視覚障害者でアスリートとして活躍している人はたくさんいます。こうした視覚障害者のアスリートの中には、会社に雇用されている人も多くいます。
この記事では、視覚障害者のアスリート雇用の状況や、支援機関、雇用されるためのポイントなどを紹介します。また、実際にアスリートとして雇用されている人や雇用している企業も紹介しています。
これからアスリートとして就職活動を目指す人やアスリート雇用に興味がある人は参考にしてください。
視覚障害者のアスリート雇用の状況
令和2年3月にスポーツ庁が「障害者スポーツに関する調査」を発表しています。
参考PDF:令和元年度「障害者スポーツ推進プロジェクト(障害者スポーツ団体の連携及び体制整備への支援事業・民間企業等への啓発)|スポーツ庁(外部リンク)
アスリート雇用をされている障害者の雇用形態は、57.7%が正社員、42.3%が契約社員、そして11.5%がその他(嘱託社員)でした。
アスリート雇用の半数以上が、正社員として就職していることがわかります。
視覚障害のあるアスリートを雇用している会社
視覚障害のあるアスリートを雇用している会社には、以下の事例があります。
- アルケア株式会社
- サイネオス・ヘルス・コマーシャル株式会社
- あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
- 参天製薬株式会社
他多数
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社では、経営企画部にスポーツチームをつくり、障害者スポーツ支援を行っています。
参考:AD Challenge Support | あいおいニッセイ同和損保(外部リンク)
ここにあげきれないほど多くの企業が、視覚障害者のアスリートを雇用しています。保険業界、建築業界、IT業界など業種もさまざまです。
障害者雇用促進法で、企業も採用には積極的
障害者雇用の背景として、法定雇用率があります。(障害者雇用促進法43条第1項)
民間企業の法定雇用率は2.3%です。従業員を43.5人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用しなければなりません。
参考:事業主の方へ|厚生労働省(外部リンク)
参考:障害者の雇用の促進等に関する法律 | e-Gov法令検索(外部リンク)
また、近年関心が高まっているCSR(企業の社会的責任)の観点からも、大企業ほど障害者を積極的に雇用する傾向は強くなっています。
特に2020年東京パラリンピック大会以降、障害者のアスリート雇用への注目は企業側からみても高まっています。
視覚障害のあるアスリートとして活躍している人
視覚障害のあるアスリートとして活躍している方は、多くいます。
過去にSpotliteで取材した方は次のような方々です。
- 競泳:富田宇宙さん
「僕は水泳が得意じゃない」パラリンピックメダリスト富田宇宙さんが泳ぎ続ける意味 | Spotlite(内部リンク) - ゴールボール:山口凌河さん
「視覚障害者のことを知っている人たちの輪が少しずつ大きくなれば。」山口凌河さん | Spotlite(内部リンク) - やりなげ:若生裕太さん
仲間と掴むパラリンピックの切符。視覚障害やり投げ若生裕太の挑戦。 | Spotlite(内部リンク) - 走り高跳び、自転車競技ほか:葭原茲男さん
「課題をクリアするためのノルマを自分に課すと、4年間はあっという間でした」パラリンピック金メダリスト 葭原滋男さん(前編) | Spotlite(内部リンク) - ゴールボール:宮食行次さん
「感謝を結果で示すために、世界の舞台で活躍したい」宮食行次さん | Spotlite(内部リンク)
※現在は取材当時と所属が変わっている方や、アスリート雇用ではない方、企業所属ではない方も含みます。
仕事とスポーツの両立は可能か
勤務する企業や雇用形態などにより、仕事とスポーツの両立の難しさは異なります。障害者アスリートとして企業に勤める場合、以下の3パターンの働き方をする人が多いようです。
- 基本は通常通りの勤務を行い、パラリンピックなどの国際大会や合宿の際に特別休暇(勤務扱い)を取得する働き方
- 勤務として練習に専念し、広報活動や講演活動で会社に貢献する働き方
- 1.と2.の間のような働き方(例:週に2~3日の出勤、時短勤務するなど)
最も練習時間が多いのは2.のパターンです。また、1.や3.の場合は仕事のスキルを身につけつつ、競技の練習時間が確保できます。どれが最もよいかは、アスリート自身や企業の考え方により異なります。
障害者アスリート雇用の就職・転職サポートは?
