背景を選択

文字サイズ

ストーリー

「ブラインドゴルフや劇団四季の舞台へ…」大学生のガイドヘルパーが出会った新しい世界

緑色の木々を背景に、白いブラウス姿で笑顔で立っているガイドヘルパーのあだっちゃん。

同行援護事業所みつきには、大学生のガイドヘルパーも多く在籍しています。今回は、大学3年生(取材当時)のあだっちゃんに、ガイドヘルパーになったきっかけや働き方、印象に残っている同行について話を聞きました。

「こわい」から「もっと知りたい」へ

─ ガイドヘルパーの資格を取ったきっかけを教えてください。

あだっちゃん 大学1年生のときに、バリアフリーサークルに入ったのがきっかけです。当時サークルの代表を務めていた先輩には視覚障害があり、もともとみつきの代表・高橋さんと交流があったそうなんです。そのご縁から、大学で同行援護従業者養成研修を実施してもらえることになり、サークル仲間と参加して資格をとりました。

車いすの体験をしている、マスク姿のあだっちゃん。目元から満面の笑みが伝わる。
サークル活動で車いす体験をしている「あだっちゃん」。(写真提供:あだっちゃん)

─ 将来的に、視覚障害に関係した職業に就きたいという思いがあったのでしょうか。

あだっちゃん 当時は「視覚障害の人を支援したい!」と強く思っていたわけではなく、「せっかくの機会だから」「今後のためにも何か資格を持っておこう」と参加を決めました。

私は特別支援学校の教員になりたくて、大学で学んでいます。特別支援学校の教員を目指したきっかけはいくつもありますが、ひとつは子どもの頃の思い出です。

音楽教室に通っていた小学2年生のとき、ダウン症の男性とダンスをする機会がありました。正直、私は最初「こわい」と感じてしまったのですが、練習を重ねるうちに仲良くなっていったんです。振り返ると、漠然と感じていた「こわさ」は、「知らない」から感じた不安だったんですよね。

この経験から、障害がある人のことをもっと知りたくて、高校生になってから放課後等デイサービスでボランティアを始めました。子どもたちと関わりながら「もっと理解のある人が増えてほしい」と思うようになり、地域や医療、関係機関とも繋がれる特別支援学校の教員を目指すようになったのです。

新しい世界を広げてくれるガイドヘルパーの仕事

─ 印象に残っている仕事はありますか?

あだっちゃん ブラインドゴルフに同行したことですね。私はガイドヘルパーとして、クラブの向きを伝えたり、ボールが飛んだ方向を知らせたりしました。

私はゴルフの経験がなく、ルールどころかゴルフクラブの種類すらほとんど知らなかったのですが、利用者さんが「あだっちゃん、パターの角度を伝えるのがうまいね」などと褒めてくださり、すごく楽しめました。それから頻繁にブラインドゴルフに同行するようになり、打ちっぱなしだけではなく、コースも回りました。

ゴルフカップのクローズアップ写真。青々とした芝生の上、白いゴルフボールがカップのふちギリギリにあり、カップにはフラッグのポール部分が刺さっている。
(写真素材:Unsplash)

─ 「ゴルフの経験がないから」と依頼を見送ってしまう人も多そうですが、挑戦されたんですね。

あだっちゃん 私も少し不安はありましたが、「せっかくの依頼だし!」と勇気を出して挑戦したんです。結果として、利用者さんやそのお仲間が親切に教えてくださったので、チャレンジしてよかったと思いました。この機会がなかったら、私がゴルフに関わることはなかった気がします。

─ ガイドヘルパーだからこそできた新しい経験だったのですね。

あだっちゃん そうですね。

ひとつ年下の女性と、静岡まで劇団四季の『キャッツ』を観に行ったのも、すごく印象に残っています。私は田舎の出身で、大学生になるまで新幹線に乗ったことがほとんどなかったんです。そのせいか今では新幹線が大好きで、「仕事で新幹線に乗れるなんて!」とルンルンしちゃいました(笑)。

劇団四季の舞台も、この機会がなければ自分では観にいくことはなかったと思うんです。私にとってガイドヘルパーの仕事や利用者さんとの出会いは、新しい世界を広げてくれるものです。

「自分には向いていない」と思っている人でも、必要としている人がいる

─ 現在、どんな働き方をしていますか?

あだっちゃん 大学の講義や教育実習、他のアルバイトの合間に、週に1回ほど働いています。新規のご依頼というより、顔馴染みになった方の同行が多いですね。小学生の利用者さんの通学をサポートすることもあります。

階段を上る視覚障害者とガイドヘルパーの足元。

─ さまざまな同行援護事業所があると思いますが、みつきで働いてみていかがですか?

あだっちゃん 運営スタッフとの距離が近く、何かあればすぐに相談できるので助かっています。

また、みつきは定期的に交流会を開催して、利用者さんとヘルパーが交流できる場を提供してくれます。そこで利用者さんたちと顔見知りになっておくと、その後、依頼を受けるハードルがグッと下がるのです。新人ヘルパーでも安心して働ける環境が整っていると感じますね。

私は、ガイドヘルパーの人数が増えてほしいと考えています。静かにお出かけを楽しみたい方もいれば、おしゃべりを楽しみたい方もいて、利用者さんによって求めるヘルパー像がさまざまだからです。

「自分には向いていない」と思っている人でも、絶対必要としている人がいるので、少しでも興味がある人にはぜひチャレンジしてみてほしいです。

記事内写真撮影:Spotlite(※注釈のあるものを除く)
取材・執筆:白石果林

この記事を書いたライター

Spotlite編集部

Spotlite編集部は、編集長で歩行訓練士の高橋を中心に、視覚障害当事者、同行援護従業者、障害福祉やマイノリティの分野に精通しているライター・編集者などが協力して運営しています。

他のおすすめ記事

この記事を書いたライター

この記事を書いたライター

Spotlite編集部

Spotlite編集部は、編集長で歩行訓練士の高橋を中心に、視覚障害当事者、同行援護従業者、障害福祉やマイノリティの分野に精通しているライター・編集者などが協力して運営しています。

他のおすすめ記事