視覚障害者が外出する際に利用する白杖。路面や周辺の環境を把握したり、障害物から自身の身体を守ったりするほかに、周囲の人に視覚障害があることを伝える役割があります。
白杖には、素材や長さ、杖先の種類など様々な違いがあります。
この記事では、適切な白杖の選び方や購入方法を解説します。
白杖を購入する2つの方法
白杖を購入する方法は、以下の2つがあります。
- 補装具費支給を申請する
- 自費で購入する
以下、具体的に見ていきましょう。
方法1. 補装具費支給を申請する
白杖の購入費用は、補装具費として自治体からの補助を受けられます。
厚生労働省によると、補助の対象者は、補装具を必要とする障害者、障害児、難病患者です。ただし、難病患者等については、告示に定める疾病に限ります。
費用は、原則として1割負担で、その上限額は以下の通りです。
対象者の属性 | 上限金額 |
生活保護世帯に属する者 | 0円 |
市町村民税非課税世帯 | 0円 |
市町村民税課税世帯 | 37,200円 |
また、補装具の費用申請には、自身が費用を立て替えて、後日補助の支給額を市町村から支給してもらう「償還払い」と、補装具の業者が市町村から補助の支給額を受け取る「代金受領」の方式があります。原則は償還払いです。
具体的には以下のような流れで進みます。
償還払い
- 利用者が市町村へ補装具費支給を申請する。
※医師に補装具費支給意見書を作成してもらうことが必要です。 - 市町村が、補装具費の申請内容を審査する。適当である場合、利用者に支給決定が通知される。
- 利用者は、補装具事業者に補装具費支給券を提示し、補装具事業者と購入の契約を結ぶ。
- 利用者は、補装具事業者から補装具の引き渡しを受ける。
- 利用者が、補装具事業者に購入費等を支払い、領収証を受け取る。
- 利用者は、領収証と補装具費支給券を添えて、市町村に補装具費を請求する。
- 後日、市町村から利用者へ補装具費が支給される。
代金受領
- 利用者が市町村へ補装具費支給を申請する。
- 市町村が、補装具費の申請内容を審査する。適当である場合、利用者に支給決定が通知される。
- 利用者は、補装具事業者に補装具費支給券を提示し、補装具事業者と購入の契約を結ぶ。
- 利用者は、補装具事業者から補装具の引き渡しを受ける。
- 利用者は、補装具事業者に自己負担分の購入費を支払い、領収証を受け取る。
- 補装具事業者は、「補装具費の代理受領に係る委任状」および補装具費支給券を添えて、市町村に補装具費を請求する。
- 市町村から補装具事業者へ補装具費を支給する。
自治体によって申請の流れは異なる可能性があり、また、役所へ訪問しても担当者が不在のこともあるので、事前に役所へ電話で連絡した上で、相談に行くとよいでしょう。
参考PDF:補装具費支給制度・利用ハンドブック | 社会システム株式会社(外部リンク)
参考:サービスの利用方法 | 厚生労働省(外部リンク)
方法2. 自費で購入する
白杖は4,000円〜15,000円前後の価格です。以下のような場所で自費で購入できます。
- Amazonや楽天市場などの大手通販サイト
- ライトハウスや点字図書館(外部リンク)などの視覚障害関連の施設
- 福祉用具の専門店
色々なサイトを比べながら、費用や納期やサービスを考慮した上で購入するようにしましょう。
白杖ユーザーの北原さんに、実際の購入方法を聞きました。
白杖の選び方
ここでは一般的な白杖の選び方を紹介します。
用途から選ぶ
白杖には杖状の直杖式、折りたたみ式、スライド式があります。
- 直杖式
路面情報の伝導性や耐久性に優れるため、屋外での使用に適しています。 - 折りたたみ式やスライド式
カバンにしまえるため、屋内用や予備として持ち運べます。
ご自身の用途に合わせて、白杖の種類を選ぶようにしましょう。
弱視のマキさんは折りたたみ式の白杖を好んで使っています。
折りたたみ式は、細くて軽くて持ち運びやすいので、とても気に入っています。私の周りには使っている人が多いです。
