「“当たり前”を、変えていきたい」
視覚障害者が外出するときに必要な支援を行うサービス同行援護。その利用中、視覚障害者を支援するのが“当たり前”。そんな新しい社会を目指す皆さんに出会いました。
災害時でも“当たり前”にみんなと協力できるように、視覚障害者の案内を幼いうちから経験できるゲームを提供する皆さんに、その想いと課題を聞きました。
今回は、同行援護を利用中に体験した避難シミュレーションゲームの模様をレポートします。
Spotliteは、視覚障害者の外出サポートとして同行援護事業に取り組んでいます。
参考：同行援護とは？支援内容や対象者・移動支援との違いを解説 | Spotlite（内部リンク）
今回の同行援護の概要
視覚障害者の北原さんとガイドヘルパーの谷越さんが、2022年12月17日、18日に上野恩賜公園で開催されたイベント「三陸なう」に参加しました。
東北地方の三陸に関連した食事やパフォーマンス、ゲームなどが楽しめるブースが多く並んだイベント会場。その中で、2人は防災に関連するブースを訪れました。
お二人の略歴
北原 新之助（きたはら・しんのすけ）さん
網膜色素変性症で視力は両目とも0.05。視野は2〜3度で、夜盲がある。白杖ユーザー。普段の生活は1人で送っており、同行援護の利用はこの日が初めて。
谷越 陽（たにこし・みなみ）さん
ガイドヘルパー（取材当時）。学生のうちにSpotliteの事業所で資格を取得し、ガイドヘルパーを始める。普段のガイドでは、同行援護利用者が日常生活でよく行く場所への付き添いをすることが多い。
※現在は学校を卒業後就職し、ガイドヘルパーは休業しています。
子どもに視覚障害者の誘導を体験してもらう
2人が訪れたのは「ひなん案内ゲーム」のブース。中にいた女性スタッフが対応してくれました。
北原 「ここは何をする場所ですか？」
スタッフ 「視覚障害者が避難するときにどんなものが危ないのか、視覚障害者を案内するときに何を気をつけたらいいのかをゲーム形式で子どもに体験してもらう場所です。
目隠しをしたスタッフが視覚障害者役になり、案内役の子どもに手を引いてもらいながらゴールまで一緒に歩きます」
ブースには狭い道や段差、倒木など、複数の障害物が用意されていました。
このゲームは、遊びながら案内の難しさを子どもに体験してほしいという想いから作られました。
スタッフ 「子どものうちから視覚障害者の案内を学んでいたら、街中で視覚障害者に声をかけてお手伝いするのが当たり前になるんじゃないかと思ってこのブースを企画しました。
私なりに調べて企画したんですが、実際このブースが役に立つのかわからなくて……。もしよかったらアドバイスをいただけませんか？」
障害者の存在を“当たり前”にしたい
案内手順、手の引き方、障害物の伝え方など、スタッフの方の不安点を北原さんが聞きます。
スタッフ 「案内役の子どもたちには『急に触れられるとびっくりするから、案内のために肩や手に触れるときは声をかけてね』と伝えています。『触りますよ』と声をかけてもらったあと、小さい子には手を繋いでもらい、大きい子には肩を貸してもらいます。
ゲーム開始前に椅子に座ってもらって『危険なものがあったら教えてね』とも伝えています。しかし、いざゲームが始まると忘れちゃう子が多いので、その都度『次どっちに行ったらいいですか？』『なにか危険なものはありますか？』と聞いて、教えてもらえるように誘導してゴールまで行けるようにしています。
この方法は、視覚障害者からの立場からどう思いますか？」
北原 「全部完璧だと思います！僕たちは急に触られるのが本当に怖いので、最初は声をかけるようにしてもらえるとありがたいです。肩を持ってもらうのもすごくいいです。
行き先の情報を伝えてもらうのも間違っていないのですが、小さい子どもには少し難しいかもしれません。全てを無理に覚えてもらおうとせず、ゲームを通じて少しでも視覚障害者の支援に触れる機会があるだけで十分だと思います。
今回はスペースの都合上難しいのかもしれませんが、大人にもぜひこの素晴らしいゲームを体験してもらいたいですね」
「ひなん案内ゲーム」のブースを子ども限定にしたのには、スペース確保の課題以外にも理由がありました。
スタッフ 「障害者を、子どものうちから“当たり前にいる存在”にしたいと考えました。大人になっても困っている障害者の対応が当たり前にできる社会にしたくて活動しています」
北原 「すてきな取り組みですね！」
取り組みの輪 広げていきたい
非常時には特に重要になる避難案内。災害が起きても視覚障害者を取り残さないための取り組みが広がっていってほしいものです。
北原 「ひなん案内ゲーム運営の方と、視覚障害当事者やガイドヘルパーが連携できたら面白そうですよね。いろんな形でより多くの人に視覚障害について知ってもらえたら嬉しいです」
2人が「三陸なう」の「ひなん案内ゲーム」以外のブースも楽しんだ様子も記事になっています。同行援護の利用例を知りたい方は読んでみてください。
参考：「人混みも騒がしさも、同行援護を利用すれば大丈夫」安心・充実のイベント参加 | Spotlite（内部リンク）
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（記事内写真撮影：Spotlite）
