャツにネクタイ姿の前野さんと、サーモンピンクのブラウスを着た石田さん。
写真左が前野さん、写真右が石田さん(写真提供:ふらっと)

高齢化とコロナ禍の影響で、ヘルパー不足に

ー松本視覚障害者福祉協議会とはどんな団体ですか?

前野さん 松本視覚障害者福祉協議会は、令和3年10月にNPO法人として立ち上げ、長野県の松本で視覚障害者の同行援護サービスを提供しています。現在、ヘルパーは6名在籍しています。

もともと別の社会福祉法人長野県視覚障害者福祉協会が視覚障害者の外出支援を行なっていたのですが、支援者の高齢化で現場から人が少なくなってしまっていました。そこに新型コロナウイルスの流行が重なってしまい、ヘルパー不足に拍車がかかっていたため、新たにNPO法人を立ち上げ、同行援護を事業化しました。

ーお二人のプロフィールを教えてください。

前野さん 私自身も視覚障害者です。もともと強度近視、先天性の緑内障があり、大学卒業後に就職して5年くらい経った頃に、視力が低下し始めて網脈絡膜萎縮という病気が発覚しました。

この病気は個人差があって、あっという間に視力を失う人もいれば、そうでない人もいます。医師に相談しても「視力がどうなるかはわからない」と言われてしまいました。どうしたらいいか困りましたが、少しでも目が見えるうちに手に職を持とうと思って盲学校に入学しました。盲学校を卒業後、社会福祉法人長野県視覚障害者福祉協会に入って長年視覚障害に関わり、NPO立ち上げに至りました。

石田さん 私は、一般企業勤務を経て福祉業界に入り、最初は知的障害の方を支援する仕事に携わっていました。仕事にはとてもやりがいを感じていて、良いタイミングで前野さんに「視覚障害者の同行援護を一緒にやりませんか?」と声をかけてもらい、視覚障害者の支援に携わり始めました。現在は、NPO法人松本視覚障害者福祉協議会のサービス提供責任者を務めています。

事務負担の軽減とミスを減らすことが急務

机の上に、ボールペンやカラーペン、ホチキスなどの文房具と、事務処理手続きのための紙が数枚、無造作に散らばって置かれている。紙に、ボールペンで必要事項を記入している男性の手が映っている。

ーおでかけくんを導入する前は、どのような課題がありましたか?

石田さん 以前は「どの利用者さんが何時から何時まで利用したか」「どのヘルパーがどんな支援をしたのか」といった実績を、全て手入力していました。ヘルパーが事務所に戻ってきてから実績を入力し、毎日1時間から1時間半程度かかってしまっていました。

ミスの発生も課題でした。利用者さんごとの実績を表にしてまとめ、それぞれ支給されている時間の残量を算出していました。手作業なので、時間を超過していることに気づかないような事態も生じてしまっていました。

少人数で運営しているので、現場の支援を優先し、事務は後回しになりがちでした。結局、事務にしわ寄せがきて月末は請求の処理で大変になることが多かったです。

前野さん 転記する作業が大変だと聞いていました。手入力だとどうしてもミスが出てしまいます。請求業務で誤りがあると、場合によっては返戻が発生してしまうこともあり、事務の負担は大きいと感じていました。

ーおでかけくんを知ったきっかけは何でしたか?

前野さん 視覚障害関連のメーリングリストで「同行援護にかかる事務を手作業でやっていて大変なので、良い方法を知りませんか?」と投げかけたところ、いくつか回答をいただきました。そのうちのひとりがみつきの高橋さんで、おでかけくんのことを知ったのです。

高橋さんから話を聞くと、請求ソフトの「介舟ファミリー」と連携することによって請求事務まで行えること、利用者さんごとのデータを蓄積できて見たい順序に並べ替えられることを教えていただきました。スマホを使って、個々が入力して、請求業務まで連携できるのはおでかけくんだけでした。

「導入すれば事務作業が大きく変わる」と思い、おでかけくんの導入を進めました。

ヘルパー業務後、スマホですぐ記録できるのが良い

スマートフォンで「おでかけくん」を操作する男性の手。背景には白杖を持つ別の男性の右腕が映っている。

ー導入はどのように進めましたか?

