背景を選択

  • 黒
  • 白

文字サイズ

  • 小
  • 中
  • 大

編集部から

視覚障害者が、もっと自由にスポーツを選べるように【代表コラム】

ブランインドスポーツエキスポ2026で、左手でマイクを持ち、参加者の前に立つ高橋さん。高橋さんと参加者が右手のこぶしをあげて「おー!」と声を出している。

2026年9月5日土曜日、「ブラインドスポーツエキスポ2026」を開催しました。

体育館に約10の競技・団体に集まっていただき、いろいろなブラインドスポーツを一度に体験できるイベントです。ありがたいことにたくさんの方に来ていただき、無事に終えることができました。

当日の様子は後日Spotliteで詳しい記事が出る予定なので、今回はイベントレポートではなく、ブラインドスポーツについて最近私が考えていることを書いてみます。

ブラインドスポーツを観戦する楽しさ

私が、視覚障害者のスポーツに関わるようになったのは、今から10年ほど前です。

専門学校時代、視覚障害者の三國さんからマラソンの伴走を頼まれたものの、うまくサポートできませんでした。それをきっかけに周りの人に声をかけたり、他のパラスポーツにも本格的に関わったりするようになり、その後、現在の事業にもつながっていきました。

スポーツは私にとって今の仕事の原点のひとつでもあります。

先日、久しぶりに日本ゴールボール選手権大会の男子予選を観に行きました。

会場には、10年前に僕が一緒にゴールボールをしていたメンバーがいました。当時一緒に練習していた人たちが、今では日本のトップレベルでプレーしています。

ゴールボール試合中の写真。3人の選手がゴール前で低い姿勢で飛び、ゴールを守っている様子。
2025年の日本ゴールボール選手権大会の様子(写真撮影:遠藤光太)

単純にかっこいいなと思いましたし、久しぶりに観たゴールボールはやっぱり面白かったです。

一方で、観客席を見ると応援している人はあまり多くありませんでした。

もちろん大会によって違うと思います。ただ、これだけ面白いのに、まだ知られていないのが現実です。家族や知人だけではなく、もっと多くの方に、スポーツ観戦として楽しんでもらいたいと思いました。

競技を続けたい視覚障害者をサポートするには

試合を観ながら、もうひとつ考えていたことがあります。今トップで活躍している選手たちも、当然、最初からトップ選手だったわけではありません。

私が知っているゴールボール選手の中には、中学生や高校生の頃、学校が終わってから一人で遠い体育館まで通って練習していた選手がたくさんいます。

ブラインドサッカーの選手から、こんな話を聞いたことがあります。

視覚障害のある選手たちだけで公園に集まって練習していたとき、蹴ったボールを見失ってしまうことがあります。視覚障害者だけでボールを探していて、気がついたら2時間くらい経っていて、その日はほとんど練習できなかったそうです。

彼らは笑って話していましたが、晴眼者ではあり得ないエピソードです。

「日本ブラインドラグビー」と書かれた黄色いラグビーボールを右手に持ち、左手を前に出しながら説明している人と、その前に立ち話を聞いている人。

パラスポーツでは、日本代表の強化指定選手などになると、競技によっては遠征や競技活動への支援を受けられるようになります。しかし、そこにたどり着くまでにはかなりの道のりがあります。

競技をやってみて、面白いから続ける。大会に出てみて、もっと強くなりたいと思う。そうすると、練習場所、移動、練習相手、サポートしてくれる人、遠征費など、いろいろなものが必要になります。

せっかく本人が「本格的にやりたい」と思ったのに、競技とは別の理由で続けられなくなるのはもったいないと感じます。

将来の日本代表を目指して公園で自主練をしようと思ったのに、2時間ボールを探していたのでは、肝心の競技力は向上しません。今ではパラスポーツを取り巻く環境が改善されているとはいえ、トップ選手への支援だけではなく、その途上にいる人たちをどう支えるかをもっと考えていく必要がありそうです。

何をどれだけやるか「選べる」ことが大切

一方で、全員がトップ選手を目指す必要もありません。私たち晴眼者がスポーツをするときも、全員がプロを目指しているわけではありません。友達とフットサルをしたり、週末にランニングしたり、健康のためにジムへ行く。日本代表を目指してもいいし、週に1回身体を動かすだけでもいいはずです。

