株式会社ナルドニカが運営する福祉事業所「あしたば」は、2025年4月に開所。関西エリアで視覚障害者の同行援護サービスを提供しています。
あしたばでは、事業所のDX(デジタルトランスフォーメーション)に力を入れています。株式会社mitsukiが開発した同行援護DXシステム「おでかけくん」は、事業所の構想段階から導入を検討され、2025年4月のサービス開始から利用されています。
今回は、おでかけくんを導入した経緯や利用してよかった点、今後の展望などを伺いました。
「おでかけくん」とは?以下のリンクより概要をご確認いただけます。
お話をうかがった事業所
福祉事業所 あしたば
- 株式会社ナルドニカ 代表取締役
福祉事業所 あしたば 管理者・サービス提供責任者
岡本昇さん
公式サイト:ようこそ | 福祉事業所 あしたば(外部リンク)

当事者として感じた同行援護のヘルパー不足
ー「福祉事業所あしたば」とはどんな団体ですか?
福祉事業所あしたばは、新しく立ち上げた同行援護サービスの事業所です。2025年1月に運営会社の株式会社ナルドニカを設立し、4月から同行援護サービスを提供しています。ヘルパーは約20名所属していて、利用者は神戸や大阪に住んでいる方が多いです。
「あしたば」という事業所名は、植物の明日葉(アシタバ)が由来です。芽を摘んでも翌日には新たな芽が生えてくる、生命力の強い植物です。花言葉が「旺盛な生命力」「未来への希望」で同行援護にぴったりだと思いました。
会社名のナルドニカは「どうにかなる」という言葉から付けています。障害があってもどうにかなってきた、という思いも込めています。
ー岡本さんのプロフィールを教えてください。
私も視覚障害があって、見え方は手動弁です。目の前で手を動かしたら動いているのはわかりますが、文字は全く見えていません。
昨年まで22年間、大阪の日本ライトハウスに勤めていました。視覚障害者用具の販売やサポートをしたり、視覚障害者の職業訓練でパソコンの授業を担当していたこともあります。家庭の事情でフルタイムの通勤が難しくなり、2024年7月に日本ライトハウスを退職し、準備期間を経て、今年株式会社ナルドニカを立ち上げました。
ーどのような過程で事業所を立ち上げましたか?
前職を辞めてから、私自身が外出の時に同行援護を使用していました。その中で、徐々に予約が取れなくなってきたり、ヘルパー不足で利用しづらくなってきたりしているなと感じました。そんな時に、DX化して事業運営ができることを知り、関西で展開できないかなと思ったのです。
大阪や兵庫の中心部にはヘルパーがいますが、中心部を離れると不足しているのが課題でした。この課題を解決するためは、いかにガイドヘルパーを集めるかが重要です。働きやすい環境を整えるために、同行援護サービスのDXは必要だと思いました。今では、兵庫や大阪だけでなく、京都にお住まいのヘルパーさんも登録してくれています。
「おでかけくん」が同行援護事業の核に

ーおでかけくんの導入は、事業所開所前から検討されていたのですか?
そもそもおでかけくんがなければ、同行援護事業はやっていなかったです。私自身、紙の文字が見えないので、情報の正確さを担保するためにも、できる限りDXを推進する必要がありました。
現在、あしたばでの基本的なやりとりはオンラインで行います。ヘルパーさんの雇用契約や実績報告の提出など、全てオンラインで完結できるようにしています。事務職員も事務所に出社する必要がありません。
おでかけくんは、あしたばの同行援護事業の核になっています。
ー導入はどのように進めましたか?
株式会社mitsukiの高橋さんとの最初のやりとりは2024年8月中旬でした。会社設立の準備と並行しながら、導入の準備を進めていきました。2025年3月初旬に事業所の開設が決まったあと、同月中旬におでかけくんのテスト運用を行い、4月の開所と同時に本格始動させました。
最初はそれぞれの機能を使いこなすのに、使い方などを問い合わせることがありましたが、すぐに回答いただけました。今のところ、運用上のトラブルはほとんどありません。
また、給与計算ソフトの「マネーフォワードクラウド給与」や請求ソフトの「介舟ファミリー」とも連携して利用しています。
おでかけくんの便利さに惹かれ、同行援護を利用するようになった方も

ーおでかけくんを利用してみて、印象はどうでしたか?
最初は、慣れていない利用者さんがおでかけくんをどれだけ使ってくれるのかと不安でした。しかし実際に使ってもらうと、利用者さんから「簡単でしたよ」「こうやって使っています」という声を多くいただいています。使い方に関する問い合わせもほとんどありません。
高齢のヘルパーさんもいますが問題なく操作できており、安心しました。LINEが使えない利用者さんに限っては、電話で対応しています。
ーヘルパーさんや利用者さんからの反応はいかがでしたか?
利用者さんからは24時間予約可能なことや、ヘルパーさんが指名できることが好評です。ヘルパーさんから好評なのは、スマホから実績報告書が出せることや予約のリマインド機能などです。
ヘルパーさんからも利用者さんからも、チャット機能は喜ばれています。予約日の前に細かな打ち合わせができますし、初対面の場合はチャット上で挨拶して交流することで緊張がほぐれることもあります。
利用者さんの中には、おでかけくんが便利だということで、以前よりも利用時間を増やしたり、新たにあしたばの利用者になってくれた方もいて、嬉しく思います。
同行援護の利用者とヘルパーを増やしていきたい

ー今後、どのような取り組みをしていきたいですか?
同行援護の利用者さんを増やしていきたいです。そのためにはもっとヘルパーさんが必要になります。そのために今、神戸の医療福祉系の大学と連携して、同行援護従事者研修の企画などを通じた学生さんへのアプローチを考えています。まず神戸を中心に、今後は大阪にも広げていきたいです。
同行援護を提供する事業者がもっと増えてほしいですし、おでかけくんのような新しいシステムを導入して新しい風を入れてほしいと思っています。事業所も高齢化が進んでいるので、他の事業所と一緒になって若い方も増やしていきたいです。
また、他の事業所さんと「ヘルパーの手配ができないときに、将来的には他の事業所さんのヘルパーを手配できないか」と話したりします。おでかけくんの開発に関わってくると思うのですが、おでかけくんを使って他の事業所との協力体制を作りたいとも思っています。
ー最後に導入を考えている事業者の方にメッセージをお願いします。
おでかけくんを使ってみて、現在、メリットはあってもデメリットは感じていません。デメリットを強いて挙げるとしたら月額料金が少しかかることくらいですが、確実に金額以上の仕事をしてくれていると思っています。
他の事業所さんなどに話したり操作画面をみてもらったりすると、みなさん「これはいいですね」と絶対に言われます。多くの事業所さんに、ぜひ一度触ってみてほしいです。
「おでかけくん」の導入メリットは以下のリンクからもお読みいただけます。
おでかけくんのプレスリリースは以下のリンクから。
株式会社mitsuki、視覚障害者の外出を支援する「同行援護」のDXを推進する支援システム「おでかけくん」をリリース。|PR TIMES(外部リンク)
記事内写真撮影:Spotllite(注釈のあるものを除く)
取材・執筆協力:古賀瞳
編集協力:株式会社ペリュトン