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聞いてみた・やってみた

音を頼りに野球を楽しむ「サウンドベースボール」日本初の大規模練習会を全盲のライターが体験レポート

2026年6月14日公式練習会参加者の集合写真。緑の芝生のグラウンドの上に22人の参加者が2列に並んでいる。

みなさんは、音を頼りにプレーする野球「サウンドベースボール」をご存じでしょうか。「音を頼りに野球をする」と聞いても、すぐにはイメージできない方も多いかもしれません。

サウンドベースボールとは、音の鳴るボールを使ってプレーするイタリア発祥の野球です。海外ではブラインドベースボールと呼ばれており、視覚障害者用のスポーツとして考案されました。プレー中はアイマスクを着用し視覚を遮断することで、視覚障害の有無に関わらず誰でも一緒に楽しめるスポーツでもあります。日本では、すでに別の競技が「ブラインドベースボール」として登録され普及しているため、「サウンドベースボール」の名称を使用しています。

音の鳴るボールや音によるサポートを活用し、打つ・走る・守るという野球の醍醐味を味わえる競技として、現在では世界大会が定期的に開催されるなど、多くの国に普及しています。一方、日本ではサウンドベースボールの普及は始まったばかりです。

そんな中、2026年6月14日に埼玉県所沢市の所沢航空記念公園で、日本国内初となる公式練習会が開催されました。私も選手として参加し、競技の魅力や難しさ、そして大きな可能性を肌で感じました。

本記事では、サウンドベースボールの基本ルールを紹介するとともに、練習会の様子や、実際にプレーして感じた魅力をお伝えします。

サウンドベースボールとは?基本ルールをわかりやすく紹介

サウンドベースボールは、野球の「打つ・走る・守る」という基本的な楽しさを残しながら、視覚に頼らずプレーできるよう工夫された競技です。

1チームは8人で構成され、5人のブラインドプレーヤー(アイマスクを着用してプレーする選手)と3人のサイテッドプレーヤー(アイマスクを着用せず、プレーをサポートする晴眼者の選手)が出場します。

ブラインドプレーヤーは全員アイマスクを着用し、見え方の違いによる影響をなくした状態でプレーします。一方、サイテッドプレーヤーはセカンドベースの守備や、ランナー・守備選手への音によるサポートを担当し、試合を円滑に進める重要な役割を担います。ボールは、内側をくり抜き2つの鈴を入れた軟式野球ボールを使用します。

通常の野球との大きな違いは2つあります。

ひとつ目は、ピッチャーとキャッチャーがいないことです。

バッターは片手でボールを持ち、手を放して地面に着く前にボールと反対の手に持ったバットで打ちます。同じ打席で空振りやファウルボールが3回になると三振となります。打球は内野で一度以上バウンドした後に外野へ転がることでヒットとなり、ランナーは音の鳴るファーストベースや、各塁で待つアシスタントが鳴らすハンドクラッパー(手をたたいて音を発する道具)の音を頼りに次の塁を目指します。

男性が、右手にバット左手にボールを持ち、右手の肘を曲げ左手はピンと伸ばしている。バットの先にボールを当てながらバッティングの準備に入っている。
バッティングの様子。

ふたつ目は、グラウンドの使い方です。

守備はホームベースとセカンドベースを結んだラインより、バッターから見て左側だけで行われます。そのため、ファーストベースはランナーが走るためのベースとしてのみ使用され、ファーストやライトの守備はありません。

守備では、ブラインドプレーヤーが転がるボールの音だけを頼りに捕球し、セカンドベースへ送球します。セカンドベースにはサイテッドプレーヤーが入り、味方の送球を音で誘導しながら捕球します。バッターランナーが走ってセカンドベースへ到達する前に、守備側のセカンドのサイテッドプレーヤーが捕球できればアウトとなります。守備側には広いグラウンドでボールの転がる位置を音で聞き分ける集中力、捕球から送球までの正確かつ素早い動作、そして何よりもチームワークが求められます。

難しそうに感じるかもしれませんが、周囲の音や仲間のサポートを活用することで、視覚障害の有無に関わらず、野球ならではの戦略性や爽快感を味わえることが、サウンドベースボールの大きな魅力です。

日本初の公式練習会、体験レポート

右手にバット左手にボールをもった視覚障害者の男性が、向き合って立つ男性と話している。

2026年6月14日、埼玉県所沢市の所沢航空記念公園で、一般社団法人サウンドベースボールジャパン主催による、日本初の公式練習会が開催されました。

当日は視覚障害者のプレーヤー9名、スタッフと見学者15名の計24名が参加し、イタリアでコーチ経験のあるスタッフの指導のもと、サウンドベースボールの基礎を学びました。当日は、準備運動から始まり、ベースランニング、キャッチボール、守備練習、バッティングの順に進められました。

ベースランニングでは、実際にベースを設置したグラウンドで一周し、各ベースまでの距離や方向感覚を確認しました。キャッチボールでは、相手の声を頼りにボールを投げる感覚を養い、守備練習では転がるボールの音だけを頼りに捕球し、セカンドベースのサイテッドプレーヤーへ送球する練習に取り組みました。最後のバッティングでは、自分でボールを落として打つサウンドベースボール特有の打撃方法を繰り返し練習しました。

