ブラインドサッカー体験授業でみえた子どもたちのまなざしの変化 ~前編~

アイマスクをしてブラインドサッカーのボールをける子どもと横で見守るチームスタッフの画像。
アイキャッチ写真提供:松戸市立南部小学校



初めまして、植松那波(うえまつななみ)と申します。私はこれまで10年近く視覚障害者と共に働き、約2年間、ブラインドサッカーのチームでも活動していました。

様々な視覚障害者と関わってきた経験を活かして、情報を発信していきたいと思います。

今回は、友人が担任を務める松戸市立南部小学校の3年生が総合学習で初めてブラインドサッカーの体験授業を取り入れると聞き、足を運びました。

いきさつ

2学期のテーマが「福祉」ということで、既に授業でアイマスクをして白杖体験や介助体験の他に点字、手話、盲導犬などを調べて発表したり、パラリンピックの歴史についても学びを深めてきたそうです。

今回、担任の先生からは「パラスポーツを通じて、新しい視点や当事者と関わることで更に学びを深めてもらいたい」という想いを伺っていました。

皆さんは総合学習と聞くとどんなイメージをお持ちでしょうか。あんまりピンとこない方も多いかもしれません。
私自身も総合学習での授業のことをはっきりと覚えていないので、改めてどんな単元なのか調べてみました。

「総合学習(正式には総合的な学習の時間)とは探究的な見方・考え方を働かせ横断的・総合的な学習を行うことを通して、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を育成すること」

そんな狙いがあったのですね。

「自己の生き方を考えていく」というキーワードはとても大事なことだと思うので、この視点も持ちながら授業の様子をレポートしていきます。

体験授業レポート

昨年、同市内で活動をしているブラインドサッカーチーム「ファンタス千葉SSC 松戸ウォーリアーズ」の4名の皆さんが小学校を訪れました。

下記の全体のプログラムの流れの中から印象的な様子を写真とともにお届けします。

プログラムの流れ

  • チームの紹介
  • 言葉で相手に伝えるゲーム
  • ブラインドサッカーの声かけや歩行の体験、パス練習
  • ミニゲーム
  • ブラインドサッカー選手の実際のプレー デモンストレーション
  • 選手に質問コーナー

チーム紹介

千葉県松戸市と四街道市を中心に練習している千葉県で唯一のブラインドサッカーチームです。

「サッカーを楽しむ、楽しんでもらうこと」をモットーに活動しており、大会の出場だけでなく、地域のイベントや学校等での体験会での普及活動も行っています。

松戸ウォーリアーズのメンバーが横に並んで立っている画像。
チームメンバーの集合写真(写真提供:松戸市立南部小学校)

写真左から、私、ガイドの藤倉遥さん(クルトン、晴眼者)、フィールドプレイヤーの佐々木康裕さん(ヤス、視覚障害者)、フィールドプレイヤーの渡邉彰文さん(アキ、晴眼者)、監督の瀧澤大作さん(タッキー、晴眼者)です。

言葉で相手に伝えるゲーム

アイマスクをした状態でフラフープの中に入って座っている子どもたちの画像
言葉で情報を伝えるゲーム(写真撮影:植松那波)

まず初めに、言葉で相手に伝えることを体感するゲームから始まりました。
子どもたちは2人組になり、片方がアイマスクをして、アイマスクをしている相手に言葉で写真に写っている情報を伝えていきます。

写真が替わっていく毎に、写っているものの数が増え、一言で言い表すことが難しくなっていきました。それに合わせて、子供達の説明の言葉数や発言量も増えていき、一生懸命相手に伝える声で体育館は活気に包まれていきました。

ホワイトボードに写真を貼って、視覚障害者の選手に子どもたちが写真の説明をしている画像。
写真の風景を言葉で伝える子どもたち(写真撮影:植松那波)

次に、ヤスさん(視覚障害者)が登場し、ホワイトボードに貼られた風景を目の見えない人に伝えるお題に変わりました。
先ほどの勢いでみんなで一斉に「海」と答えながらも、徐々に「海というよりビーチ」というように微妙な表現の違いにこだわりはじめ、それぞれの感じ方の違いも出てきました。

