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施設・サービス

ロービジョン当事者が自然体で働ける癒しの空間 ~LORANS. 原宿店~

黒い看板にロービジョンのスタッフがカラフルなペンで文字を書いている画像
記事内写真撮影:Spotlite

ソーシャルフラワー&スムージーショップ「LORANS. 原宿店」(以下、ローランズ)

ガラス張りの店内には、色とりどりの花を販売するフラワーショップにカフェスペースが併設されています。

そんなオシャレなローランズは、就労継続支援A型の事業所として様々な障害のあるスタッフが働いています。
執行役員の幸正咲織(こうしょうさおり)さんとロービジョンのスタッフ2名へのインタビュー、さらに店内の様々な工夫をお伝えします。

ローランズの入り口。ガラス張りの建物の周りにカラフルな植物が置かれている。
色とりどりの植物に囲まれたオシャレな外観

ローランズとは

私たちは、社会的役割を基盤としたお花屋さん(social flower shop)です。都内に店舗を置き、フラワーギフトやブライダル装花の制作、法人向けでは定期装花や観葉植物のイベントレンタル、植栽の管理等を行っています。
花や緑を通じて障がいや難病等と向き合う人々を積極的に雇用し、共に成長し、様々な企業・団体様と連携することで多様な人材が認め合い活躍できる社会を目指しています。

ローランズHPより引用

今回お伺いしたローランズ原宿店では、カフェとフラワーショップの他、3階ではブライダル事業やアトリエの運営を行っています。

天王州にも店舗があり、合わせて障害者45名を含む60名のスタッフが働いています。

カフェの店内でフルーツのスムージーをアップで撮影した画像。
美味しいスムージーをいただきました

カフェスペース

取材の合間に、スムージーをいただきました。果物のフレッシュな味と香りが満点で、素材の味を感じることができました。

オープンサンドやスープ、デザートなどメニューも豊富なので、ランチ時の利用にも良さそうです。

ハロウィンが近い時期に取材したため、店内はかぼちゃの置物などで装飾されていました。

カフェの机の上にビーカーに入った植物とかぼちゃが置かれている画像
季節を感じるレイアウトでした

ロゴ入りのオシャレなマスクケースも用意されていました。

スムージーの隣のマスクケースの中にマスクを入れている画像。
細かなところまで嬉しい配慮がありました

フラワーショップ

色とりどりのきれいなお花だけでなく、カフェスペースの観葉植物や展示物も、一部購入することができます。

フラワーショップでカラフルな花が展示されている画像。
フラワーショップはカフェスペースに併設されています

ロービジョンスタッフの働き方

ローランズ原宿店には、ロービジョンのスタッフが2名働いています。店内の様々な工夫や仕事のやりがいをお伺いしました。

ロービジョンスタッフ2名がインタビューに答えている画像。
お二人から毎日楽しく働いていることが伝わってきました

店内の配慮

目の負担を軽減するため、レジのタブレットにはブルーライトカットのフィルムを貼っています。

レジに設置されたタブレットを操作している画像。
ブルーライトカットフィルムを貼ったタブレット

スタッフ用のレシピ表は、文字の大きさやコントラストを調整して、見やすい構成にしています。

必要な情報のみ簡潔にまとめられたレシピ表の画像
スタッフ用のレシピ表

室内がまぶしいことを伝えると、ライトの向きを変えて見えやすい明るさに改善されたそうです。

天井に設置されたライトと植物がデザインされたアクリル板を撮影した画像。
ライトの向きはスタッフの見やすさに合わせて変更できる

看板の制作

中心視野があるスタッフが、立て看板にメニューを書いています。

「看板を書く仕事は、プロしかできないと諦めていましたが、ここで実現できました。黒い看板に鮮やかな色で書けば私も見えます。この仕事は見えている限り続けたいです。悩むこともありますが、ポジティブに働けています」とお話してくれました。

ロービジョンのスタッフが黒い黒板にカラフルなペンで文字を書いている画像。
誰にとっても見えやすい配色です

ロービジョンのスタッフにローランズが働きやすい理由をお聞きすると、
「今まで一人で行う仕事に就いており、チームワークを気にしていませんでしたが、ここでは皆さんフレンドリーで、丁寧にコミュニケーションをしてくれます。人によって障害が違うことを理解し、どうやって受け入れていこうかを前向きに考えていこうという精神を感じているからです」と教えてくれました。

