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ストーリー

「視覚障害になってからスポーツを始めました」ゴールボール、ブラインドサッカー、サーフィン、柔道、ボッチャなどを楽しむ栗原さん

花束とメダルを手に持つ栗原さん

ゴールボール、ブラインドサッカー、サーフィン、柔道、ボッチャ。視覚障害になってからスポーツを始め、今やさまざまな競技を楽しむ栗原梢さん。「もともと運動は全然していなかった」という彼女が、同行援護とスポーツを通じてどんな日常を手に入れたのか、お話を聞きました。

栗原梢さん(乃木坂ナイツ/みつき利用者)

網膜色素変性症で白内障を併発したが、手術で白内障による症状は改善。マホ程度の視野で視力は0.4程度。

栗原さんが所属する乃木坂ナイツのご紹介は下記のリンクからお読みいただけます。

「一緒にたのしんでもらえれば十分」ガイドヘルパーへの本音

─さまざまなスポーツをされていますが、もともとスポーツがお好きだったんですか?

目について診断される前は、全然スポーツをやっていませんでした。視覚障害になってから何かやろうかなと思いたち、2016年頃、最初に始めたのがゴールボールです。近場でやっていたのを知っていたので、「こんな近くでやっているなら行ってみようか」という感じでした。

ゴールボールは「静寂の中の格闘技」とも言われるそうですね。初めてやってみた感想は、いかがでしたか?

足首がかなり疲れました(笑)。音を頼りにボールを全身で止めるのでずっと低い姿勢ですし、立ったり座ったりする動作が多いので。視覚障害者のなかにも、個人競技と団体競技で向き不向きがあると思うのですが、私は団体競技であるゴールボールが一番やりやすくて、今もスポーツといえばゴールボールが中心ですね。

そのほかブラインドサッカー、サーフィン、柔道と広がっていきました。去年はボッチャの大会にもふらっと出てみたら、意外と楽しくて。練習をほとんどしていないのに1勝できて、「やった!」って(笑)。ボッチャは競技人口が多いので、会場がすごく盛り上がっていてたのしい。今年も試合に出たいと思っています。

あとは走るのも好きで、近所のスポーツセンターに行って走っています。

駒沢陸上競技場をバックに観客席で撮影した乃木坂ナイツメンバーの集合写真
2023年6月開催、第24回東京都障害者スポーツ大会にて。一番左が栗原さん(写真提供:乃木坂ナイツ)

スポーツをするときに、同行援護は使われていますか?

スポーツ観戦に行くとき、同行援護を利用することが多いです。特に車いすラグビーが好きで、昨年は2、3回行きました。

スポーツ観戦では、ヘルパーさんに試合の状況を教えてもらうのですが、人によって視点が違ってすごく面白いです。同じ車いすラグビーを見に行っても、選手や競技の情報を詳しく教えてくれる人もいれば、選手の見た目を「あの人は腕がボンレスハムみたいで……」って伝えてくれる人もいて(笑)、同じ競技の試合でも違った楽しみ方ができます。

─スポーツ観戦や移動の際、ガイドヘルパーに対し「こういう情報がほしい」「こんなふうに動いてほしい」などと希望することはありますか?

「残り何分ですか」など、知りたいことは私から聞くので、「こうしてほしい」というのは特にないですね。ガイドヘルパーさんには解説を求めているわけではなくて、一緒に観戦を楽しんでもらえて、あとはたまにトイレに連れていってもらえたらそれで十分、というのが正直なところです。私が今まで一緒に行ってくれたヘルパーさんたちも、競技が好きで来てくれる人たちでした。

私もガイドヘルパーの資格を持っているので、すごく参考になります。スポーツの依頼には、特別なガイドスキルが必要だと思っていました……。

依頼を出す側としても、「解説不要です」とか「一緒に楽しむ感じで大丈夫です」と書けば、ヘルパーさんも気軽に受けやすくなるかもしれないですね。

「その競技の知識がないと」とハードルを感じる必要はないと思います。私の場合、たとえばサーフィンでは、着替えができる場所や海への誘導をしてもらったり、「波がくるよ」などとざっくり声掛けしてもらったりする程度でOKです。ちゃんとした波のガイドがほしければ専門のガイドさんにお願いするので、気負う必要はありません。

繰り返しになりますが、私の場合は一緒に楽しめるのがいちばんです。「そのスポーツが好き」「行ってみたい」という気持ちさえあれば、自信を持って受けてもらえたらうれしいです。

栗原梢さんがブラインドセーリングを体験した時の取材記事は、以下のリンクからお読みいただけます。

スポーツを始めて、人との交流が増えた

満面の笑顔で話している白い服を着た栗原さん。

みつきを利用するようになったきっかけは?

代表の高橋さんとは、国立障害者リハビリテーションセンターで出会って、もともと知り合いでした。その縁もあり、他の事業所は使ったことがなくて、みつきの立ち上げからずっと利用しています。

スタッフもヘルパーさんも、みつきは明るい方が多いと思います。また、私が女性だから取り計らってもらえているのかもしれないのですが、依頼の約8割は女性が手を挙げてくれる印象があって。スポーツをするときは更衣室も利用しますし、トイレへの同行もあるので女性の方が安心する場面も。男性ヘルパーさんでも困ったことはありませんが、そういう面でも利用しやすいなと感じています。

競技団体や同行援護の事業所がもっと連携していくとしたら、どんな形が理想ですか?

協会やその他の施設などで、同行援護を紹介できるような仕組みがあったら、スポーツ初心者でも安心できるのかなと思います。

以前柔道を始めたときに、一緒に参加した中学生の女の子が「親の都合がつかないと参加できない」と言っていて、「同行援護というサービスがあるよ」と教えたことがありました。

視覚障害者やその家族のなかには、同行援護を知らなかったり、知っていても二の足を踏んでいたりする人がいると思います。情報をもっと広くキャッチできるようになれば、スポーツを続けられる人が増えるのではないかなと思っています。

─栗原さんのアクティブなお話を聞いていると、もともとスポーツをしていなかったというのが驚きです。スポーツを通じて、日常が変わったと感じることはありますか?

20代のとき、障害者手帳を取る前は、仕事から帰ったらテレビを見て寝るだけの生活でした。

ですが、誰しも「寿命があと1年」と言われたら、好きなことをしようと思うじゃないですか。私の場合はそれと同じで、目が見えなくなるかもしれないとわかってはじめて「できることをやってみよう」と思えました。

スポーツを始めてから、ガイドヘルパーさんやチームメイトとの交流がすごく増えました。それがなかったら今みたいにアーティストのライブやスポーツ観戦に行こうとも思っていなかったかもしれません。世界が広がった、という感覚があります。

だから、一歩踏み出せない人がいるとしたら、「趣味の合う友達に会えるかもしれないよ」と伝えたいです。スポーツで知り合った人と、今度カラオケ行こうとか、ライブ行こうとか、次につながっていくことが結構あります。私にとってスポーツや同行援護は、そういう新しい出会いのきっかけになる、日常を豊かにしてくれるものだと思っています。

アイキャッチ写真提供:栗原梢さん
取材・執筆:白石果林
編集協力:株式会社ペリュトン

この記事を書いたライター

Spotlite編集部

Spotlite編集部は、編集長で歩行訓練士の高橋を中心に、視覚障害当事者、同行援護従業者、障害福祉やマイノリティの分野に精通しているライター・編集者などが協力して運営しています。

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