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ストーリー

「やりがいとかじゃなくて、楽しい~と感じることを続けていたら今になりました」櫻井悠乃さん

空を見上げている櫻井さんを撮影した画像。

記事の目次

今回インタビューしたのは、大学生の櫻井悠乃(さくらいゆうの)さんです。

中学生の時に福祉の道を志し、現在はガイドヘルパーとして活動するほか、ブラインドサッカーチームでコーラーとして活躍したり、盲ろう者の通訳介助も行っています。

これから社会に羽ばたく、未来への可能性を秘めた櫻井さんの思いを伺いました。

略歴

大阪府生まれ。現在は東京都内の福祉系大学に通う。ブラインドサッカーチーム乃木坂ナイツに所属。 
同行援護従業者養成研修 一般・応用課程修了、知的障害者移動支援従業者養成研修課程修了、全身性障害者移動支援従業者養成研修課程修了、東京都盲ろう者通訳・介助者派遣事業 登録通訳・介助者、手話技能検定4級。

歩道橋の真ん中で立っている櫻井さんを撮影した画像。

インタビュー

ー今、学校ではどんなことを学んでいるのですか?
障害、児童、高齢など福祉について幅広く勉強しています。3年生からは高齢者福祉が専門のゼミに入る予定です。社会福祉士と介護福祉士の受験資格を取ることができるので、卒業時には2つの試験に合格して、将来は知的障害者と関わる仕事がしたいです。


ーなぜ、福祉の世界に興味を持ったのですか?
中学2年生の時の職場体験で、デイサービスに行った時、おばあちゃんから「ありがとう」と言われたことが嬉しくて「福祉の道に進みたい」と思いました。せっかくなら高校から福祉を専門的に学びたいと思って、福祉の勉強ができる総合高校に進学しました。


ー総合高校というのは、カリキュラムが特徴的なのですよね。
私が通っていた高校には5つの系列があり、興味のある科目を中心に自分に適する時間割を作ることができます。基礎科目の他に自分が選択した科目を受講します。
同行援護など3つの資格(同行援護従業者養成研修、知的障害児者移動支援従事者養成研修、全身性障害者ガイドヘルパー養成研修)も、高校の選択科目を受講することで取得できました。部活では、福祉部の部長を務めていました。


ー福祉部ではどんな活動をするのですか?
毎週1回、手話と点字の学習をします。どちらも先生が来てくださいます。手話では、手話コーラスの作成や単語を学び例文・会話等で実践します。点字では、一冊自分の絵本を決めその点訳を行います。毎年、点字のカレンダーも作成しています。
また、顧問が教えてくれる色々なボランティアにも参加します。知的障害者施設や児童館、特別養護老人ホームのお手伝いのほか、地域の障害者スポーツ大会にも行きました。


ー高校で福祉についてさらに学びを深めていったのですね。
そうですね。高校2年生の時、部活で知的障害者施設に2泊3日の合宿に行きました。 私は手話コーラスの司会を努めて、最後にみんなが前に出て歌う時、一体となった雰囲気に感動して涙が出ました。
知的障害者の方と実際に関わってみて、「素直で優しい方々だ」と心の底から感じ、将来はこの方々のそばで働きたいなと思いました。

カフェの中で笑顔で話をする櫻井さんの画像。

ーブラインドサッカーのチームに入ったきっかけは何でしたか?
高校の時からブラインドサッカーの大会にボランティアで参加していて、授業でも乃木坂ナイツ代表の葭原滋男(よしはらしげお)さんが同行援護の講師をしてくれていました。卒業後、福祉部の顧問を通して、葭原さんからメールを頂き、チームの練習に参加したら、ハマってしまいました。


ーブラインドサッカーの何にはまったのですか?
高校の時はボランティアとしてしか関わってなかったのですが、視覚障害者と健常者が一緒に協力して、チームが一体となって試合をするのが楽しかったです。高校の先輩がコーラー(ゴールの裏で選手にボールの位置などを指示する役割)をしている姿がかっこいいなと思ったこともあり「自分もやってみたい」と思って。今は、試合でコーラーをすることも増えました。


ープライベートでも障害者と関わる活動をしているのですね。他に趣味はありますか?
ブラインドサッカーが趣味なんですよね。毎週の練習に行くと、癒やされて、ストレス発散になります。たまに1人で走っている時もありますね(笑)
最近、ブラインドサッカーのボールを買いました。勉強の合間に1人でドリブルの練習しています(笑)


ーすごい、何か女子大生らしいお話などは…?

