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聞いてみた・やってみた

「視覚障害者がホラー映画を見たら…?」音声ガイドを活用した映画鑑賞のお出かけに密着

映画館で音声ガイドの準備をする2人
記事内写真撮影:Spotlite

こんにちは。Spotlite運営メンバーの植松です。

今回の記事では、映画の音声ガイドアプリの「HELLO! MOVIE(ハロームービー)」を使って2人の登場人物が共に映画館で鑑賞する様子をレポートします。

1人目は、「HELLO! MOVIE」アプリを開発しているエヴィクサー株式会社 研究開発部の坂元 風楽(さかもと ふうが)さんです。坂元さんは、実際に音声ガイドを映画の音に同期させる仕事に携わっていらっしゃいます。

2人目は、Spotlite運営メンバーで視覚障害者当事者の三輪 瞭(みわ りょう)です。見え方は、網膜色素変性症の影響で視野が狭く、視力が右目が0、左目が0.1です。普段鑑賞する際は、視野におさまるように目を動かしながら鑑賞をしています。これまで映画館で音声ガイドを使用して映画を観たことがなく、初めての体験でした。

2人の出会いのきっかけは、Spotliteを運営している株式会社mitsukiが行う同行援護従事者養成研修(視覚障害者の外出を支援するガイドの育成)にエヴィクサー株式会社から複数の方にご参加いただいたことでした。

初めて音声ガイドを知る方も、既に利用している方も、一緒にお出かけしている気持ちでご覧いただけたら嬉しいです。
本題に入る前に、まずはHELLO! MOVIEアプリについてご紹介します。

HELLO! MOVIEアプリとは

HELLO! MOVIEのロゴ

HELLO! MOVIEアプリはスマホで映画の音声ガイドやスマートグラスで映画の字幕を楽しめる無料のアプリです。
対象上映作品をアプリ内で確認することができます。
HELLO! MOVIE 紹介サイト (外部リンク)
HELLO! MOVIE アプリ公式サイト(外部リンク)

ダウンロード

アプリダウンロードリンク(iphone)
アプリダウンロードリンク(Android)

「HELLO! MOVIE」は、映画の音とアプリが同期し、音声ガイドが流れます。そのため、映画館内がWi-Fi環境外でも使用可能です。
既にお出かけ前に作品が決まっている場合は、アプリと観たい作品の音声データのダウンロードまで済ませておくと通信環境がなくても大丈夫です。

事前準備 イヤホンの動作確認

アプリ内でイヤホンの動作確認ができます。万が一動作が確認できない場合は、ご自身で他のイヤホンを準備しておく必要があります。
なお映画館内では他のお客様へ鑑賞の影響がないように常時強い光を発するイヤホンのご利用はお控えください。

待ち合わせから鑑賞までの流れ

待ち合わせ場所の2人
待ち合わせ場所の2人

まずは観たい映画を探すところから一日が始まります。

数あるHELLO! MOVIEアプリ内の対象映画の中から1つ1つ吟味していきます。
「視覚障害者が怖い作品を見たらどう見えるのだろう」
「言葉が少ない作品を音声ガイドを聞きながら見てみたら面白そう」
と会話が盛り上がり、
「CUBE 一度入ったら、最後」(シチュエーションホラー/サスペンス/サイコスリラージャンル)を観ることに決まりました。

HELLO!MOVIEアプリ内で映画を探す2人
HELLO! MOVIEアプリ内で映画を探す2人

【映画館へ】チケットを買おう

券売機に向かう2人の後ろ姿
券売機に向かう2人の後ろ姿

訪れた映画館は、川崎駅直結の「109シネマズ川崎」です。
今回の取材にご協力をいただきました。

上映1時間以上前に到着したため、フロアが空いていて並ばずに券売機に着きました。

【券売機】チケット発券の流れ

自動券売機で画面を操作する坂元さん
自動券売機で画面を操作する坂元さん
  1. 画面の案内に従って作品、上映時間、座席を選択
  2. チケットの種類を選ぶ
    障害者手帳での割引対象チケットを購入される方は種類を選択する
    (介助者も割引を受けられます。)
  3. 決済方法を選択し、チケットとレシート発券
  4. 入場開始アナウンス時間まで待機
    (上映時間の約15分から10分前が目安です。)

