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聞いてみた・やってみた

視覚障害者が同行援護と音声ガイドアプリ「HELLO! MOVIE」を利用し、映画『インサイド・ヘッド2』を観に行ってみた

同行援護を利用して、映画館へ映画鑑賞に行くことができるのをご存知でしょうか?

今回、同行援護事業所みつきの利用者さんとヘルパーが、同行援護を利用して映画館に行きました。ディズニー&ピクサーの最新映画『インサイド・ヘッド2』を、アプリ「HELLO! MOVIE」を利用して鑑賞しました。

協力:
エヴィクサー株式会社(外部リンク)
ハロームービー株式会社(外部リンク)

※同行援護事業所みつきは、当メディアSpotliteの運営会社である株式会社mitsukiが運営しています。

TOHO CiNEMAS日比谷のロビー。天井が高く大きな窓もあるエントランス。

同行援護を利用し、映画鑑賞へ

TOHOシネマズ日比谷にやってきました。
今回映画を鑑賞する視覚障害者とヘルパーは2組です。

1組目の利用者Kさんとヘルパーの星野綾子さんは、早めに到着してロビーで腹ごしらえ。待ち合わせをして電車に乗り、途中でパンを購入してきたそうです。

友達同士のように話すお2人に、「もとからお友達なんですか?」と尋ねると、「今日はじめて会いました!」とKさん。来るまでの道中を隣で歩きながら、すっかり意気投合したようです。

2組目の利用者Rさんは、みつきが誇るアイドルヘルパーの野口さんの同行でここまで来ました。

利用者のおふたりは、どちらも全盲の大学生です。今日の映画鑑賞を楽しみにしていたと教えてくれました。

映画『インサイド・ヘッド2』のポスター画像。
以下、ポスター内文字。どんな感情も、あなたの宝物になる。ディズニー&ピクサー映画最新作!インサイドヘッド2。誰にでも<感情の嵐>は訪れる。8月1日(木)劇場公開。
引用元:大ヒット公開中のディズニー&ピクサー最新作『インサイド・ヘッド2』バリアフリー上映を全国の劇場にて8月8日 (木) より開始(外部リンク)

今日はディズニー&ピクサーの最新作『インサイド・ヘッド2』を観に来ました。2015年に公開され、大人気の『インサイド・ヘッド』の続編で、注目されている作品です。

今回、HELLO! MOVIEアプリでは、はじめてディズニー作品の音声ガイドに対応したそうです。エヴィクサー株式会社の坂元さんによると、対応が実現するまでに長い道のりがあったとのこと。

坂元さん「『HELLO! MOVIEがディズニー映画に対応してほしい』というお声はよくいただいていました。ただ、洋画と邦画では、また違った取り扱いがあり難しかったのです。今回『インサイド・ヘッド2』でようやく実現することができたので、ぜひ多くの方に楽しんでいただきたいです」

映画館でハロームービーを設定しているスマートフォンの画面の様子。

HELLO! MOVIEアプリとは?

HELLO! MOVIEアプリは、スマートフォンで映画の音声ガイド、 スマートグラスで映画の字幕を楽しめる無料のアプリです。
対象上映作品をアプリ内で確認することができます。
HELLO! MOVIE 紹介サイト (外部リンク)
HELLO! MOVIE アプリ公式サイト(外部リンク)

「HELLO! MOVIE」の最新対応作品や、アプリの情報は以下の公式Xからもご確認いただけます。
HELLO! MOVIE公式X:https://x.com/HELLOMOVIE_JP(外部リンク)

ダウンロードは以下のリンクから

「HELLO! MOVIE」は、映画の音とアプリが同期し、音声ガイドが流れます。そのため、映画館内がWi-Fi環境外でも使用可能です。
お出かけ前に観る作品が決まっている場合は、アプリと作品の音声データのダウンロードまで済ませておけば、通信環境がなくても鑑賞可能です。

Spotliteでは、過去にも以下の記事で「HELLO! MOVIE」を紹介しています。

視覚障害者は、どのように映画を観ている?

視覚障害者は、見え方や好みに応じて、さまざまな方法で映画を鑑賞することができます。

音声ガイドでは、映画のシーンや状況などの視覚的な情報を言葉で伝えます。「夜、歩道橋を歩く男性の後ろ姿」「女性が銃を突きつけられている」など、セリフや効果音だけでは分からない状況が説明されます。説明はセリフの合間に入るので、会話なども聞き取ることが可能です。

音声ガイドは、専門の制作会社がつくります。近年は、音声ガイド制作時に映画監督の監修が入ることも増え、より作品のメッセージが伝わりやすい音声ガイドが制作されるようになってきているそうです。

また、視覚障害者だけでなく、映画をより深く知るために音声ガイドを利用する晴眼者も増えています。

Spotliteでは、以下の記事で視覚障害者の映画鑑賞について紹介しています。

思った以上に「ちょうどいい」音声ガイド

視覚障害者のお二人は、手持ちのスマートフォンとイヤフォンを用いて、「HELLO! MOVIE」の音声ガイドを聞きながら『インサイド・ヘッド2』の鑑賞を楽しむことができました。

鑑賞後、感想を聞いてみました。

ー「HELLO! MOVIE」を利用して映画鑑賞してみた感想を教えてください。

Kさん 視覚情報なしで作品を観ていて、自分の中で噛み砕いて理解しようとしていると、どうしてもストーリーに遅れてしまうことがあると思います。

そういった場合に、音声ガイドを使っていないと、見える人よりも取り戻すのが大変なんです。どのようにシーンが切り替わったのかわからないので……。特に、ディズニー作品などでは回想シーンも多いです。また『インサイド・ヘッド2』は、主人公ライリーの頭の中にいる「ヨロコビ」「カナシミ」「シンパイ」といった感情がキャラクターとなっていて、ライリーが過ごす現実の生活のシーンと、頭の中の「ヨロコビ」たちのシーンが入れ替わっていきます。

