背景を選択

文字サイズ

施設・サービス

アイフェスタ2019 in横浜(後編)

神奈川県ライトセンターの入り口にある看板を指さす渡辺敏之さん

今回も、神奈川県ライトセンターで行われたアイフェスタ2019 in横浜の様子をご紹介します。
前編ではお伝え出来なかった展示ブースをご紹介します。

アイフェスタ2019 in横浜(前編)

印象に残った展示ブース

株式会社システムギアビジョン

様々な拡大読書器が机の上に並んでいる画像

拡大読書器を中心に取り扱う会社で、タイムズコーポレーション(旧社名)の名前でご存知の人も多いのではないでしょうか。
拡大読書器は、据え置き型からポケットに入るサイズまでが色々。筆記がしやすいもの、倍率が広く選べるもの、カメラ性能の高いものなど、数多くの選択肢があるのも魅力です。

このブースで気になったのがこちらの「クリアリーダープラス」

クリアリーダープラスで書類を読んでいる画像

カメラにはライトも装備しており、読み取り機器と原稿の位置関係を触って確認しながらセット出来るので、最適な位置で画像を読み取ることができます。
実際に操作すると、スキャンの失敗が少なく何度もやり直さなくてもよいという印象がありました。
読み上げ速度の調整がダイヤルで出来るなど、シンプルな構造なので、眼鏡型などのウェアラブル型よりも格段に扱いやすいのではないでしょうか。
また、バッテリーで動作可能なので家の中どこでも使えます。機械に線がつながっていないのは、視覚障害者にとって良いことです。

その他、おなじみの拡大読書器も展示されていました。

拡大読書器が机の上に3台あり、新聞を拡大している画像

メガネに取り付け、字を読み、人を教えてくれる話題の新商品「オーカムマイアイ2」も実際に体験できます。
会場内の複数のブースでオーカムマイアイ2の展示がありましたが、日本国内の総代理店はこちらの「株式会社システムギアビジョン」とのことです。

光学堂ロービジョンルーム

机の上に遮光眼鏡や拡大読書器が置かれている画像

横浜市にある眼鏡店です。
「神奈川県の人で、見え方に困ったらここへ行け」と言われるくらい、「見る」ことに関する支援アイテムがたくさん揃っています。
「病院や福祉施設などとは違う眼鏡店という立場からロービジョンケアや視覚リハビリを提供している」という点が最大の特徴と言えるでしょう。

左に遮光眼鏡、右にルーペが置かれている画像

ロービジョンケアの病院や施設でもなく、眼鏡屋でこれだけのものを扱っているというのは神奈川県では唯一。全国的にも珍しいそうです。
遮光眼鏡、拡大読書器、ルーペ、暗所視支援眼鏡などが実際に置いてあります。
多くの人に知ってもらいたいと、パンフレットもたくさんいただきました。
実際の店舗は予約制なので、詳細はホームページなどでご確認ください。

株式会社ラビット

机の上に拡大読書器やパンフレットが置かれている画像

国内最大級の視覚障害者向けイベント「サイトワールド」の事務局でもあるラビットです。

視覚障害者向けの商品を総合的に取り扱うラビットですが、今回の出展は主に携帯型拡大読書器。

そして、渡辺がちょっと気になっていたBluetoothキーボード「Rivo2(リボツー)」がこちら。

リボツーとスマホが並んで置かれている画像

このBluetoothキーボードは、iPhoneに接続して使用できる縦4列横5列の物理キーボードですが、その特徴はズバリ!
「VoiceOver」の操作です。

iPhoneと無線接続し、VoiceOverオンで使用することで、ホーム画面の操作や各種アプリ、文字入力などをこの物理キーボードから操作が可能です。

キーボードにスピーカーとマイクも搭載しており、Siriの音声コマンドの入力の他、ハンドセット(受話器)として電話の通話も可能となっていますので、iPhone本体はカバンなどにしまったまま、ほとんどの操作ができる超便利アイテムなのです!

体験レポート

リボツーを操作している手をアップで撮影した画像

iPhoneのホーム画面からメモ帳アプリを起動して『やきとり』と入力したものを漢字変換して『焼き鳥』で確定。

視覚障害者にとって、物理キーのないスマートフォンは文字入力しようとしてもキーボードの位置が分かりにくいですよね。
でも、リボツーは従来のガラケーのようなキーボードがあり、どこの場所のボタンを何回押したか感覚で分かるので操作がしやすかったです。

入力の際には音が出るので、自分がどのキーを押しているのか分かります。
iPhoneからの読み上げとは別に、キーボードそのものからも音声を出すことが出来ますので、利用シーンに合わせた使い方が出来るのも良いなと感じました。

認定NPO法人ことばの道案内

ブースの机にパンフレットがあり、担当者3名が座っている画像

①言葉の道案内の制作及び啓発普及活動に関する事業を行うとともに、音声対応したインターネット環境を整備しています。
②視覚しょうがい者及び視力が低下した方等の外出とその後の社会参加を支援しています。
③社会福祉の増進と情報化社会の発展に寄与することを目的に活動しています。