ただ、そのためにはまず、何をするかを「選べる」ことが大切です。

視覚障害があると、どんなスポーツができるのかという情報だけでなく、どこでできるのか、どうやって会場まで行くのか、晴眼者のサポートが必要なのか、といったことも考える必要があります。

私たちだったら、バスケをやってみて合わなければ、サッカーをやってもいいし、テニスでもランニングでも、時間と場所さえあればすぐに取り組めます。

視覚障害があっても、それくらい普通に「次は何をやってみようかな」と選べたらいいと思っています。

複数のブラインドスポーツを「選べる」体験

ブラインドスポーツエキスポ2026会場全体を上からとらえた写真。広い体育館内でそれぞれのスポーツのブースで体験している人たちがいる。

今回のブラインドスポーツエキスポで、約10の競技・団体に集まってもらったのもそのためです。

ひとつの競技を勧めたいわけではなく、いろいろ体験して、「こんなスポーツもあるんだ」「こっちの方が自分には合うかも」と思ってもらいたいと考えました。

そして、参加者だけではなく、競技団体同士にももっとつながってほしいと思っています。

それぞれの団体が競技人口を増やしたいと思うのは当然です。しかし、限られた選手を取り合うのではなく、そこは少し広い心で、色々な競技に取り組める選択肢を提示していくのが大切だと考えます。

競技団体側も、「この人なら、うちの競技よりこっちの競技の方が合うかもしれない」と紹介しあってもいいと思います。それぞれの競技だけで考えるのではなく、まずブラインドスポーツに関わる人そのものが増えていくことで裾野が広がります。

その方が、結果的にそれぞれの競技にとってもいいはずです。

ブラインドスポーツエキスポ2026で用意した「スタンプラリー」のカード。10のブースのキーワードとスタンプ欄がある。
多くのブースを楽しく回ってもらえるように、スタンプラリーも実施しました。

スポーツを「見る・する・支える」。それぞれの立場で関わる

ちなみに、ここまで長々とスポーツについて書いていますが、僕自身は社会人になってからほとんどスポーツをしていません(笑)。

学生時代はバスケットボールやハンドボールをしていましたが、基本的にしんどいことが嫌いです。ゴルフすらやろうと思えないほどのサボりたがりです。スポーツは見るだけで十分だと思っています。ただ、最近はなぜかジムに行って、トレーニングすることにハマっています(笑)。

以前、インタビューをした山梨学院大学の上田元監督から、スポーツには「する・見る・支える」という関わり方があるという話を伺いました。僕はこの考え方にとても共感しています。競技をする人だけではなく、試合を観る人、応援する人、選手を支える人、大会を手伝う人もスポーツに関わっています。

ブラインドスポーツも同じだと思います。やってみたい人には、いろいろな競技から選べる環境がある。もっと本格的にやりたい人には、続けられる環境がある。

自分ではやらないけれど観たい、応援したい、支えたいという人にも、関わるきっかけがある。

僕自身、10年前はスポーツを「する」側にいましたが、今は完全に「見る・支える」側です。それでもこうして10年以上、スポーツと関わり続けています。

今回のブラインドスポーツエキスポをきっかけに、いちからスポーツを始める人、別の競技を知る人、試合を観に行ってみようと思う人など、それぞれに響くスポーツとの関わり方が見つかっていれば嬉しいです。

そして、本気でやってみたいと思った人がいたら、思い切り競技を続けられる環境もつくっていきたいなと思います。

私自身は、しばらく「見る・支える」と、ジムでの筋トレくらいで頑張ります(笑)。

ブラインドスポーツエキスポ2026当日の、みつき運営スタッフの集合写真。全員が笑顔。

記事内写真撮影:Spolite
編集協力:株式会社ペリュトン

この記事を書いたライター

高橋昌希

1991年香川県生まれ。広島大学教育学部卒業後、国立障害者リハビリテーションセンター学院修了。視覚障害者のための福祉施設での勤務を経て、ガイドヘルパーの仕事を行う。教員免許(小学校・特別支援学校)を保有。歩行訓練士。Spotlite発起人。

他のおすすめ記事

この記事を書いたライター

この記事を書いたライター

高橋昌希

1991年香川県生まれ。広島大学教育学部卒業後、国立障害者リハビリテーションセンター学院修了。視覚障害者のための福祉施設での勤務を経て、ガイドヘルパーの仕事を行う。教員免許(小学校・特別支援学校)を保有。歩行訓練士。Spotlite発起人。

他のおすすめ記事