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聞いてみた・やってみた

「行動範囲が広がって、やりたいことをあきらめなくなった」同行援護事業所みつき利用者さんの声

笑顔で話しながら、並木道を歩く視覚障害者とガイドヘルパー。

この春、大学に入学した視覚障害者の“かなう”さん。初対面の人と話すことが苦手で、これまで同行援護を使ったことがありませんでした。そんなかなうさんが、大学入学を機に同行援護を使うことにしました。そのきっかけや、登録から依頼の方法、そして同行援護を利用した感想をSpotliteに寄稿してくださいました。

利用者かなうさん プロフィール

大学1年生。全盲。都内の視覚支援学校高等部を卒業。大学入学をきっかけに、地元を離れ東京で一人暮らしを始める。2024年4月から同行援護の利用をはじめる。

大学進学。同行援護との出会い

青空を背景に、薄いピンク色の桜の花がしている、桜の枝のクローズアップ写真。
(写真素材:Unsplash)

視覚支援学校高等部の卒業を控えた2月中旬、友人と4月から始まる新生活について情報交換をしていました。その中で、友人に「同行援護を使う予定はある?」と聞かれました。それまで私は同行援護というサービスの存在は知っていましたが、初対面の人と話すことが苦手で、知らないヘルパーさんと一緒に出かけることに大きなハードルを感じていました。しかし、高校の寮生活と比べて大学生活では行動範囲が格段に広がるだろうと考えていたため、「使ってみたいけど……」と曖昧な返事をしました。

友人は、「同行援護事業所みつき」のオンライン説明会を聴講したらしく、みつきでは他の事業所と比較して私たちと同世代のヘルパーさんが多く所属していること、LINEを使って簡単に同行を依頼できることを教えてくれました。

私は驚きました。同行援護サービスはヘルパーさんが少なく依頼が難しい、ヘルパーさんは年配の方が多い、というイメージを持っていたからです。しかし、友人の説明を聞いて、イメージが大きく変わりました。新しい生活を始めるにあたり、同行援護サービスを利用してみようかなと前向きに考えるようになりました。

登録から依頼方法まで、オンライン面談でサポート

さっそく同行援護のこと、みつきのことを母親に話しました。母親は、私の一人暮らしや単独での移動に不安があったようで、みつきの話を聞いてほっとしたようでした。

登録の仕方がわからなかったため問い合わせたところ、運営スタッフがとても熱心に話を聞いてくださいました。

女性が見ているスマートフォンの画面の様子。「LINEで相談する」というボタンをタップしようとしている。

運営スタッフと連絡を取り合う中で、余暇活動中の同行の他、通学に慣れるまでの数か月間は大学の行き帰りの見守りもお願いすることになりました。みつきへの問い合わせと並行して、地元の自治体の市役所にも連絡し、同行援護サービスを受けたい旨の相談や、1か月あたりの受給時間の確認もしました。そしてついに運営スタッフとオンラインで面談をし、おでかけを依頼する際の注意点や依頼方法のレクチャーを受け、登録が完了しました。

初めての利用「新生活のスタートダッシュは、ばっちり!」

初めてのみつきへの依頼は4月初旬の大学の行き帰りの見守りでした。

LINEと連動したみつき独自の依頼システム「おでかけくん」は操作が簡単で、使いやすさに驚きました。

大学までは徒歩と電車でおよそ40分かかります。最終的に私が単独で通学することを目標としていたため、通学時の大学の行き帰りの見守りは、基本的に手引きはせず口頭で案内してもらうように依頼しました。

依頼をした次の日には担当するヘルパーさんが決定しており、「こんなに早く対応してもらえるんだ」と驚きました。「どんな方なんだろう」と、期待と緊張で当日を迎えました。人生初の同行援護の朝、来てくださったのは快活な女性の方でした。少し緊張していた私に優しく話しかけてくださり、口頭での案内では私にどんな情報が必要なのか丁寧に確認してくださいました。

