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生活

視覚障害児の通学を支援する制度とは?移動支援や同行援護、当事者の声をご紹介

新緑の広い道を、白杖の人とガイドヘルパーが歩いている。

視覚障害者にとって、特に慣れていない外出の時には多くの危険が伴います。それは視覚障害児の通学でも同じです。

視覚障害児が安全に登校するための方法として、同行援護や移動支援の利用があります。ただし、いくつかの条件を満たす必要があります。

この記事では、視覚障害児の通学に同行援護や移動支援が使えるか、全国の自治体を対象とした実態調査結果を解説します。

視覚障害児の通学をサポートする制度

視覚障害児の通学に関わる制度には、以下の2つがあります。

  • 同行援護
  • 移動支援

各制度について、ひとつずつ説明します。

同行援護

同行援護とは、視覚障害者が利用できる国の外出支援制度です。移動時の支援や外出に伴う視覚的情報の提供、排せつや食事等の介護なども支援内容に含まれます。

ただし、同行援護は「通勤・通学」や「通年かつ長期にわたる外出」には利用できません。そのため、基本的に通学に同行援護は利用できないのです。

しかし、以下のような場合は、通学でも同行援護を利用できる可能性があります。

  • 最終的に一人で通学できるように、通学路になれるまでの短期間だけ同行してほしい場合
  • 普段は保護者が付き添いしているが、保護者の体調不良で、付き添えない場合
  • 授業の開催場所変更により、目的地が通い慣れた校舎とは異なる場合

最終的な判断は各自治体が行うため、通学で同行援護を利用したい場合、各市区町村の福祉窓口で相談してみましょう。

参考:同行援護とは?支援内容や対象者・移動支援との違いを解説 | Spotlite(内部リンク)

移動支援

同行援護が利用できなくても、移動支援が視覚障害児の通学に使える場合があります。

移動支援とは、各市区町村が実施主体となる障害者の外出支援制度です。

同行援護とは異なり、移動支援は通年かつ長期にわたる外出も支援範囲内です。また、同行援護対象者の要件を満たす人でも、同行援護の対象外となる外出の場合において、移動支援が利用できます。

参考PDF:移動支援事業について|厚生労働(外部リンク)

ただし、移動支援は各市区町村が実施主体の制度です。そのため、利用条件や実施方法、支援範囲などは市区町村により異なります。通学に移動支援を利用したいと考えている場合は、お住まいの自治体にお問合せください。

同行援護と移動支援の違いについては、以下の記事も参考にしてください。

参考:【比較表つき】同行援護と移動支援の違いとは?対象者や資格なども解説 | Spotlite(内部リンク)

視覚障害児の通学に対する意見

色とりどりのリュックを背負って歩く、6歳くらいの子供の集団。
(写真素材:Unsplash)

ここまで、各制度の違いをご紹介してきましたが、まだ実際に利用していない場合、なかなかイメージが湧きにくいのではないでしょうか。

そこで視覚障害児の通学に対する意見を紹介します。保護者と視覚特別支援学校、それぞれの意見をまとめました。

ここで紹介する調査概要は以下の全国調査から引用しています。

それぞれの意見をみていきましょう。

保護者からの意見

まずは、視覚障害児の保護者の意見から引用して紹介します。

※調査内容から抜粋し、語尾などを一部編集しています。

同行援護は、通学では利用できないので、それをカバーしようとすると自治体裁量で行われる地域生活支援事業の移動支援に頼ることになるが、通学利用を認めているかどうかは自治体によってバラバラ。(3ページ)

移動支援は各自治体の判断で行われるため、通学利用を認めている自治体と認めないとする自治体があります。

また、以下のような意見もありました。

同行援護でも移動支援でもどっちでもいいので、せめて義務教育中の通学の支援だけは住む場所によらず確保してほしい。(3ページ)

住む場所にかかわらず、義務教育中の通学は支援できるようにしてほしい、という保護者の声もあります。

引用元PDF:視覚障害者の移動を支援する同行援護に関する実態把握と課題(5)(外部リンク)

視覚特別支援学校(盲学校)からの意見

次に、視覚特別支援学校(盲学校)側の意見を引用して紹介します。

※調査内容から抜粋し、語尾などを一部編集しています。

本校は県に1校の視覚特別支援学校で、スクールバスもなく、広範囲から保護者の送迎で通学しています。通学には使える福祉の支援がなく、保護者の負担が大きくなります。通学の送迎が難しいため本校入学をあきらめるケースもあります。(3~4ページ)

上記のように、保護者の送迎で通学している場合は保護者への負担が大きく、入学を断念するケースもあるようです。

単独歩行が困難な児童生徒で何らかの理由で保護者による送迎ができない場合には児童生徒の体調に関わらず登校できない状況です。(3~4ページ)

同行援護や移動支援が利用できない場合、保護者による送迎が必要となります。そのため、保護者の都合がつかないときは児童が登校できない場合があります。

自宅とスクールバス停の間の通学支援が空白状態となっている生徒もいます。( 3〜4ページ)

このように、自宅とスクールバス停までが空白になっている場合があります。そうなると、保護者の付き添いや送迎が必要となり、保護者の負担が増えてしまいます。

上記の視覚特別支援学校からの意見を集めた調査の概要は、以下のとおりです。

  • 調査方法:全国の盲学校69校の学校長に対して、郵送方式のアンケート調査を実施した。
  • 有効回答:全国の盲学校69校中42校から有効回答。
  • 調査時期:2013 年 10 月 22 日から 2014 年2月 25日
    (注:盲学校の表記は原本のママ)

引用元PDF:視覚障害者の移動を支援する同行援護に関する実態把握と課題(5)(外部リンク)

冬服を着て、芝生の上で手をつなぐ三人の子どもの後ろ姿。左から8歳くらい、2歳くらい、5歳くらいの子ども。
(写真素材:Unsplash)

最後に

視覚障害児の通学は、同行援護の利用が出来なかったり、移動支援では各自治体により利用条件が異なるなどの各制度ごとに違いがあるので注意しましょう。

また保護者や視覚特別支援学校からの意見をまとめたところ、改善すべき点や支援が不十分な点もみられました。

視覚障害児が少しでも安全に登校できるよう、利用できる制度がないかを各自治体の担当窓口に確認してみると良いでしょう。

Spotliteでは、視覚障害者の外出時にガイドヘルパーを派遣する障害福祉サービス「同行援護」の事業所を運営しております。利用者、ヘルパーともに、若年層中心の活気ある事業所です。余暇活動を中心に、映画鑑賞やショッピング、スポーツ観戦など、幅広いご依頼に対応しています。お気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いたライター

Spotlite編集部

Spotlite編集部は、編集長で歩行訓練士の高橋を中心に、視覚障害当事者、同行援護従業者、障害福祉やマイノリティの分野に精通しているライター・編集者などが協力して運営しています。

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