2026年6月18日木曜日、パリパラリンピック男子400m、T13クラス銀メダリストの福永凌太選手が、視覚障害児の放課後の居場所「放課後ルームいちご」を訪問しました。
当日は、小学生・中学生を対象にした運動イベントを開催。福永選手はストレッチや体の動かし方をレクチャーしたほか、一緒に食事をしたり、パラリンピックの銀メダルを囲んで会話を楽しんだりと、子どもたちとの交流を深めました。
トップアスリートから学ぶだけではなく、お互いを知り、理解を深め合う。そんな時間となった当日の様子をお伝えします。
福永選手が寄稿してくださったコラムは以下のリンクからお読みいただけます。
視覚障害の子どもたちがパラアスリートと出会う機会をつくりたい
今回のイベントは、Spotliteを運営する株式会社mitsukiが、「競技以外でも視覚障害者アスリートが活躍できる場を提供したい」と考えている中で、企画されました。
福永選手から「視覚障害のある子どもたちと交流したい」という思いがあることを聞き、放課後ルームいちごに打診。するとスタッフから、「せっかくならミニイベントとして開催したい」という提案があり、今回のイベントが実現したのです。

イベント当日、福永選手は交流に先立ち、放課後ルームいちごの施設内を案内してもらいました。
子どもたちが普段どのような環境で学び、過ごしているのかを見学し、スタッフから使用している支援機器について説明を受けた福永選手。弱視である福永選手にとって、点字タイプライターや、回転式の一体オセロに触れるのは初めての経験だったそうです。

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「早く走るために大事なことは?」子どもたちと外で交流
午後3時45分からは、近くの護国寺広場で「小学生向けストレッチ&ドリル体験」を実施。小学生6名が参加しました。
福永選手は、腕の振り方や正しい姿勢など、走るための基本を子どもたちにレクチャー。
福永選手が、「走るのに一番大事なことは?」と聞くと、子ども達は手をあげて、「体をやわらかくする」「努力しながら練習する」など思い思いに答えます。
「今言ってくれたことは、全部めちゃくちゃ大事だけど、実はスポーツで一番大事なのは“姿勢”です。トップのアスリートは全員姿勢がいいです」と伝える福永選手。
これには周囲の大人たちから「へえー」「なるほど」と関心の声が上がります。その後はいい姿勢を作るための方法や感覚を、実際に一緒に動きながら子どもたちに伝えてくれました。
体を動かしたあとは、実際に短い距離を走ってみました。

子ども達は積極的に福永選手に話しかけ、終始笑顔の絶えないプログラムとなりました。
その後、屋内へ戻り、子どもたちと会話を楽しんだり、宿題や教科書を一緒に見たり、運動中とはまた違った交流の時間になりました。
続いて、中学生を対象に室内でストレッチを実施。参加者は4人です。軽いストレッチや体幹を鍛えるプランクなど、無理なく取り組める内容で進められました。福永選手は一人ひとりの様子を見ながら、体の動かし方や姿勢のポイントを丁寧に伝えていました。

終了後は、中学生と食事をともにしながら交流。「どうして陸上競技を始めたんですか?」といった中学生からの質問に、一つひとつざっくばらんに回答していきます。競技のことや普段の生活についても語り合うなど、なごやかな雰囲気で交流ができました。
「2024って書いてある!」メダルの点字を読む子どもたち

交流の中で、小学生、中学生ともに盛り上がったのが、福永選手が持参したパリパラリンピックの銀メダルです。
「自由に触っていいよ」という福永選手の声かけに、子どもたちは興味津々。実際に手に取ると、「すごく重い!」と驚きの声も上がります。普段なかなか触れることのないパラリンピックのメダルに表情を輝かせていました。
パリパラリンピックのメダルには、視覚障害者にも情報が伝わるよう、点字やレリーフで、触って分かる工夫が施されています。メダルに刻まれた点字に気付いた子どもたち。福永選手は点字を読むことができませんが、点字を読める子どもたちが「2024って書いてある!」「アルファベットの『PARIS』かな?」と点字を読み、福永選手へ伝える場面もありました。

福永選手は、「メダルに点字があることは知っていたけれど、読めなかったので、やっと分かってうれしい」と笑顔に。子どもたちも、自分たちが読んだ情報を福永選手に伝えられたことがうれしかったようです。
子どもたちだけでなくヘルパーやスタッフもメダルを触ったり見たりして、福永選手に質問をし、一緒に交流ができました。
「これからも子ども達と交流する機会を持ちたい」
イベント終了後、福永選手は「またやりたい」と何度も話していました。今回の交流で特に印象に残ったのは、自分より見えにくい子どもたちと接した経験だったといいます。
福永選手自身も弱視ですが、現在の日常生活では白杖を使用しておらず、子どもの頃は地域の学校で晴眼者としてスポーツに取り組んできました。そのため、小さい頃から見えにくい子どもたちは、どのようにボディイメージを持ち体を動かすのか、どのような言葉かけが伝わりやすいのか、具体的に知る機会は多くなかったといいます。事前の準備で悩んだ部分もあったという福永選手。それでも、「視覚障害のある子どもたち向けのイベントをやりたい」という思いは、今回の交流を通してさらに強くなりました。
イベント後に、「見えにくい子どもたちのことを、より具体的にイメージできるようになった」と振り返った福永選手。同じ視覚障害でも、見え方や必要なサポートは一人ひとり異なることを改めて実感し、子どもたちへの伝え方や関わり方を考えるきっかけになったそうです。
株式会社mitsukiのスタッフも、今回の経験をもとに内容をブラッシュアップしながら継続的なイベントの開催につなげたいと考えています。
パラアスリートが競技以外でも活躍できる場を広げること。そして、視覚障害のある子どもたちがスポーツに親しみ、新たな挑戦や可能性につながるきっかけをつくること。
Spotlite、そして株式会社mitsukiでは、これからも子どもたちとパラアスリートをつなぐイベントを実施したり、視覚障害者のスポーツやアスリートを紹介する記事を掲載したりしていきます。視覚障害者がスポーツを楽しむ機会を広げるきっかけになればうれしいです。
放課後ルームいちご公式サイト:放課後ルームいちご(外部リンク)
記事内写真撮影:Spotlite
編集協力:株式会社ペリュトン