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ストーリー

未経験から世界のトップに!日本ゴールボール協会が選手発掘・育成プロジェクト「めざせNext ORION ゴールボールキャンプ」を開催

ゴールボール競技中の様子。ゴール前でボールを投げようと、前かがみで右腕を大きく後ろに引いている選手と、守りの準備をしている二人の選手が見える。ゴール裏やゴールわきに審判やほかの選手もいる。

「全盲の方、弱視の方、晴眼の方、全員が同じ条件で取り組めるスポーツです」

一般社団法人 日本ゴールボール協会の強化スタッフである塚越晶子さんは、ゴールボールの魅力をこう語ります。

ゴールボールは、視覚障害者を対象に考えられたスポーツです。1チーム3人で、音のなるボールを投げ合います。味方ゴールを守りながら、相手ゴールにボールを入れて点数を競います。全員がアイシェードと呼ばれる目隠しをつけるため、視覚障害の程度に関わらず参加できるのが特徴です。

今回は一般社団法人 日本ゴールボール協会の塚越晶子さんと辻美穂子さんに、ゴールボールの魅力や日本代表の強さ、そして未来のパラリンピック出場選手を育成するためのプログラム「めざせNext ORION ゴールボールキャンプ」について伺いました。

一般社団法人 日本ゴールボール協会(外部リンク)

2025 めざせNext ORION ゴールボールキャンプ及び検証プログラムのご案内(外部リンク)

※Spotliteを運営する株式会社mitsukiは、日本ゴールボール協会のオフィシャルサプライヤーです。

聴覚を研ぎ澄ますゴールボール。魅力は音の駆け引き

ゴールボールは1チーム3人で行う、視覚障害者を対象に考えられた珍しい球技種目です。

コートは6人制バレーボールと同じ広さで、重さ1.25キログラムのボールを投げ合います。味方のゴールを守る際は、横に寝て万歳の状態でゴールを阻止します。ボールを受け止めたら起き上がり、今度はボールを相手ゴールに投げ入れて攻撃します。

塚越さん「ゴールボールでは試合中、コート内の全選手がアイシェード(目隠し)をつけます。そのため、全員が同じ条件で競技に取り組めるのです。

視覚に障害があると激しいスポーツには取り組めないと感じる人もいるかと思いますが、ゴールボールには全員が平等に取り組むためのルールがあります。『全盲でもこんな動けるんだ』『視力に障害があってもこんなに激しいスポーツができるんだ』と自分の新たな可能性に気付いてもらえるのではと思います」

使用するボールの中には鈴が入っており、選手はこの鈴の音やバウンドする音でボールの位置を確認します。またボールを投げたあと、攻撃側は相手選手を妨害する音を出してはいけません。タイムアウト以外でゲームが進んでいる時間帯は、監督やコーチからコート内にいる選手への声かけも反則となります。

辻さん「ゴールボールの魅力は、音の駆け引きだと思います。ゴールボールはボールの中の鈴の音を頼りに行うスポーツです。相手ゴールに入れるために、自分も相手も見えない状態でどうやって相手をコントロールするか、そのための作戦をどう立てるか。観客も戦術を予想しながら楽しめます」

ゴールボールは音を頼りにプレーすることや、時速50キロメートルになることもあるボールを全身で受け止めることから「静寂の中の格闘技」ともよばれています。

【ゴールボールの紹介動画】画像をクリックすると、動画が再生されます。

パリ2024パラで金メダル。勢いをみせる日本代表「オリオンJAPAN」

ゴールボールの日本代表は「オリオンJAPAN」という愛称で親しまれています。パリ2024パラリンピックでは男子日本代表が金メダル。また2025年4月にドイツで開催された「Goalball Nations Cup Berlin2025」では準優勝を果たしました。

女子日本代表は、アテネ2004パラリンピックで初出場3位、ロンドン2012パラリンピックでは優勝を飾っています。直近では、2025年5月末に開催された「Malmö Lady Intercup 2025」で準優勝を飾り、さらなる活躍に期待が高まる結果となりました。日本のゴールボール界は男女ともに盛り上がりを見せています。

辻さん「2021年の東京パラリンピックの前あたりから、ナショナルトレーニングセンターで練習するようになりました。1〜2週間の長期合宿を年数回、継続的に行うようになってから、競技力がさらにぐんと上がったと感じます」

横一列に並んで立つオリオンJAPAN女子チームの選手7人。銀メダルを首からかけていたり、手に持ったりしている。その両隣には4人のコーチやトレーナーが立っている。真ん中の3人は大きな日の丸の旗を持っている。

ゴールボールで自分の可能性を広げてほしい

「オリオンJAPAN」の活躍により、徐々に注目されてきているゴールボール。ただ、日本国内の競技人口は200人ほどといわれています。また日本ゴールボール協会の強化指定選手は男子が18人、女子が10人ほどです。ゴールボールの認知度には課題があると塚越さんはいいます。