次の表現を聞いて、どんな風景が浮かんだかイメージしてみてください。

「砂浜の上にある丘から水平線を眺め空と海の青が綺麗に混ざり合っててきれい」

これは私がこの写真を言葉にした表現です。きっとそれぞれ違う言葉やイメージになったのではないでしょうか。
同じ風景でも見た人によって表現が違うのが面白いし、それぞれが素敵ですよね。

以前、視覚障害者の友人と洋服の買い物を行った時に同じ青でも何種類もあって、空模様の変化で表現しながら伝えたことがありました。
先ほどまでの伝えるものがはっきりしている場面だけではないことをこのお題で子供達も感じ始めたようで、頭をひねりながら言葉を出しているように感じられました。

さて次のお題に移ってみましょう。

傘をさして水の上に浮かぶ板に座っている女の子の画像。
傘をさしてしゃがむ女の子(写真提供:松戸ウォーリアーズ)

このお題は、実際にタッキーさんが体験した出来事のシーンを写真におさめたものでした。
この写真でも子どもたちからは「海」という声が多く挙がりましたが、
先ほどの風景とは全く違っていて、女の子が傘を差して座っていることやいくつかの情報が混在しているため、はっきりと伝えられない様子も伝わってきました。
それでもどう伝えようかと立ち上がって写真を前のめりに一生懸命観察して、伝えるために必死になっていました。

静かになってきたところで、タッキーさんが写真の解説をしてくれました。
この写真は、タッキーさんが同じチームの女の子(視覚障害者)に目の前の海を言葉で伝える難しさを感じた時の出来事であることを話してくれました。
写真に写る女の子は海を感じるためにそばで耳を澄ませていて、その様子を見てタッキーさんは言葉では伝えきれないこともあり、人それぞれ五感を使って感じ方もいろいろあるという発見があったことを伝えてくれました。

この話を聞いて、子どもたちは少し難しく感じているようにも見受けられましたが、それぞれの表現の違いや感じ方の違いを大切にすることは視覚障害者と接する時に限らず、様々な人とコミュニケーションを取る際に大事な点なので、一つの体験として頭を悩ませたことは大事な時間となっていたように思います。

ブラインドサッカーの声かけや歩行の体験、パス練習

ここからは実際に身体を動かして、ブラインドサッカーの練習でもよく行われる動きに移りました。
コーンとコーンを10mほど話して、片方から声を出し、反対側のコーンからアイマスクをしている人が声の元に歩いて向かうことから始まりました。
体育館は声が反響しやすいので、私からは向かい側の人の声の判別が難しい状況でしたが、
子どもたちは同じクラスで共に過ごしている仲間の声をすぐに聞き分けていて驚きました。

次にブラインドサッカーのボールを使って、歩行練習と同じ流れでパス練習をしていきました。先ほどと違って音を聞くことができても、そこにぴったりボールを蹴ることは難しいことをだんだん感じてきたようで、蹴った後にアイマスクを外して軌道を確かめたり、真っ直ぐ蹴れたときに喜んでいる様子も見られました。

スタッフがブラインドサッカーのボールを頭上に持ち、音を鳴らしている様子。
ボールの音を聞かせるタッキー(写真提供:松戸市立南部小学校)

ミニゲーム

2カ所で赤チーム、白チームの2つに分かれ、ミニゲームを行いました。
4つのコーンで10m×15m程のコートを作り、ゴールを左右に2カ所作って、各チーム3人ずつコートに入ります。

スピードが出ると危ないので、ボールを洗濯網に入れて転がるスピードを遅くしたり、シュートではなくボールを運ぶと点数が入るルールなど、短い時間でもブラインドサッカーの要素を味わえるように子供達に合わせたカスタマイズバージョンで行われました。

またコーンの中に入らないメンバーはコーンの外から味方に声をかけてボールの位置を伝えられる仕組みで、全員参加で4回ほど実戦しました。

アイマスクをつけた子ども同士が体育館でミニゲームをしている様子
アイマスクをつけて行ったミニゲーム(写真撮影:植松那波)

先ほどの歩行練習と違って音や声が前方からだけでなく360度聞こえてくるので、ゆっくりしたスピードでボールを探しながら、近くにいる人にぶつからないように一生懸命声を出している様子が見られました。