映画館に行き慣れていない方は、上映前後は館内が混み合うので早めの到着が安心かもしれません。なお多くの映画館がインターネットで事前のチケット購入が可能です。

【入場】スクリーンへ

15分前に入場開始アナウンスが流れました。
受付でチケットと障害者手帳を提示します。

入場の際に障害者手帳を提示する三輪くん
入場の際に障害者手帳を提示する三輪くん

【着席】HELLO! MOVIEアプリのスタンバイ

  1. スマートフォンとイヤホンの接続 
    (機内モードでの利用が推奨されています)
  2. HELLO! MOVIEアプリ立ち上げる
  3. 上映映画一覧の項目で対象作品を選ぶ
  4. (事前にダウンロードしていない場合)音声データのダウンロード
    ※劇場内は電波が弱いケースがありますので劇場入る前の電波の良いところでダウンロードしてください
  5. 待機画面が表示されたら、そのまま上映まで待機
  6. いざ、映画鑑賞!
    ※三輪くんの場合、1分程度で音声ガイドの準備を終えていました。
まずはスマートフォンとイヤホンの接続から始めます
まずはスマートフォンとイヤホンの接続から始めます 
アプリを立ち上げて上映作品の音声データをダウンロードしています
アプリを立ち上げて上映作品の音声データをダウンロードしています
この待機画面が出たら、上映までそのままで
「音声ガイド待機中」の画面が出たら、上映までそのままで

ここまで、映画館でHELLO! MOVIEを使う一連の流れをご紹介いたしました。
この後は、私の視点で2人の一日の様子をレポートします。

2人の一日に密着

鑑賞前に談笑する様子
鑑賞前に談笑する様子

一日を通して、お互いの普段の鑑賞方法や映画についての話題が多く挙がっていました。坂元さんは、日頃から映画のお仕事に携っているので映画の話題が豊富です。映画館に入ってからも、ちょうど次回作の映画紹介が音声で流れており、三輪くんが興味を持った作品の背景を坂元さんが紹介していました。

チケット購入後、今回観る映画についても坂元さんは予備知識があったため、三輪くんに提案がありました。
「これから観る作品はサバイバルな環境に置かれる話です。
そんなことを想像すると、お腹が空いている状況だとまずいですね(笑)」

実は、2人は映画鑑賞前に腹ごしらえの時間を過ごしていました。
その時間で映画以外の話題でも盛り上がっていたことが、更に交流を深める機会になっていたように思います。
お昼ご飯の場所を探しながら、お互いにラーメン好きであることが分かったり、ゲームセンターの近くを通った時にゲームの思い出を語り合っていました。
坂元さんは音楽ゲーム(音ゲー)が得意なことや三輪くんもギターが趣味なので音の話題も共通点になっていたように感じました。

以上のように鑑賞前にじわじわと2人の距離も映画の時間も近づいていたように思います。

感想共有で深まる映画体験

映画館を後にする2人
鑑賞直後から感想共有が始まっていました

鑑賞直後に三輪くんは、
「ホラーという作品の性質(無音で状況が変化したり、会話が少ない)もあり、
音声ガイドがなかったら、ストーリーがわからなかったかもしれないです。」

「坂元さんが鑑賞前に教えてくれた作品の背景を聞いていたからこそストーリーが理解できたところもあり、助かりました。」

そして、結末に近い部分の分からないままだったシーンを坂元さんに質問して、謎解きができて喜んでいる姿もありました。

引き続き映画の感想を共有するべく、2人は喫茶店に向かっていきました。

【喫茶店】音声ガイドでの鑑賞を振り返って

喫茶店内でメニューを選ぶ様子
喫茶店のメニューを見て盛り上がる2人

面白かったなあ。映画の音声、音声ガイド、自分の視覚の3点で楽しめたから分かりやすかったんですよね。

坂元さん

私も音声ガイドを聞きながら鑑賞していました。色の演出の変化が想像できるように伝えられていて良かったです。

そうそう。目をつぶってもイメージができて分かりやすかったです。何かが落ちた時に音声ガイドで、「あれがポトっと落ちたんだー」ということも分かりました。

三輪くん
坂元さん

実は私もそのシーンは音声ガイドで分かったんですよ。暗くてよく見えていなかったので、音声ガイドで気付くこともありますね。

それは凄い!見えている人も気づかないシーンが伝わるんですね。

三輪くん
坂元さん

そうなんですよ。目で見ているよりも深いところまで分かるのが凄いですよね。人物の何気ない動作をあえて音声ガイドでも伝えているところは、監督さんの意図や目的があるのだろうと思って観ていました。

全部、大事な情報になるんですね。伏線も音声ガイドに表現されていることが分かりました。いやー、音声ガイドのおかげで感想を話しやすいです。このように、CUBEが音声ガイドで理解できれば、他の映画もイメージできるような気がしています。

三輪くん
坂元さん

男性俳優5人の声の聞き分けは、難しくなかったですか?

音声ガイドがなかったら、誰の声か分からなかったなあ。出演者同士で何かしているんだろうということが分からない時があって、音声ガイドのおかげで具体的に誰と誰が何をしていたか理解できました。

三輪くん
坂元さん

そうだったのですね。
話は変わりますが、今の仕事をするようになってから事前に作品を深くリサーチしちゃうんですよね。原作のカナダ版『CUBE』からの改変もたくさんありました。日本版だと色の演出やカメラワークの違いも感じました。

へぇー。こんな風に坂元さんの解説や予備知識を聞けることが面白いです。音声ガイドの他に、副音声的に出演者や監督が裏話を語るオーディオコメンタリーも面白そうですね。次は、坂元コメンタリーを聞きながら映画を観たいです(笑)

三輪くん
坂元さん

酷評しちゃうからだめですよ~(笑)
余談なんですが、映画館だと自分以外の人も視界に入るので、隣に座っている女性が怖い時に耳を押さえていて、そういう反応をする方もいるんだと面白かったです。

(話に夢中になり、三輪くんがケーキの上の季節の飾りの紙を食べそうになる)

坂元さん

三輪さん、紙!

