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編集部から

「今の若者は……」最近出会った20代の人たちのこと【代表コラム】

男性二人と女性一人が住宅街を並んで歩いている後姿、夕日が沈む方向に向かっ話しながら歩いている。

最近、若い世代と関わる機会が続いています。今回は私の周りの「今の若者」について書きたいと思います。

「何度も大学を辞めようと思った」視覚障害者の大学3年生

ひとりは、地方の国立大学に通う3年生の学生です。網膜色素変性症で視野が狭く、小中は普通校、高校から視覚支援学校へ進みました。

そこで出会った先生がとても優しく、親身に向き合ってくれたことがきっかけで、「自分もこんな先生になりたい」と思い、教育学部の特別支援教員になるコースへ進学したそうです。

ただ、大学生活は決して順風満帆ではありませんでした。

授業にも、友人関係にもなかなか馴染めず、不登校気味になります。白杖を持っているだけで「それ何?」と聞かれる環境の中で、孤独を感じることが多かったそうです。それでも彼は、大学を辞めませんでした。

「何度も辞めようと思ったけど、それだけは譲れないと思って耐えてきた」という彼の言葉に、心の強さを感じました。

私自身、彼と境遇は全く異なりますが、教育学部の特別支援教員になるコースを卒業しながら、教員としてのキャリアを1度も歩んでいないため、人ごととは思えず、自分のことのように応援したくなりました。

彼は、大学病院の視能訓練士からの紹介で、春休み期間を使い、東京で生活訓練を受けました。ランチに行ったとき、「何か手伝えそうなことはありますか?」と聞くと、「同じような大学生の視覚障害者とのつながりがほしい」と話してくれました。

それなら……と思い、東京にいる間に小さな集まりを企画しました。

5〜6人でワイワイ話すだけのシンプルな場でしたが、彼は楽しそうに話す1人の大学生に戻っていました。さらに、視覚障害のある子どもへのオンライン学習支援のアルバイトも決まり、喜んでいました。

地方に戻ってからも、彼のペースで無理なく前に進んでほしいなと思います。何かあればまた頼ってくれたら嬉しいです。視覚支援学校の教員として活躍する日が来るのを心待ちにしています。

人通りが多くにぎやかな大通り。人が行き交う交差点で横断歩道を白杖の人とガイドヘルパーがわたっている。

「未熟児で生まれ育った当事者として」公認心理師を志す大学生

もうひとりは、未熟児に関するイベントで出会った大学4年生の男性です。「イベントに、視覚障害者が参加するため、学生ボランティアに誘導法を教えてほしい」という依頼から関わることになりました。

会社としての協力はもちろん、個人的にも、昨年次女が未熟児で生まれたことから「支援する側」だけではなく「保護者」という立場でイベントに参加しました。

そこで出会った彼は、妊娠24週486グラムで生まれたそうです。

それでも今は成人を迎え、大学生活を送っています。そして、自分と同じような立場の人たちの力になりたいと話してくれました。

「未熟児で生まれて育った当事者の発信は少ないですし、特に父親へのケアも足りていないと感じています。だから、公認心理師を目指して大学院に進学します」という彼の言葉に、保護者として大変勇気をいただきました。

私や娘にできることがあれば、研究の被験者でも何でも協力しますと伝えました。彼とは、これから一緒に何か発信ができないか模索していきたいと思っています。

3人の人が、椅子に座って話している様子の手元の写真。

働きながら夜間学校で資格取得を目指す女性

そして、来月からみつきに入社してくれる24歳の女性もいます。ホームページやこの代表コラムを見て、「いろいろなことをやっていて楽しそう」と思ってくれたそうです。

異業種からの転職ですが、大学時代は福祉のゼミを専攻しており、さらに来年からは「親の病気を治せるようになりたい」という思いで、鍼灸師の資格取得を目指して夜間学校にも通う予定だそうです。

みつきには、鍼灸師の資格を持つ仲間が多くいます。彼女の人生が前に進むような、意味のあるつながりが生まれたらいいなと思っています。

20代の頃、30代はおじさんだと思っていた

私は気づけば、来月で35歳になります。四捨五入するとアラフォーです。

大学生の頃、30歳を過ぎた男性は立派なおじさんだと思っていました。社会人1〜2年目の頃、10歳上の先輩はすごく大人に見えていました。

しかし、いざ自分がその年齢になると、中身は全く変わっていないことに驚いています。だからこそ、自分がおじさんだと思われているという自覚を持たなければ、と日々言い聞かせています。

私が大学生のときは、大学と部活と家の往復だけで、周りの人の役に立ちたい、ということに目を向けることはできていませんでした。毎日の生活を送ることが精一杯で、部屋も散らかり、文字通り、散々な生活をしておりました。

今でこそ色々な方と話をするのが楽しいなと思っていますが、当時の私は、人と会うことを避け、部屋に閉じこもってずっとYoutubeを見ているような若者でした。自分から新しいコミュニティに入ることなんて、もってのほかでした(笑)。

彼らを見て、自分が同じ年齢だったときのことを考えると、あまりの違いに驚きをかくせません。

「今の若者は……」

よく「今の若者は」という言葉を耳にします。その後には、だいたいネガティブな言葉が続くのではないでしょうか。

でも、少なくとも自分の周りにいる若者は違います。目の前のことに向き合い、誰よりも周りの人のことを考えています。自分なりのやり方で前に進もうとしています。そんな彼らの話を聞いていると泣きそうになってしまいます。この原稿を書きながらも、少し危ないです(笑)。体力は20代のころからほとんど変わらないと思っているものの、唯一涙もろくなってきたことに年齢を感じます。

自分自身、この業界にいると未だに若者と言われることもありますが、これからは「応援される側」だけではなく、「応援する側」として関わる時間が増えていくのかなと感じました。

「今の若者は〜」のあとに、少しでも前向きな言葉が続くよう、そんな社会を作る側でいられたらいいなと思っています。

今の若者は、素晴らしい。彼らのこれからが、本当に楽しみです。

白杖を持った人と晴眼者二人が談笑しながら歩いている写真。

記事内写真撮影:Spotlite
編集協力:株式会社ペリュトン

この記事を書いたライター

高橋昌希

1991年香川県生まれ。広島大学教育学部卒業後、国立障害者リハビリテーションセンター学院修了。視覚障害者のための福祉施設での勤務を経て、ガイドヘルパーの仕事を行う。教員免許(小学校・特別支援学校)を保有。歩行訓練士。Spotlite発起人。

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1991年香川県生まれ。広島大学教育学部卒業後、国立障害者リハビリテーションセンター学院修了。視覚障害者のための福祉施設での勤務を経て、ガイドヘルパーの仕事を行う。教員免許(小学校・特別支援学校)を保有。歩行訓練士。Spotlite発起人。

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