視覚障害者のなかには、アクティブにパラスポーツの活動をしている人がたくさんいます。特に柔道は、日本の代表的なスポーツのひとつで、視覚障害者柔道は人気があります。
この記事では視覚障害者柔道の取り組みやルールについてお伝えします。最後に視覚障害者柔道の始め方をご紹介していますので、視覚障害者柔道に興味がある人はぜひご覧ください。
視覚障害者柔道とは?
視覚障害者柔道とは、名前の通り「視覚障害者が行う柔道」のことを指します。ルールは、晴眼者柔道と同じ部分も多いです。同じ試合場を使用し、基本規定を国際柔道連盟(IJF)の試合審判規定としており、加えてIBSA(国際視覚障がい者スポーツ連盟)JUDOが定める独自規定が存在しています。
視覚障害者柔道の魅力
視覚障害者柔道は、組み合った状態から試合開始します。そのため、接近戦での技のかけ合いが注目ポイントです。組手争いがなく、相手を崩していくことが勝敗の分かれ目となります。なかには開始直後から大技が決まり、白熱した試合展開になることも。技のバリエーションが多く、ダイナミックです。
参考:魅力とルール | 日本視覚障害者柔道連盟(外部リンク)
競技ルール
試合は前述の通り、お互いに組んだ状態で始まります。勝敗は、「一本」「技あり」「反則負け」と3つのカテゴリーによって勝敗が決まります。
「一本」はそのもので勝利となり、「技あり」は累積2回で「一本」と同等になります。一方の「反則負け」は、消極的な姿勢を指摘する「指導」を累積3回積み上げると「反則負け」となります。
1試合の時間は4分間。時間内に「技あり」による差がない場合は、ゴールデンスコア方式の延長戦となり、そこで勝敗が決まります。ゴールデンスコアは時間無制限で行われ、「一本」あるいは「技あり」の差が出た時点で、勝敗が決まります。
試合の留意点
- 試合開始線は、1.5m離します。
- お互いに組んでから試合を始めます。
- 試合中に両手が離れた時は、試合を中断する。その後は試合開始の時と同じ手順で再開します。
- 場外規定は、基本的には適用しません。ただし、故意に利用した時は指導の対象となることもあります。
- 試合者が場外に近づいた時は主審が「場外、場外」とコールします。
- 技が決まるか「指導」などのときは、主審がジェスチャーと共に「指導・白」などとわかりやすくコールします。試合時間が残り1 分になった時点で、信号音を鳴らし、選手に残り時間を伝えます。
- 選手に聴覚障害がある場合は、手のひらに文字を書くことで情報を伝えます。
主な出場要件
クラス
日本パラスポーツ協会によると、視覚障害者柔道の国際大会に出場する選手のクラスは、視力や視野によって分けられており、以下の通りになります。
クラス | 基準 | 詳細 |
---|---|---|
J1 | 全盲 | 視力0.0025より悪い |
J2 | 弱視 | 両眼視で0.0032から0.05以内の視力、 あるいは視野直径60度以下 |
また、視覚障害者柔道も、晴眼者柔道と同様に体重別階級が存在します。以下の通り、クラス別のなかで、さらに体重別階級が分けられています。
参考PDF:かんたん!柔道ガイド | 公益財団法人日本パラスポーツ協会(外部リンク)
体重別階級
2024年のパリパラリンピックに向けて、大規模な階級の変更が行われました。
男子J1 | 男子J2 | 女子J1 | 女子J2 |
---|---|---|---|
60㎏級 | 60㎏級 | 48㎏級 | 48㎏級 |
73㎏級 | 73㎏級 | 57㎏級 | 57㎏級 |
90㎏級 | 90㎏級 | 70㎏級 | 70㎏級 |
90㎏超級 | 90㎏超級 | 70㎏超級 | 70㎏超級 |
主な大会情報
視覚障害者柔道の選手たちにむけた数々の国内大会、国際大会が行われています。
代表的なものは以下の通りです。