(紙に気付いて、口に入れる前に止める)

おおっ、坂元さんさすが音ゲーで鍛えた瞬発力の成果ですね。防いでくれてありがとうございます(笑)

三輪くん
坂元さん

(笑)

これまで映画を観る時は自宅などで友達に副音声的に解説してもらっていたけど、大変そうでした。今日、1人で観ていたらここまで分からなかったと思います。映画全体のストーリーや2人の視点を重ねた答え合わせを楽しめて、坂元さんと理解を深められたことが嬉しいです。

三輪くん
別れ際、駅前で名残惜しく解散する2人
別れ際、駅前で名残惜しく解散する2人

ここまでが当日のレポートです。
後日、三輪くんに改めて聞いた音声ガイド初体験の感想を紹介します。

音声ガイド初体験の三輪くんに聞く

映画鑑賞当日、チケットを掲げる笑顔の2人
映画鑑賞当日、チケットを掲げる笑顔の2人

これまで一緒に映画を観ても相手が言っている感想が分からない時がありました。今回の映画も音声ガイドがなかったら、答え合わせを楽しめるまでいきつかなかったかもしれません。

今回体験したことで音声ガイドが情報格差を埋めてくれたようにも感じました。もし音声ガイドを聞いて分からない部分があったとしても、一緒に出かけた坂元さんのおかげで新たな視点が混ざったり、予備知識まで聞けて更に理解が深まりました。
音声ガイドがあったからこそ、映画を観た後に2人で感想を重ねあえる共通体験の面白さも感じられました。

これまで映画館に行く機会が少なかったのですが、月に1回映画を観に行こうと思っています。

編集後記

映画鑑賞当日おでかけを楽しむ2人
映画鑑賞当日おでかけを楽しむ2人

私は、三輪くんの感想を聞いて、2つの可能性を感じました。

1つ目は、音声ガイドが懸け橋となり、外出先や鑑賞方法に新しい選択肢が増えることです。

私の周りでは、視覚障害者が外出したいのに受け入れ先にハードルがある話をよく耳にします。例えば定期的にジムに通いたいけどスタッフが足りなくて気軽に通うことを断られてしまうケースです。
しかし映画鑑賞では、私の視覚障害者の友人で音声ガイドを使って単独で鑑賞をしている方もいます。
「音声ガイドのおかげで公開初日に映画館で映画を観ることができます。ネットやテレビの配信まで待たずとも、話題性があるうちに楽しめることが嬉しいです」という声もお聞きしています。

また今回坂元さん自身も音声ガイドでの鑑賞を楽しまれていました。現在音声ガイドは視覚障害者だけでなく、映画のコアなファンが楽しめるようなオーディオコメンタリーガイドや訪日外国人向けの多言語ガイドなど広く発展しています。新たな技術が人と人の様々な懸け橋になる可能性を感じ、未来が楽しみになりました。

2つ目は、誰かと体験を共有できれば、新しいつながりが生まれる可能性があるということです。

これまで映画を観た後、相手の感想がよく分からないことがあった三輪くんが、喫茶店で1時間以上、映画の話題を話し込んでいました。
今回は音声ガイドを活用することで、お互いに作品について語り合うことができ、お互いのことも分かり合っていたように思います。

実は今回、私も一緒に映画を観ていました。その後、仕事で三輪くんに映画の中のシチュエーションに例えて説明するのに絶好のタイミングがありました。
映画の重要な部分なので、詳しくは書けないのですが、
分かりやすく伝えることができて喜びが湧きました。
その出来事を通し、共通体験はその後の日常で関係性をつなげてくれるなと実感しました。

今回機会をいただいたエヴィクサー株式会社の皆様には、改めてインタビューさせていただく予定です。今回は音声ガイドがメインでしたが、他にも音の技術を活かして様々なチャレンジをされていらっしゃいます。
公開を楽しみにお待ちください。

この記事を書いたライター

植松那波

1989年千葉県生まれ。大学での経験から、年齢や肩書きに捉われず人と人が対等に関わる場に関心を持つ。 10年近く視覚障害者とともに企業等のダイバーシティ推進に携わり、ブラインドサッカーやゴールボールのチームでも活動経験がある。

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植松那波

1989年千葉県生まれ。大学での経験から、年齢や肩書きに捉われず人と人が対等に関わる場に関心を持つ。 10年近く視覚障害者とともに企業等のダイバーシティ推進に携わり、ブラインドサッカーやゴールボールのチームでも活動経験がある。

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