私も、軽くてカバンに入れられるので折り畳み式を使っています。
また、直杖は、折れにくくて丈夫です。自分のライフスタイルにあったものを選ぶのがいいと思います。
白杖の素材を選ぶ
白杖の素材はいろいろありますが、カーボン製が主流です。
- 木製
- アルミ製
- カーボン製
軽いため、移動の負担を減らしたい方におすすめです。 - グラスファイバー製
錆びにくいため、長く使いたい方におすすめです。
グリップを選ぶ
グリップの素材には以下のものが採用されています。
- カーボングリップ
グリップをカーボン製にすると、白杖がより軽くなります。 - ゴムグリップ
最も多いグリップ素材です。しっかり握ることができます。カーボングリップより価格が安いため、購入費用を抑えたい方にもおすすめです。
グリップの形状は、メーカーによってストレートタイプやカーブタイプがあります。
グリップの色も、ネット通販サイトなどを探すといろいろあります。メーカーやショップごとに独自のものもあります。握った感じや持ち方で、変えてみるのもいいですね。
参考:「盲人安全つえ(白杖)の選び方」グリップの形状 | 株式会社KOSUGE(外部リンク)
目印代わりにグリップの周辺にストラップなどをつけてデコレーションをする人もいます。わかりやすい目印があると自分のものを見つけやすいですね。
白杖の長さを選ぶ
白杖の長さは、身長から43cm~48cmを引いた長さが適当とされています。
一般的な長さは、85cm〜140cm程度です。
参考:盲人安全つえ(白杖)の選び方 | 株式会社KOSUGE(外部リンク)
参考:白杖の選び方 | わくわく用具ショップ(外部リンク)
はじめて白杖を購入するときは、専門のお店に行って自分の身長に対して、長さや太さを合わせてから買います。
石突の種類を選ぶ
杖が地面に着く先端部分を石突と言います。
石突の形状にはいくつかの種類があるので、特徴と併せて紹介します。
写真の左から、
- スタンダードチップ
白杖のシャフトをそのまま伸ばしたような形の石突です。小さな段差や境界線の検知に優れていますが、路面との引っかかりが多いので、歩くときにストレスを感じることもあります。初めから白杖に付属していることが多いです。 - マシュマロチップ
直径3cmほどのマシュマロ型で、丸みがあります。路面の凹凸に対して引っかかりにくいのが特徴です。ティアドロップ型と呼ばれることもあります。 - ローラーチップ
丸みがあり、石突が回転するので、路面を転がしながら進めます。路面を転がしているときは、コロコロと音が鳴ることも。路面に石突を滑らせて歩行する場合に向いています。 - パームチップ
きのこの傘のような形です。白杖のシャフトと石突の接続部分が特殊なゴムになっており、小さな段差と石突が衝突したときに、衝撃が逃げる仕組みになっています。かといって、路面からの情報収集に支障はありません。高額ですが、軽くて歩行時のストレスが少ない石突です。
北原さんはパームチップ型を使っているそうです。
私の白杖の石突はパームチップ型です。クッション性がよくて、動かしたときに路面の凸凹に引っ掛かりにくいところが気に入っています。
石突だけ別売りをしているので、交換することもできます。
参考:Q 白杖やチップの選択でポイントになることは何ですか? | 国立大学法人筑波大学附属資格特別支援学校(付属盲学校)(外部リンク)
参考PDF:白杖の選び方について | 県立名古屋盲学校(外部リンク)
参考:白杖の種類、どれくらい知ってる?今更聞けない視覚障害者が使う白杖とは② | 公益財団法人日本ケアフィット教育機構(外部リンク)
最後に
白杖は補助制度を使って購入することもでき、ネットショップなどを利用すれば自費でも購入可能です。仕様もさまざまなため、自身の見え方や用途を考えながら選ぶようにしましょう。
白杖を使ったとしても、慣れない道を歩くことに不安を感じることはありませんか?
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