国内大会
- 全国視覚障害者学生柔道大会
- 全日本視覚障害者柔道大会
- 東京国際オープントーナメント大会
国際大会
- IBSA柔道グランプリ大会
- IBSA世界選手権大会
- パラリンピック大会
視覚障害者柔道で活躍している選手
視覚障害者柔道で活躍している選手をご紹介します。
瀬戸 勇次郎選手(男子73キロ級/ J2)
瀬戸選手の柔道との出会いは、4歳のとき。兄に誘われてスポーツ少年団に入団したことが、柔道家としての始まりだそうです。高校時代に、団体戦の全国大会である「金鷲旗高校柔道大会」に出場したことがきっかけとなり、高校3年で全国視覚障害者学生柔道大会に出場しました。
その後国際舞台で研鑽を積み、2021年のパラリンピック東京大会では初出場にして銅メダルを獲得しました。当時は男子66キロ級で出場しましたが、現在は階級を73キロ級に変更し、2024年のパラリンピックパリ大会出場を目指しています。
参考:瀬戸 勇次郎|東京パラリンピック柔道の銅メダリスト|パラサポWEB(外部リンク)
参考:瀬戸裕次郎選手のSNSなど
瀬戸裕次郎選手のnote(外部リンク)
瀬戸裕次郎選手のX(旧Twitter)アカウント(外部リンク)
瀬戸裕次郎選手のInstagram(外部リンク)
廣瀬 順子選手(女子57キロ級/ J2)
廣瀬選手は、高校時代に晴眼者として柔道のインターハイに出場。しかし19歳で膠原病の合併症により視力が低下し始め、2012年に視覚障害者柔道に転向しました。
2016年に出場したパラリンピックリオデジャネイロ大会では、女子57キロ級で銅メダルを獲得。2021年のパラリンピック東京大会では同5位に入賞しました。2024年のパラリンピックパリ大会出場に向けて、ますます練習に励んでいます。
参考:廣瀬 順子|リオパラリンピック柔道銅メダリスト|パラサポWEB(外部リンク)
参考:廣瀬順子選手のInstagram(外部リンク)
視覚障害者柔道の選手になるためには?
視覚障害者柔道の選手になりたいと思った人はどのようにして選手になるのでしょうか。ここでは、柔道の始め方、選手としてどのようなプロセスを経て活躍をしていくのかの流れを見ていきます。
競技を始める
まずは競技を始めましょう。教室を探したい場合、NPO法人日本視覚障害者柔道連盟のホームページ(外部リンク)に情報が掲載されています。講演、体験の案内もあります。
大会に出場する
次はぜひ自分の力を試すために、大会に参加してみましょう。学生向けの大会、一般の大会と2種類の大会があります。また国際戦に向けたオープントーナメントの開催もあります。
強化合宿に参加する
全国大会に出て、活躍が認められると、強化合宿の誘いをうけることができます。ここで研鑽を積み、国際大会の出場に向けて準備します。
国際大会に出場する
強化合宿を経て、目指す最高峰は国際大会やパラリンピックへの出場です。
視覚障害者柔道に触れてみよう
視覚障害者柔道は、ルールこそわずかに異なりますが、晴眼者柔道と近く、エキサイティングなスポーツです。もし、視力や視野に不安があり、何かスポーツに挑戦してみたい方がいたら、柔道も選択肢のひとつとして考えてみてはいかがでしょうか。
Spotliteでは、視覚障害者の外出時にガイドヘルパーを派遣する障害福祉サービス「同行援護」の事業所を運営しております。利用者、ヘルパーともに、若年層中心の活気ある事業所です。余暇活動を中心に、映画鑑賞やショッピング、スポーツ観戦など、幅広いご依頼に対応しています。お気軽にお問い合わせください。
LINEアカウントはこちら(外部リンク)
※ 当事務所は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、および香川県に対応しています。
記事内写真素材:Unsplash