色と液量を音で知らせる「みずいろクリップ」偶然から始まった温かみのある製品だった

箱から出した水色クリップを手に持っている画像。

香川県高松市のベンチャー企業、株式会社Raise the Flag.(レイズザフラッグ)が、みずいろクリップを発売しました。

みずいろクリップは、容器に注ぐ液体の量や物の色を音で知らせてくれる製品です。

様々な機能や購入者の声のほか、株式会社Raise the Flag.代表取締役の中村猛(なかむらたけし)さんのインタビューをご紹介します。

みずいろクリップとは

名前の由来

みずいろクリップには2つの意味があります。

  1. 水の量が判る=みず +  色が判る=いろ を合わせた みずいろ

  2. 子供たちが描く絵の中で1番多い青空 = みずいろ

この素敵な名前を付けたのはホリエモンこと堀江貴文さんのマンガなどで有名なイラストレーター・漫画家の西アズナブル先生だそうです。

形状

長さ約13cm、幅約2cm、重さ約38gのクリップ型の製品です。
本体は鮮やかな水色で、上部約3cmは黒色です。

水色クリップをアップで撮影した画像。

機能

色判別機能

本体上部にあるカラーセンサー部を色が知りたい対象物に押し当て、スイッチを入れることで、その対象物の色を音声にて読み上げてくれます。
現行モデルでの判別可能色数は下記の14色ですが、みずいろクリップは常にバージョンアップを繰り返すので、電池交換の度に判別できる色の数が大幅に増えているなど、最新の機能が利用できます。

<判別可能色>
赤、オレンジ、黄色、黄緑、緑、水色、青、紺、紫、ピンク、茶色、白、灰色、黒

水色クリップの先端を赤色の服にあてている画像。

液体検知機能

クリップ部分を容器に挟み、本体の下部に液体が接触するとアラーム音が鳴ります。コップに飲み物を注ぐ時や、調理をする際、鍋に水を張ったりするのに便利な機能です。耐熱性もあるため、カップ麺などにお湯を注ぐ時にも利用できます。

アラーム音が鳴った後、自動的にタイマー機能が動作します。最長6分間、1分毎に経過した分数を音声にてお知らせしてくれます。

コップに挟んだ水色クリップの先端を撮影した画像。

価格と電池交換

<初回購入価格>
5470円(税込み)

1日5回の注量確認とタイマー使用、100回の色判別を、毎日行って6ヶ月使用できるバッテリー容量です。

構造上、購入者自身で電池の交換ができません。
使用済みずいろクリップを商品発送時に同封している返送用封筒に入れて投函すると、2980円でメンテナンス、スピーカーの交換、アップデートを施し、返送してくれます。

使い方動画

購入者の声

中村さんの元には、みずいろクリップを購入した視覚障害者から様々な感想が届いているそうです。その一部をご紹介します。

<色判別機能に関すること>

  • 自分の身の回りには、色とりどりのものがあるということに気づかされました。全盲になってから、自分の周りは黒か白の世界しかないと思い込んでしまうことがありましたが、自分の持ち物に、ピンクや水色、黄緑のような、昔は大好きだった色があると気づくだけで、明るい気持ちになれました。

  • 出かける時の洋服選びで色が分からず、母に頼らなければいけないことがかなりのストレスになっておりましたが、自分で出来ることが増えそうで本当に嬉しく思いました。

<液体検知機能に関すること>

  • ヤケドの心配がなくなりました。

  • カップスープは、容器の下の方にお湯を注ぐラインがあり、今まで丁度良い量を注げなかったのですが、ようやく美味しいカップスープを食べることができました。
水色クリップをカップ麺の容器に挟んでいる画像。

みずいろクリップの課題

みずいろクリップには視覚障害者の生活を便利にする機能が盛りだくさんですが、まだ開発されたばかりの製品です。

実際の利用者から、いくつか要望も聞かれているそうです。

例えば、液体検知機能を使う際、「うまく固定できない」「クリップが落ちてしまう」という意見があるようです。少しの振動や軽く触れただけでクリップが動いてしまうこともあるのだとか。そのため、アタッチメントを準備中だそうです。

最初から全員が使いやすい完璧な製品はないと思います。それぞれの生活に合わせた必要な機能を工夫して使えるといいのかもしれません。

インタビュー

株式会社Raise the Flag.代表取締役の中村猛さんに、開発のきっかけや今後の展望を伺いました。

中村さんが笑顔でデスクに座っている画像。

ー開発のきっかけを教えて下さい。
数年前、商店街を1人で歩いている視覚障害者を見かけたのです。看板や自転車にぶつかりそうになっていたので、声をかけようとしたところ別の方に助けていただいていました。ちょうどその夜、視覚障害者が駅のホームから転落して亡くなるというニュースを見て、翌日には全盲の少女が出演するテレビ番組を偶然目にしました。


ー視覚障害者に関する体験が重なったのですね。
そうですね。全盲の少女の「目が見えないことは不便であるけど不幸ではない」という言葉を聞いて、頭を打たれたような衝撃を受けました。不便ならば、解決してあげられる。少女の言葉がとても嬉しかったのを覚えています。私が周囲に「視覚に障害がある人の世界を変えることにした」と宣言した時、「その世界、創りましょう」と賛同してくれた人たちが多くいたことも、開発を始めた大きな理由の1つです。


ーなぜ、色と液体を検知できる製品の開発を始めたのですか?