ことばの道案内 パンフレットより

例えば
「神奈川県ライトセンターまでの相模鉄道 二俣川駅 改札口からおよそ徒歩20分、距離1053メートルの道案内を行います。
目的地は改札口を背にして、およそ右まえ2時の方向にあります。
点字ブロックは、ほぼ完全に敷設してあり、道案内も点字ブロックに沿って説明します。
改札口を背にして通路を正面12時の方向へ11メートルほどすすむと、T字形の点字ブロックがあります。」

というように、Webページを開くと道順を細かく言葉で説明してくれます。

実際に現地に行き、距離を測りながら何度も調査し、視覚障害者がより安全に現地にたどり着ける道順を調査しています。

まだまだ限られた地域しか調査が出来ていないとおっしゃっていました。
こういった言葉からの情報というのは視覚障害者にとって重要なもののひとつです。もっとたくさんの人に知ってもらい、普及していって欲しい活動のひとつです。

後日、別途取材に伺う予定です。

株式会社朝倉メガネ

机の上に眼鏡型ルーペが置かれている画像

様々な倍率のレンズを組み替えられる、メガネ型のルーペです。
メガネ型にすることで片手を塞がずに使用することができます。
些細なことに感じるかもしれませんが、実は視覚障害者にとって片手が使えないのはとても不便です。
常に白杖を手に持っているので、何か持とうと思うと両方の手を塞いでしまうことになるからです。
よく聞くのが雨の日の傘の使用。
杖と傘両方持っての外出はとても大変です。

眼鏡型ルーペをアップで撮影した画像

でも、眼鏡型ルーペならレンズを2枚重ねてカスタマイズすることで、片手が塞がる不便さが解消できます。
レンズの枚数を1~2枚重ね調整することにより望遠鏡のように遠くを見れたり、近くを大きく拡大したりと2枚入れることで見える距離や大きさも変えられます。
両目入れることも、片目だけの自分だけのルーペを作ることもできます。

株式会社画像聴覚化研究所

机の上にヘッドホンやデモ機が置かれている画像

市販のタッチパネル式パソコン上で動作させることを前提に開発しているソフトウェアを紹介していました。

タッチパネルをタッチすると音が出ます。
パネルをに文字や図形を書くようになぞって行くと触れている位置によって音質や音の高さを変えており、それにより形を擬似的に感じることが出来ます。

実際に体験しないとイメージは難しいかもしれませんが、背中に指で文字を書かれたのが分かる感覚と近いです。
「見ることが困難なら音声にして聞く」という原点とも言えるアイディアをさらに拡張した大変興味深い開発かと思います。

ヘッドホンをしてタッチパネルに簡単な文字や図形を書くと、音だけで何を書いたか分かるだけでなく、プログラムで特定の位置をタップした際に予め設定された音声を流すこともできました。

手のひらのツボを音声で確認できるデモ機が机の上に置かれている画像

この原理を応用して、手の絵とツボの位置や効能などを確認したり音声で説明を聞いたりしながら、針灸マッサージ師を目指す学生の学習などに活用出来るとのことです。
その他にも、地図や図鑑などに応用することで、子供から大人まで色々と役に立つアイディアが広がりそうです。
無限の可能性を秘めているとても素晴らしいものだと思いました。

株式会社19

黒い手帳に白いボールペンで文字を書いている画像

黒いノートと黒い手帳の紹介です。

弱視の人の中には、通常の白背景の黒い文字より、黒背景の白い文字が見やすい人が多くいます。

そんな人たちに使いやすいノートと手帳です。

視覚障害者が使いやすいように開発された製品ではありますが、障害の有無に関わらず誰もがオシャレだと思える「ユニバーサルデザイン」の文具です。
一般のお店でも販売しており、若者たちを中心に人気があるようです。

錦城護謨株式会社篠原電機株式会社アトミクス株式会社

胸の高さくらいのポール型信号機の画像

篠原電機が開発製造、錦城護謨が販売を行う、「見やすく、振動や音でも分かる歩行者信号」です。
胸の高さくらいのポール型信号機で、空が明るい昼間は見あげなくて良いので見やすいです。
また道路の手前に設置してあるので、通常の歩行者信号より近くで見ることができます。
天板には方向と行き先が点字と墨字で表示されています。例えば左方向に「バスターミナル」、右方向に「〇〇市役所」など。

ポール型信号機に手を置く渡辺さん

信号機の天板に手を乗せて待っていると、信号の色が分かります。青の時は振動、点滅すると細かい振動、赤は静止するのです。
青信号であることは振動で分かるのですが、歩いている途中に青点滅や赤に変わったことが分からないのが今後の課題かなと思います。
もし、これが広まれば確実に事故は減ると思います。ぜひ全国に広がってほしい設備の一つです。