ニコルン(藤田ニコル)が好きで、チームでその話をしたら、あだ名が「ゆのるん」になりました。
見た目も中身も幼いから、最近は、大人っぽくなりたいなと思って、服装とかもシンプルめな格好をしてます。でも、話したら素がでちゃうんですけど(笑)

乃木坂ナイツのユニフォームとブラインドサッカーのボールを撮影した画像。

ー盲ろう者の支援も行っているのですよね。
高校の授業で盲ろう者の福島智(ふくしまさとし)先生のビデオを見て、興味を持ちました。 大学生になって福島先生の授業を受講して、念願の福島先生とお話をすることができました。 そこで先生から「通訳・介助員の講習会を受けてみたら」と言われたことがきっかけで、今は盲ろう者通訳・介助員としても活動しています。


ー手話はどこで勉強したのですか?

高校生2年生から、地元の自治体で行っている手話の講習会を受講しました。3年間、毎週木曜日の夜に講習に通い、上級クラスまで修了しました。


ー盲ろう者と関わるやりがいは何かありかますか?
指点字や触手話で盲ろう者とコミュニケーションを取れるのが嬉しいんですよね。人と話をするのが好きなので。私の周りにいる人はみんな優しくて、一緒にいて本当に楽しいんです。
だから、やりがいとかじゃなくて「楽しい~」と感じることを続けていたら今になりました。楽しいことがやりがいなのかもしれません。

櫻井さんが指点字やしょくしゅわを行う写真を複数枚コラージュにした画像。

ー視覚障害者と接するときとは違いますか? 
コミュニケーション方法が大きく違いますね。盲ろうといっても見え方や聞こえ方は様々です。指点字(点字が使える盲ろう者の指に点字を打って伝える方法)の方は状況説明が重要です。
盲ろうの方に対する通訳は、話している言葉をそのまま伝える直接話法という方法が難しいです。 例えば、「櫻井:今日はいい天気ですね。田中:そうですね」みたいに、話をした人の名前のあとに、その人の言葉をそのまま伝えます。


ー視覚障害者や盲ろう者と接する時に、意識していることや気をつけていることはありますか?
うーーん、意識していることはないです。障害者だからといって、そんなに意識しない方が自然ですよね。もちろん安全確保は気をつけてます。
障害者ではなく、1人の人間として、見えない、聞こえないところを補う気持ちで接しています。目や耳の代わりになっているだけで、特別に意識していることはないですね。

植木のそばで立っている櫻井さんの画像。

ー福祉に興味を持っている学生にメッセージはありますか?
自分の興味がある分野のボランティアを行ってみたり、資格を取得してみたりすることで、活動の幅が広がると思います。私は、様々なボランティアを経験するうちに、自分に合っている、合っていないということが分かりました。だから、チャレンジ精神を持って何事にも挑戦することが大事だと思います。


ーどんどん新しいことに挑戦する気持ちはどこから湧いてくるのでしょう?
最近、私の人生は波のようになっているなと感じることがあります。色んな出会いが新しい活動につながって、本当に運が良かったです。でも最初は、高校で必死にボランティアをやっただけなんですよね。
目の前のことを一生懸命やることと、仮に楽しくなくても続けてみることが大切かもしれません。手話の講習会を途中で辞めたいと思ったこともあったけど、3年間続けたから今に活きていますからね。

歩道橋の端で、笑顔で斜め前を向いている櫻井さんの画像。

ー櫻井さんが目標にしている人はいますか?
 高校時代の福祉部顧問の先生ですね。私の恩師です。一般的に、先生は学校で勉強を教えるのが仕事だと思うのですが、ボランティアに連れて行ってもらうなど、色んな経験をさせてくれました。恩師のように、周りの人を支えるような役割になりたいです。
大学に進学してから、学生として盲ろうの勉強をしていたのに、通訳・介助員の資格を取得後支援する側になれたり、ブラインドサッカーもボランティアだけだったのにチームの一員として試合に出れるようになったり。そういうきっかけをくれた恩師には大感謝しています。


ーこれからやりたいことはありますか?
学生のうちに海外へ行きたくて、3月に9日間マレーシアにスタディーツアーに行きます。 将来は、知的障害者の施設で働きたいです。場所は決まってないのですが、今まで関わった施設から誘われることもあります。


ーまだ、大学2年生。これから色々経験する中で変わっていくのかもしれないですね。
進路は、4年生になったときに考えようと思っています。今は、目の前にあることを全力でやりたいです。自分の考え方もこれから変わると思っているので。
でも、今ぼんやりと思っているのは、施設でずっと働きたいわけではなく、障害とか高齢とか関係なくみんなが一緒に過ごせる施設を作りたいです。そういう場所ができれば素敵だなと思います。

この記事を書いたライター

Spotlite編集部

Spotlite編集部は、編集長で歩行訓練士の高橋を中心に、視覚障害当事者、同行援護従業者、障害福祉やマイノリティの分野に精通しているライター・編集者などが協力して運営しています。

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