前野さん まずは2024年9月から10月にテストを行いました。テスト期間中は、それまでのやり方と並行させ、問題がないことを確認した上で11月から本稼働させました。12月には「介舟ファミリー」とのCSV連携も始めて、順調に運用できています。

石田さん 導入開始の時点では、課題もありました。ただ、その点を高橋さんに相談すると、「他の事業所からも同じような話が出たので改良します」と、すぐに対応してくれました。

前野さん 導入を始めるにあたって、準備には多少の時間は必要でした。しかし、一度動き出してしまえば、従業員も慣れて操作もスムーズにできるようになりましたね。

ーヘルパーさんや利用者さんからの反応はいかがでしたか?

石田さん ヘルパーさんからは「同行援護が終わった後ですぐにスマホで入力できるのが簡単でいい」と好評です。入力などの操作もすぐに慣れてスムーズにできていましたし、業務効率を大幅に高めることができました。

利用者さんには、まだおでかけくんは利用してもらっていません。70代、80代の方も多く、スマホを使っている方自体が少ないことが理由です。今後、スマホを使っている利用者さんには、おでかけくんの利用をすすめてみてもいいかもしれません。

おでかけくんをさらに活用し、潜在的なニーズに応えたい

緑が生い茂る路上で、横に並んで歩く3人の笑顔の男性たち。真ん中の男性は右手に白杖を持ち、左手で左隣の男性の腕を借りて歩いている。

ー実際に導入してみて良かった点を教えてください。

石田さん 利用者さんごとの支給時間の残量が一目でわかることです。特に、月末によく利用する方に対して、すぐに残り時間を伝えられるのが便利だと感じています。

また、引き継ぎ事項を入力できるのも良かったです。その日の通院の内容や支援を通して気づいたことなどを詳しく書いてくれるヘルパーさんもいて、より良い支援につなげやすくなりました。

また、事業所全体として勤務時間が減ったのも良かったです。計画を立てたり、日々の支援をまとめたりする作業を後回しにしがちだったのですが、おでかけくんのおかげで業務効率化することができ、事務にかける時間が減りました。

前野さん 私は、スマホでおでかけくんにアクセスすれば、いつでも情報がわかる点が便利だと感じています。紙の場合は、情報がわからないことがあります。

ー今後、どのような取り組みをしていきたいですか?

前野さん 同行援護のヘルパーさんや利用者さんの数を増やしていきたいです。数が増えれば増えるほど、おでかけくんの便利さを感じる機会は増えていくでしょう。潜在的に、外出支援が必要な方はまだまだいると思うので、同行援護サービスを届けていきたいですね。

石田さん 今は通院や買い物など生活で外せない外出への支援がメインですが、楽しみのための外出も支援していきたいと思っています。

土日などの休日は、稼働できるヘルパーが減るのでなかなか依頼を受けられないのですが、ヘルパーの数が増えれば、余暇支援にも取り組めるのではないかと思っています。同行援護をもっと気軽に利用できて、事業所の名前のように「ふらっと」出かけられるようになるといいなと思います。

ー最後に導入を考えている事業者の方にメッセージをお願いします。

石田さん ITが苦手という方もいらっしゃるかもしれませんが、おでかけくんはスマホでとても簡単にできるのでおすすめです。私は、管理者としてパソコンで作業することも多く、そちらも便利です。それぞれのITスキルに応じて、使い分けるといいと思います。

前野さん おでかけくんは、何と言っても同行援護サービスに特化しているのが特徴です。意見を聞いてもらうこともできるので、心配するより、まず導入してみるといいと思います。介舟ファミリーと連携すると、事務の簡略化がより進みます。

同行援護サービスを行っている事業所は、どこも事務に対する負担を感じていると思います。おでかけくんの導入で、日々の集計や記録、請求事務までスムーズに流れる仕組みになり、より良い支援や未来の計画に時間を使えるようにできると思います。

「おでかけくん」の導入メリットは以下のリンクからもお読みいただけます。

おでかけくんのプレスリリースは以下のリンクから。
株式会社mitsuki、視覚障害者の外出を支援する「同行援護」のDXを推進する支援システム「おでかけくん」をリリース。|PR TIMES(外部リンク)

記事内写真撮影:Spotllite(注釈のあるものを除く)

この記事を書いたライター

Spotlite編集部

Spotlite編集部は、編集長で歩行訓練士の高橋を中心に、視覚障害当事者、同行援護従業者、障害福祉やマイノリティの分野に精通しているライター・編集者などが協力して運営しています。

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