この日は、イタリアでコーチ経験のあるスタッフからの提案で、グラウンド内ではサイテッドプレーヤーによる誘導や声での指示を最小限にしてプレーしました。ブラインドプレーヤーが自ら考え、自由に行動することを意識するためです。その結果、ブラインドプレーヤー同士が自然と声を掛け合い、お互いにコミュニケーションを取りながらプレーする場面が多く見られ、チームワークの大切さを感じられる雰囲気になっていました。

視覚障害者の男性が、コーチに投球フォームの指導を受けている様子。周囲にはアイマスクをした、ほかのプレーヤーが2人立っている。

参加者の多くはサウンドベースボール初心者でしたが、練習が進むにつれてできることが増えていきました。まっすぐ走る、相手の声を頼りに送球する、バットでボールを捉えるなどが、それぞれ上達していました。私自身も、「音を頼りにここまでプレーできるのか」と驚く場面が何度もありました。

練習終了後に参加者の皆さんとお話したところ、この競技に興味を持ち継続的に練習会に参加を希望される方も多かったので、サウンドベースボールの今後の広がりを感じられる1日となりました。

プレーして初めてわかったサウンドベースボールの面白さ

今回の体験会は約2時間と短い時間ではありましたが、実際にプレーしたことでサウンドベースボールならではの魅力や奥深さを肌で感じることができました。

まず印象に残ったのが走塁です。試合ではランナーはアウトにならないよう全力疾走が求められますが、目指す塁によって目標とする音源が異なります。

1塁ベースには音源が設置されており、2塁と3塁にはそれぞれ異なる音のハンドクラッパーを鳴らすサイテッドプレーヤーがいます。そして3塁からホームまでは音によるガイドがなく、自分の感覚だけを頼りに真っすぐ走らなければなりません。決められた走路を逸脱してしまうと、たとえホームインしてもアウトになってしまいます。

日頃、視覚障害者が広い場所で一人で全力疾走する機会はほとんどありません。そのため、広いグラウンドで音を頼りに決められた走路を思い切り走る体験はとても新鮮でした。サイテッドプレーヤーと衝突する恐怖を感じながらも全力疾走で音へ向かって飛び込む勇気と、走路を逸脱しないよう正確に走るバランス感覚の両方が求められることも実感しました。

バッティングもサウンドベースボールならではの奥深さがあります。この競技にはピッチャーが存在しないため、バッターが片手に持ったボールを落とし、地面に着く前にもう片手に持ったバットで打ちます。通常両手で振るバットを片手だけで振ることがそもそも大変で、参加者の多くが、空中にあるボールの位置とバットの軌道を合わせることに苦戦していました。しかし、タイミングよくバットの芯でボールを捉えた瞬間は非常に爽快で、思わず何度も挑戦したくなる楽しさがありました。

守備では、広いグラウンドで転がるボールの鈴の音だけを頼りに捕球し、素早く正確にセカンドベースのサイテッドプレーヤーへ送球する必要があります。広いグラウンドでは周囲の雑音も多く、思っていたよりも捕球がとても難しかったです。ボールの位置を正確に聞き分ける集中力に加え、送球の正確さも求められるため、想像以上に高度な技術が必要でした。また、守備範囲が重なる場面では、選手同士が声を掛け合いながら接触を防ぐ必要があり、チームワークの重要性も強く感じました。

プレーを通して感じたのは、サウンドベースボールは単に「見えなくてもできる野球」ではなく、音や仲間とのコミュニケーションを活用しながら、新しい野球の楽しさを生み出している競技だということです。競技を知るだけでは分からない魅力が数多くあり、実際に体験することで、その面白さをより深く実感することができました。

視覚障害者の男性が、グローブを左手に着け、右手でボールを持ち集中している様子。

日本で広がるサウンドベースボールの未来に期待

サウンドベースボールは、世界では多くの国で親しまれ、世界大会も定期的に開催されていますが、日本での普及活動は始まったばかりです。今回開催された日本初の公式練習会は、日本における新たな一歩となる貴重な機会だったと感じています。

今回参加して改めて実感したのは、サウンドベースボールは視覚障害の有無や野球経験に関わらず、多くの人が一緒に楽しめるスポーツだということです。

サウンドベースボールは選手だけで成り立つ競技ではありません。サイテッドプレーヤーをはじめ、スタッフやボランティアなど、多くの人の支えによって競技が運営されています。

一般社団法人サウンドベースボールジャパンでは、選手やサポーターを随時募集しています。体験会も開催されており、初めての方でも安心して参加できる環境が整えられています。興味を持たれた方は、ぜひ公式サイトをご覧いただき、問い合わせフォームから気軽に連絡してみてください。サウンドベースボールを楽しむ仲間が全国で増えていくことを期待しています。

一般社団法人サウンドベースボールジャパン公式サイト (外部リンク)

Spoliteでこれまで取り上げた視覚障害者のスポーツについては、以下の記事でまとめています。

執筆:ケビン
記事内写真提供:一般社団法人サウンドベースボールジャパン
編集協力:株式会社ペリュトン

この記事を書いたライター

Spotlite編集部

Spotlite編集部は、編集長で歩行訓練士の高橋を中心に、視覚障害当事者、同行援護従業者、障害福祉やマイノリティの分野に精通しているライター・編集者などが協力して運営しています。

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