視覚障害者の生活について調査する中で、全盲の母親が料理をする時、調味料の量を手のひらに溜めて確認していたところ、年頃の娘さんから「汚いからやめてほしい」と言われたことを知りました。さらに1人で衣服を選ぶ時に色が分からないから毎朝のコーディネートが一人でできないという話も聞き、2つの機能が合わさった製品を開発することにしました。

開発過程の水色クリップを8個並べて撮影した画像。

ー開発する中で大変だったことはありますか?
難しいことは忘れてしまう性格なのですが(笑)
例えば、判別できる色の種類は多すぎても少なすぎてもいけなくて、ヒアリングを重ねて結果的に14色に落ち着きました。色に関してはそれぞれの個体で使用データが残っています。例えば赤を何度も読み取っている人であれば、返送いただいた時に、赤を詳しく認識できるようにするなどのカスタマイズができます。
また、ボタンの操作感や防水機能についてもたくさん課題はありましたが、CTO(最高技術責任者)の篠原が解決してくれました。


ー将来的にどのような製品にしたいと考えていますか?
色覚異常の男の子を持つ親御さんから、「自分の息子にも使いたい。視覚障害者以外でも使えるのではないか」という声を聞きました。対象者は、視覚障害者に限定せず、多くの方に使っていただきたいです。そして今後は海外にも展開していきます。そのために、みずいろクリップには「MADE IN JAPAN」の表記を入れています。


ー今後、他にも開発を考えている製品はありますか?
3つの製品を開発中です。中でも1番力を入れて取り組んでいるのは、視覚障害者が、単独で行動できるようになる『RtFグラス』です。これが完成すれば、視覚に障害があっても1人で飲食店に行ったり、旅行したりすることが可能になります。もちろん、衝突や転落などによる事故は起きなくなるでしょう。それを普通のオシャレなメガネにしか見えないデザインで仕上げます。今回発売した、みずいろクリップの売上は、全てRtFグラスの開発費に充てる予定です。遠い未来などではなく、この2~3年で視覚に障がいがある方々の世界を変えます。ご期待ください。

中村さんと視覚障害者

みずいろクリップの特徴は、製品の機能も去ることながら、開発者と視覚障害者の距離が近いことだと思います。

1月下旬には、地元の視覚障害者の企画で中村さんの会社見学と懇親会が行われました。明るくユーモアがある中村さんの周りは、いつも笑いで溢れています。

お互いが顔の見える関係で開発を進めていくという温かみのある製品だと感じました。

レイズザフラッグの事務所で中村さんが視覚障害者と談笑している画像。

購入希望の方へ

みずいろクリップは下記のサイトから購入できます。

みずいろクリップ製品紹介ページ(外部リンク)

お問い合わせ

株式会社Raise the Flag.の窓口までお問い合わせください。

メール:info@rtf.co.jp
電話:087-887-5373 (留守の場合は留守番電話にメッセージをお願いします)

最後に

私(高橋)の地元、香川県の企業ということで、中村さんとは1年以上前から開発状況をお伺いしながら発売を楽しみにしていました。

中村さんのような熱い思いを持った開発者の存在自体がとても貴重だと感じます。これからも多くの方に役立つ製品を開発してほしいと願っています。

記事を作成する過程で、中村さんから「どうしても皆様に伝えたい」という熱いメッセージを頂いたので、最後に公開して今回の記事を終わります。

(中村さんのキャラクターが伝わるように、原文のまま掲載しています)

中村さんから皆様へのメッセージ

皆さん、こんにちは。レイズザフラッグ中村です。今回、Spotliteさんのご協力により、僕のインタビューが掲載されることとなりました。
インタビュー記事を読むと、なんか…僕たちだけでみずいろクリップを開発したと思われるでしょうが、それは大きな誤解です。

開発資金・製造資金を集める為に走り回ってくれた金融機関の方々、設計を手伝ってくれた金型会社、実装会社、1円の得にもならないのに経理を担当してくれる税理士先生、声優さん、アルバイトのお嬢、そして実験にご協力くださった当事者の方々、その他にも数えきれないほど多くの方々の ご協力で、みずいろクリップをリリースすることができました。

これだけ多くの方が僕たちの唱える「視覚障がいの世界を変える!」という目標を支えてくれているのです。変わらないわけはありません。

「そんな世界になったらイイなぁ」って? すぐ、なりますよ。お任せあれ。

と、偉そうなこと言っちゃったけど、RtFグラスの開発資金を補うためのみずいろクリップで、既に社運がかかっちゃいました…(涙)
皆さま、みずいろクリップ、よろしくお願いいたします~。

それではまた、Spotliteでお会いいたしましょう!高橋さん、また よろしく。

ありがとうございます!

ABOUTこの記事をかいた人

アバター

1991年香川県生まれ。広島大学教育学部卒業後、国立障害者リハビリテーションセンター学院修了。視覚障害者のための福祉施設での勤務を経て、ガイドヘルパーの仕事を行う。教員免許(小学校・特別支援学校)を保有。歩行訓練士。Spotlite発起人。