障害者アスリート雇用にも、通常の雇用と同じように支援機関があります。
例えば、以下のような支援機関が挙げられます。
上記は、アスリートと企業の間に入りマッチングをしてくれる転職、就職サービスです。無料で利用できるだけでなく、面接対策や書類作成時のフォローなども対応。はじめての就職活動でも安心です。
JOC・JPCが運営する、トップアスリートと企業をマッチングする支援制度「アスナビ」もあります。パラリンピック選手も登録しています。
- アスナビ(外部リンク)
視覚障害のあるアスリートとして雇用されるには?
障害者アスリートとして企業に雇用されるための6つのポイントがあります。
- 自分に合う競技を見つける
- 競技経験を積み重ねる
- 自分の経験を人に伝える
- 競技関係者とのネットワークを構築する
- 自分の目指すレベルを明確にする
- なるべく大きな大会で活躍できることを目指す
各ポイントを説明します。
自分に合う競技を見つける
スポーツが好きであれば、まずは様々な競技に挑戦して自分に合う種目を見つけることが重要です。パラスポーツ全般に言えることですが、一般のスポーツに比べて競技人口が少ない種目も多く、視覚障害者向けの競技もあります。
競技人口が少ない分、活躍の確率が上がると考えてよいでしょう。
競技経験を積み重ねる
自分に合う競技が見つかったら、競技経験を積み重ねることが大切です。
企業がアスリートの能力を判断する際に、判断基準となりやすいのは競技経験と結果です。今までどの競技に参加して、どのような成績を残してきたかをアピールできるようにしましょう。
自分の経験を伝える
競技のイベントや啓発・講演会などもアスリートにとっては大切な仕事です。
企業にとっても自社の取り組みや考え方を社会に伝える機会となるため、メリットがあります。障害のことや競技のことを人前で話す機会があれば、挑戦してみるのがいいでしょう。
競技関係者とのネットワークを構築する
競技関係者とのネットワークを構築することで、アスリート雇用をされる可能性が高まります。
日頃からコーチやチームメイト、競技関係者とのコミュニケーションを大切にすることで、信頼関係を築くことにつながります。その結果、さまざまな情報を得ることができ、支援につながったり、就職先を紹介してもらえたりするかもしれません。
自分の目指すレベルを明確にする
国際大会でメダルを目指すのか、国内大会で優勝するのか、目標とするレベルを明確にしましょう。企業が求める能力との兼ね合いもあり、アスリートとしての実力だけではなく、オフィスでの勤務や講演会の実施などを求められることもあります。
なるべく大きな大会で活躍できることを目指す
最後のポイントは、簡単ではありませんがなるべく大きな大会で活躍することです。
国際大会のメダリストであればより大きな注目が集まるので、企業にとっても宣伝などのメリットが期待でき、雇用につながりやすいでしょう。
誰もができるわけではありませんが、パラリンピックなどの国際大会のメダリストになったり、上位入賞を果たすことができれば知名度が上がります。そのような業績から、取材や講演、イベント出演などに繋がる場合もあります。
最後に
視覚障害者の中には、障害者アスリートとして企業に雇用されている人がいます。企業に雇用されることで、競技に集中できるだけでなく、経済面の安定による不安の軽減、仕事のスキルが身につくなどのメリットがあります。
視覚障害者がアスリートとして就職するには、支援機関を利用したり、大会での成績を残したり、関係者とのネットワーク構築が大切です。ぜひ、この記事を参考に障害者アスリートへの道を考えていただけたらと思います。
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