点数が入った後に自分がいる位置に驚いていたり、相手にぶつからないように声をちゃんと出さなきゃと気づいて、その後にコーンの外での役割の際に一生懸命声を出している様子も見受けられました。

デモンストレーション

ゲームの後、17年程フィールドプレイヤーとして活躍しているヤスさんのプレイを中心にチームのみなさんで技を見せてくれました。
写真は実際によく練習でも行う八の字ドリブル(15m程離れてクルトンとタッキーが立ち、その人の声を目印にして八の字を描きながらドリブルをする)のシーンです。

子どもたちは先に自らチャレンジしてパスやボールを見つける難しさも味わったからこそ、
目の前でボールが足元から離れずにカーブしてドリブルする様子を見てとても驚いていました。
だんだん盛り上がってきた声がヤスにも届いたのか徐々にスピードも上がって、終始子どもたちのワクワクした表情が見られました。

選手のヤスさんがアイマスクをしてブラインドサッカーのドリブルを披露している様子。
ドリブルを実演するヤスさん(写真撮影:植松那波)

選手に質問コーナー

授業の最後の質問コーナーでは、事前に気になっていたことを書いた紙を元にたくさんの質問が挙がっていました。選手のヤスさんがチームを代表して質問に答えました。一部を紹介します。

質問「ブラインドサッカーを始めたきっかけはなんですか?」
ヤス「小学校の頃に目が見えなくなる前にサッカーをやっていて好きで、大人になって目が全く見えない人でもできるサッカーがあるという話を聞いてやりたいと思ったから」

質問「ブラインドサッカーをやっていてよかったことはなんですか?」
ヤス「サッカーが好きな人が集まって色んな人と知り合えたり、世界大会にでたいなあと思っていた夢が叶って海外で試合ができたこと」

質問「どうやって字を書いていますか」
ヤス「点字で勉強しました。皆さん点字を知っていますか?」
子どもたち 「はい」
ヤス「今はパソコンを喋らせて音声ソフトで文字を聞いたり書いています」

質問「ご飯はどうやって食べていますか?」
ヤス「見えない人は大変といえば大変。慣れてしまえば大丈夫。見えている人といるときは言葉で今日みたいに伝えてもらっていて、例えば時計の針に見立てて「何時の方向にご飯がありますよ」という風に伝えてもらうこともあります。場所がスムーズに伝わることもあるので参考にしてください」

質問「移動する時はどうしているんですか?」
ヤス「白杖を持って一人で仕事にも行くし、サッカーにも行きます。白杖を持っていると周りの人が見えない人って分かるし、段差や電柱で先に杖が当たって把握しています」

以上で質問は終わりです。

女の子が選手のヤスさんに質問をしている画像。
ヤスさんに質問する女の子(写真撮影:植松那波)

最後に

最後の挨拶が終わった後に印象的な出来事がありました。
体育館を後にする子どもたちがチームのメンバーに手を降ってくれていたのですが、
一人の子が「あっ、分かんないよね」とすぐにぽろっと気づいたことを口に出してくれました。
この瞬間全体に「ハッ」とした間が生まれ、
元気の良い「バイバーイ」という声が重なり響き渡っていきました。

この瞬間は、子どもたち自ら手を振るだけだと伝わらない人がいると気づいた場面であり、
この場にいる全員にわかるように自然に声でも伝えるという行動に変えていった姿に周りの大人もハッとさせられた時間でもありました。
体験授業を通して当事者と関わり、伝えることにも向き合ったことで、
いつの間にか誰から言われるでもなく自ら考えて、行動を変化させていった子どもたちの姿に「生き方を考えていく」という総合学習の大切さも感じられた瞬間でした。

この記事では体験授業にて私から見えた子どもの様子が中心でしたが、次の授業にもお邪魔させていただき、直接感想を伺いました。
後日公開予定の後編でご紹介しますので、お楽しみに。

ABOUTこの記事をかいた人

植松那波

1989年千葉県生まれ。大学での経験から、年齢や肩書きに捉われず人と人が対等に関わる場に関心を持つ。 10年近く視覚障害者とともに企業等のダイバーシティ推進に携わり、ブラインドサッカーやゴールボールのチームでも活動経験がある。