もう一点は、アトミックス株式会社製の「アトムセフティーガイド」
点字ブロックなのですが、通常の地面に埋め込むタイプではなく、シートタイプになっているのが特徴です。
今回のようなイベントなどで一時的に点字ブロックが必要な時に、工事などが必要なく、すぐに設置可能!
車椅子の人も楽に乗り越えられ、高齢者も転びにくいように考えられているユニバーサルデザインの製品です。

シートタイプの点字ブロックに白杖を沿わせている画像

株式会社アイフレンズ

とうくんらいとをモニターに映している画像

点字タイプライター、音声拡大読書器を中心に扱う視覚障害者関連機器の総合販売店です。
展示していたのは、音声拡大読書器の「とうくん」と「とうくんライト」
本や書類などスキャナでパソコンに取り込むことで、パソコンの画面に表示したり、その文章を音声で読み上げてくれます。
墨字だけではなく、点字を音声で読んでくれたり、逆に点訳することもできます。
点字ディスプレイが別途必要となりますが、点字を扱う人にとっては便利な機器の一つだと思います。

点字タイプライターテラタイプの画像

上の写真は、2015年3月に一旦販売を終了した人気の点字タイプライター「テラタイプ」

一旦、販売終了になったのですが、視覚障害者からの再販を望む声に応えて、以前の製品とは別の製造元と提携し、2017年10月から販売を再開しております。
再販当時はSNSなどで喜びの声をたくさん見ることが出来ました。
こういった福祉機器の継続販売や復刻販売は当事者にとってとても嬉しいことですね。

有限会社読書工房馬場村塾

机の上に書籍がびっしりと並べられている画像

弱視でも読みやすい本の発行販売や書籍のバリアフリーに関するコンサルティングを行う読書工房。

昔読んだ小説が、とても大きく太い字で書かれたものを見つけました。
漢字ドリルも見やすく書きやすい工夫がされていました。

馬場村塾とは、楽しく語り合い繋がることを目的に、真面目な話からスマートフォンの使い方や恋愛事情など様々なテーマで伝えあっている当事者や支援者の交流会です。

視覚障碍にまつわることについて、気軽に情報発信・交流できる場です。月に一度、高田馬場にある新宿リサイクル活動センターで開催しています。無料。どなたでもご参加いただけます。

馬場村塾 Twitterより

基本コンセプトは、自由な発信と楽しい交流。

2019年2月3日(日)にNHKラジオ第2 視覚障害ナビ・ラジオで「ようこそ“馬場村塾”へ!」と題して活動の様子などが紹介されています。
放送内容はコチラから聞くことができます。

Spotliteでもぜひ突撃レポートしたいですね。

川崎市視覚障害者情報文化センター

机の上に音声時計などの便利グッズがたくさん並んでいる画像

最後は、通称「川崎アイeyeセンター」こと、川崎市視覚障害者情報文化センターです。
実際のセンターは点字図書館として本の貸出、歩行や日常生活など各種訓練、用具販売の他、コンサートなどのイベントを開催している施設です。

今回の出展は視覚障害者向け用具の紹介です。

歩行には欠かせない白杖、見えなくても安全に使える爪切り、各種時計(音声時計、振動時計、触読時計)、調理器具(1プッシュで決まった量の液体が出る容器、置いたまま使える計量スプーン、音声の出るはかりなど)、音声体温計、小銭を分けて入れられる財布、お札の種類を判別する器具、触って遊べるルービックキューブなどなど。
紹介しきれないほどたくさんの便利グッズが勢揃い。

担当の方に売れ筋を聞いてみたところ、
「時計と財布に興味を持つ人が多くいます。また、点字シールも人気の商品です」との話でした。

これらの商品は、実際に施設やイベント会場で体験し、その場で購入することも可能ですし、直接行けない人は電話をすれば郵送でも対応してくれます。

まとめ

日常生活ですぐに使える便利グッズから、これからの研究開発が楽しみな製品まで、本当に内容盛りだくさんでした。
視覚障害者の生活が少しづつ豊かになりそうな実感があり、明るい気持ちになれた1日になりました。
これからも最新機器の情報や各地のイベントを順次ご紹介していきたいと思います。


アイフェスタ2019 in横浜 終わり

この記事を書いたライター

下田ゆかり

1985年神奈川県生まれ。警備業に10年以上従事していたが、28歳の時、交際相手が視覚障害者になったことをきっかけに、ガイドヘルパーの仕事を始める。同行援護従業者養成研修一般過程・応用過程修了。介護職員初任者研修修了。

他のおすすめ記事

この記事を書いたライター

この記事を書いたライター

下田ゆかり

1985年神奈川県生まれ。警備業に10年以上従事していたが、28歳の時、交際相手が視覚障害者になったことをきっかけに、ガイドヘルパーの仕事を始める。同行援護従業者養成研修一般過程・応用過程修了。介護職員初任者研修修了。

他のおすすめ記事