塚越さん「ゴールボールは視覚障害の種目として、盲学校などでは授業や部活動で触れる機会があります。現在の選手には、元々学校でプレイしていた方が多いです。しかし近年はインクルーシブ教育が推進されていることなどから、盲学校の生徒が減少しています。そのため、ゴールボールに触れる機会が減りつつあるのです」

教育方針の変化とともにゴールボールを知らない人や、聞いたことがあってもプレイしたことがない人が増えているのが現状です。

塚越さん「日本代表選手の中には、フロアバレーボールという違う種目をやっていて、そこから私たちが視察に行って『ゴールボールやってみませんか』と声をかけて選手になった方もいます」

ゴールボールの競技中の様子。黒い服を着た女性が青いボールを持ち、ゴールに向かって投げようとしている。その先には、相手チームの選手3人がゴールの目の前に座って構えている。

辻さんは、ゴールボールは自分の可能性を広げるきっかけになってほしいと語ります。

辻さん「日本ゴールボール協会は『見つけよう可能性!極めよう心眼!ともに楽しもうゴールボールを!』を基本理念にしています。ゴールボールを通じて自分の可能性を広げたり、社会とのつながりを持ってもらえたら。企業様と関係ができたり、アスリート雇用につながる可能性もあります。選手本人の世界観も広げてほしいですし、社会の中での支援されるだけではない自分の役割を見つけてもらえたら嬉しいです」

未経験でも参加できる「Next ORION キャンプ」

ネクストオリオンキャンプ参加者3人の笑っている様子。ライトグリーンのビブスを着ている。後ろの壁には、競技力向上事業の文字が記載された旗が取り付けられている。

日本ゴールボール協会では、ゴールボールの認知や未来のパラリンピック代表を目指す若者の発掘・育成を目的としたプログラム「めざせNext ORION ゴールボールキャンプ」を実施しています。そして「2025めざせNext ORION ゴールボールキャンプ」が2025年8月からはじまります。

塚越さん「『めざせNext ORION ゴールボールキャンプ』は今回で3回目となります。以前も発掘キャンプを定期的に行っていましたが、『めざせNext ORION ゴールボールキャンプ』になってからはパラリンピック出場を目指す人を発掘する色合いが強くなりました。強化スタッフが参加し、将来の日本代表になりそうな選手を発掘するのが一つの目的です」

「めざせNext ORION ゴールボールキャンプ」は全4回で構成されています。各回は2日間で、第1回キャンプへの参加は必須です。以降のキャンプは、参加者の中から選抜された場合に参加可能になります。

塚越さん「キャンプは、次世代選手の合宿と一緒に行われます。まずは、競技の前に体を温め、動きやすくするための運動から始めます。その後、参加された方がゴールボール経験者なら、投球やディフェンスの練習、ゲームなどを行います。ゴールボール未経験の方なら、最初は見学してもらい、投球やディフェンス、ゲームの流れなどを体験しながら教えます。練習は経験者と未経験者などに分けて、進めていきます。パラリンピック出場選手も参加予定です。一緒に練習したり、指導を受けたり、講話を聞いたりする時間もあります。

ゴールボールの競技経験は問いません。ゴールボールをやったことがない方でも、パラリンピックを目指す強い意志やポテンシャルがある方にぜひ参加いただきたいです」

「2025めざせNext ORION ゴールボールキャンプ」の対象は、「盲学校や弱視学級、一般高校等関係者からの推薦による者のうち、高校生以上から年齢が概ね25歳前後の方」「B1〜B3までの視覚区分を有している方」です。

ゴールボールで世界のトップを目指しませんか?

最後に、塚越さんにこの記事を読まれる読者の方に伝えたいメッセージをうかがいました。

塚越さん「元々スポーツをやっていた方が視覚障害になり、そのスポーツができなくなったという方もいると思います。そんな方々には『トップを目指せる種目がある』とお伝えしたいです。挑戦する気持ちがあったら、見えづらくても見えなくても、もちろん未経験の方でも問題なし。チャレンジしてみないことには始まりません。ぜひ一緒にゴールボールで、世界のトップを目指しませんか?」

2025 めざせNext ORION ゴールボールキャンプ及び検証プログラムのご案内(外部リンク)

編集協力:株式会社ペリュトン
取材:aki
執筆協力:古賀瞳

写真提供:日本ゴールボール協会

この記事を書いたライター

Spotlite編集部

Spotlite編集部は、編集長で歩行訓練士の高橋を中心に、視覚障害当事者、同行援護従業者、障害福祉やマイノリティの分野に精通しているライター・編集者などが協力して運営しています。

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