音声ガイドを使うと、とても話についていきやすいと感じます。考えていて遅れることがあっても、取り戻すきっかけがいろいろな場所にあって、音声ガイドの意義を感じました。

Rさん 私は幼い頃から、音声ガイドをあまり使ってきませんでした。映画を観るときには、周りの親や友達から説明を受けたり、効果音やBGMを参考にして鑑賞してきました。他の音声ガイドを使ったこともありましたが、情報量が多いと感じてあえて使ってこなかったのです。

ただ、今回「HELLO! MOVIE」を使って映画鑑賞してみて、私が思っていた以上にちょうどいいタイミングで、想像しやすいガイドをしてくれていました。

動きや表情を、ズレもなく適度に伝えてくれて、音声ガイドなしで観るよりも想像がつきやすかったですね。これからも「HELLO! MOVIE」を使って映画鑑賞をしたいと思いました。

3人の人が、椅子に座って話している様子の手元の写真。

ー抽象的に感じる表現もあるかもしれませんが、その点で音声ガイドはどうでしたか?

Kさん 自分の中で想像が膨らむような表現が多かった印象です。

確かに全てを理解できたかと言われたら、見える人と同じように100%理解するのは難しいです。

それでも、視覚障害者が理解しにくい、「光」や「星」などに関して、簡潔で想像しやすい言葉が選ばれていると感じられて、とても聞きやすかったです。

印象的だったのは、冒頭に出るディズニーやピクサーのロゴのガイドです。簡潔で繊細な表現のされ方で、星がどういう動きをしているかなどの想像を膨らませやすかったです。

ー音声ガイドの表現について、ほかに印象に残っているところはありますか?

Kさん テレビドラマなどでは、音声ガイドで「悲しそう」など「〜そう」という、視覚情報に解釈を加えたナレーションが入る時があります。

私たちが想像する上では重要な表現になると思うのですが、登場人物の表情や動きを客観的に、目に入った情報のみ伝える音声ガイドの方が、よりいいなと思います。視覚的な情報からの解釈は、利用者自身ができる方が楽しめると感じるからです。

今回の「HELLO! MOVIE」の音声ガイドで印象に残っているのは、「眉間に皺を寄せる」というものです。それだけでは感情はわからないというか、そこから先の感情や様子の分析、そのキャラクターがその後どういう行動を取るのか……。それは利用者が自らが解釈できます。これは「見える人の感覚と近いのかな」と思いました。解釈を加えずに、視覚的な情報のみをダイレクトに伝えてもらうことが、私たちが映画を楽しむときには重要になってくるのではと思いました。

ー映画鑑賞に関して、普段感じていることを教えてください。

Kさん エンタメ情報へのアクセスがまず難しいですね……。晴眼者の場合は、目に入った情報で「これいいな」と選べると思いますが、私たちはそもそもエンタメ情報に触れる機会が少ないのです。

映画では、予告編だけを観てもどういう映画なのかがわからないことも多いです。探してみれば、音声ガイドに対応している映画は増えてきていると思うのですが、まず最初にエンタメ情報に触れられる場面が広がっていくと嬉しいです。

「これが観たい」と思う作品をそのまま観られる社会へ

映画館の客席のイメージ写真。暗い大きな室内に赤い客席が並び、たくさんの人が座っている。
(写真素材:Unsplash)

ハロームービー株式会社の渡部さんは、大学で映画を専攻し、映画制作の活動をしてきた方です。

渡部さん「私自身、映画が大好きなので、視覚障害の有無に関わらず、誰もがおもしろい映画を観てほしいと思っています。

まだ音声ガイドが対応していない作品も多く、視覚障害者のみなさんは『対応している作品から選ぶ』という状況になってしまっています。理想は、みなさんが全ての作品のなかで『これが観たい』と思う作品をそのまま観られることだと思います。どんどん対応作品を増やしていきたいですし、『HELLO! MOVIE』をもっと知ってもらい、使っていただきたいです」

今回、「HELLO! MOVIE」を利用した映画『インサイド・ヘッド2』鑑賞では、利用者のおふたりが映画を楽しんだ様子が伝わってきました。5年の時間をかけて、音声ガイド対応を実現してくださったエヴィクサー株式会社、ハロームービー株式会社のみなさん、ありがとうございました!

今後の同行援護の利用について、Rさんはスポーツ観戦、Kさんは美術館や博物館に行ってみたいとのこと。「HELLO! MOVIE」を利用した映画鑑賞、その他のいろいろな活動で、同行援護を活用して楽しんでいただきたいです。

ハロームービー株式会社公式noteでも、今回の様子が記事になっています。
HELLO! MOVIE「インサイド・ヘッド2」対応記念!映画座談会|ハロームービー株式会社(外部リンク)

記事内写真撮影:Spotlite(注釈のあるものを除く)
※アイキャッチ写真はイメージです。今回の実際の参加者とヘルパーではありません。

Spotliteでは、視覚障害者の外出時にガイドヘルパーを派遣する障害福祉サービス「同行援護」の事業所を運営しております。利用者、ヘルパーともに、若年層中心の活気ある事業所です。余暇活動を中心に、映画鑑賞やショッピング、スポーツ観戦など、幅広いご依頼に対応しています。お気軽にお問い合わせください。

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