今、仕事で悩みを抱えている視覚障害者に対しては、
「どうしてもできないことはあるということを受け入れて、人に頼ることが大切だと思います。なかなか人に任せずらくて、自分でできるようになりたいと思う気持ちは分かりますが、私はローランズで働いて『人を頼っていいんだ』ということを強く感じました。この仕事でなくてもいいので、自分のできることは必ずあります。できないとあきらめるより、できることを探してみてほしいです」とメッセージをいただきました。

完成した看板の横でロービジョンのスタッフが笑顔でピースをしている画像。
イラストも入ったおしゃれな看板の完成です

インタビュー

執行役員の幸正咲織さんに、障害者と一緒に働く運営スタッフの立場からお話をお聞きしました。

執行役員のこうしょうさんがインタビューに答えている画像。
執行役員 幸正咲織さん

ーローランズの特色を教えて下さい。
原宿という立地にあるガラス張りのお店なので、『障害者が働いている場所』というイメージとは少し違うのではないでしょうか。障害者が集まって淡々と作業するのではなく、オープンに明るく仕事ができることを意識しています。


ーたしかに、皆さん楽しそうにお仕事をされている姿が印象的でした。

障害のあるスタッフが接客した時、お客様とのやり取りがスムーズにいかないこともあります。しかし、障害者が働いていることは全面に出していません。ゆったりとしたコミュニケーションになることもありますが、みんなが同じ場所で働いています。お客さんには「食事が美味しいから」「お花がきれいだから」という理由で来てもらえるお店でありたいです。


ー障害者と健常者が一緒に働くことに対して、何か意識していることはありますか?
自分も含めてみんな完全な人間ではなく、普通とは違う何かを持っています。障害者は、その違いにたまたま病名がついたり、生きづらさがあるというだけです。1人の人間として受け入れた上で、視覚障害者の見えにくさを補ったり、聴覚障害者にはアプリで文字化したり筆談で話したり、自然に接客できるような工夫ができるように心がけています。

こうしょうさんにスポットライトのスタッフがインタビューしている画像。
緑に囲まれ、心が落ち着く空間です

ースタッフを採用する方法や基準があれば教えて下さい。
採用は、基本的にハローワーク経由で行います。就職希望者には見学会を行い、面接や実習を経て採用します。採用する基準は、『障害と向き合う姿勢があるかどうか』です。自分にはできることがあるという方を採用しています。最初はできなくても、工夫次第でできるようになると考えているからです。今は、高卒から50代後半まで幅広い年代のスタッフが働いています。


ーこれからの展望はありますか?
事業を広げて、障害者を100人雇用することが目標です。カフェ以外にも障害者が働ける場所を増やしたいです。具体的には、カーテンの端材で何かを作ったり、お花を再生して名刺を作ったりする業務を考えています。当社の名刺もカーネーションの再生紙を使用しています。障害者の就労が、地球環境につながるようになればさらに理想的だと思います。

ロフト席にスポットライトの下田が座っている画像。
幸正さんオススメの階段を上がったロフト席

最後に

就労継続支援A型の事業所として運営されているローランズ原宿店は、一言で言えば「オシャレなカフェ」でした。

こういう場所が増えれば、障害者の就労への意欲が高まると同時に、周囲のイメージも大きく変わるのではないでしょうか。

皆様、東京へお越しの際は、ぜひローランズ原宿店にお立ち寄りください。

お問い合わせ

ローランズ原宿店(外部リンク)

住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷3丁目54−15 ベルズ原宿ビル1F

営業時間:11:30 – 19:00 (L.O. 18:30)

アクセス:JR山手線原宿駅から徒歩5分

電話:03-6434-0607

この記事を書いたライター

高橋昌希

1991年香川県生まれ。広島大学教育学部卒業後、国立障害者リハビリテーションセンター学院修了。視覚障害者のための福祉施設での勤務を経て、ガイドヘルパーの仕事を行う。教員免許(小学校・特別支援学校)を保有。歩行訓練士。Spotlite発起人。

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1991年香川県生まれ。広島大学教育学部卒業後、国立障害者リハビリテーションセンター学院修了。視覚障害者のための福祉施設での勤務を経て、ガイドヘルパーの仕事を行う。教員免許(小学校・特別支援学校)を保有。歩行訓練士。Spotlite発起人。

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