朝のラッシュを経験したことがなかった私に、ユーモアを交えて満員電車でのマナーやちょっとイライラすることなどの心得を教えてくださいました。進学前に大学までの道のりは歩行訓練を受けており覚えていましたが、朝のラッシュは予想以上の状況で、大きな疲労を感じました。それでも電車を待っているときなどのヘルパーさんとの楽しい会話を通じて、「同行援護、私にも使えるかも」という気持ちが芽生えました。

その日の帰りのヘルパーさんは大学生の女性でした。この方とは興味のある分野が近く、あっという間に打ち解け、会話が弾みました。「スタートダッシュはばっちり!」と思えてきて、同行援護の利用への期待が高まりました。

横断歩道で信号が変わるのを待っている白杖の人とガイドヘルパー。

同行援護で「安心して行きたいところに行ける」

その後も引き続き大学の行き帰りのサポートを主に依頼していました。初日の朝にお会いしたヘルパーさんは頻繁に依頼を引き受けてくださり、週に1~2回、同行してもらいました。回を重ねるごとに親しくなり、道端に落ちているものや電車での他の人の会話など、何気ないことで大笑いすることもよくあります。朝早くに依頼を引き受けてくださることが大変うれしく、そのヘルパーさんには、今でもたくさん元気をもらっています。

その他にも、大勢のヘルパーさんに出会いました。年齢の近い大学生から人生の先輩まで幅広い年齢層で、様々なバックグラウンドを持ったヘルパーさんが引き受けてくださり、毎回の同行はとても刺激的であっという間です。

少し新生活に慣れてきて、大学の行き帰りだけではなく、一人ではなかなか行くことが難しい百貨店やショッピングセンターでの買い物も依頼するようになりました。一人暮らしに必要な生活用品や食品、余暇活動で使用するものなど、様々な買い物にもヘルパーさんに付き添ってもらうようになりました。どのヘルパーさんも非常に丁寧に商品の説明をしてくださり、自分のニーズに合ったものを選ぶことができ、満足いく買い物ができています。買い物のついでにおしゃれなカフェに立ち寄ることもあり、「東京を満喫できているなあ」と日々実感します。

ピンク色のテーブルの上にラテアートをほどこしたカフェラテがおいてある写真。
(写真素材:Unsplash)

自分が行きたいところに行けるというのは本当に大きな安心感があります。同行援護を利用する前は、単独での外出が非常に不安で、自ら行動を制限することもありました。行きたい課外活動やイベントがあっても、対面での参加を考えると不安が募り、結局参加を諦めることもありました。新しい環境や場所に行くことに対する不安や緊張が大きな要因でしたが、同行援護サービスを利用することでその壁を乗り越えることができています。現在は、登録しているボランティアなどの課外活動に参加する際、会場までの付き添いもお願いすることがあります。

ヘルパーさんとの会話の中で、同行援護サービスの仕組みやそれを支えている人たちのことを知る機会が増え、感謝の気持ちでいっぱいです。自分自身も何かしらの形で社会に貢献できるようになりたいという思いが強まっています。

新生活をきっかけに、同行援護事業所みつきを利用し始めたことで、日々の生活が本当に充実したものとなりました。ヘルパーさんたちのおかげで、行動範囲が広がり、新しい挑戦ができるようになりました。みつきを利用して、これからもたくさんの経験を積んでいきたいと思っています。

記事執筆:かなう

記事内写真撮影:Spotlite(※注釈のあるものを除く)
※記事内の同行援護の写真はイメージです。実際の記事執筆者の同行援護の様子ではありません。

Spotliteでは、視覚障害者の外出時にガイドヘルパーを派遣する障害福祉サービス「同行援護」の事業所を運営しております。利用者、ヘルパーともに、若年層中心の活気ある事業所です。余暇活動を中心に、映画鑑賞やショッピング、スポーツ観戦など、幅広いご依頼に対応しています。お気軽にお問い合わせください。

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※ 当事務所は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、および香川県に対応しています。

この記事を書いたライター

Spotlite編集部

Spotlite編集部は、編集長で歩行訓練士の高橋を中心に、視覚障害当事者、同行援護従業者、障害福祉やマイノリティの分野に精通しているライター・編集者などが協力して運営しています。

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