言葉でナビをする。道案内の先にある「ことナビ」が目指す社会とは。

実際の地図の上に、ことばの道案内を開いたスマホを写している画像

皆さん、「最寄り駅から自宅までの道のりを言葉だけで説明してください」と言われればどのように説明しますか?

地図や画像の理解が困難な視覚障害者などを対象に、ことばの地図を制作しているのが、認定NPO法人ことばの道案内(東京都新宿区)です。
首都圏を中心とした全国の各施設や駅構内の言葉の地図をWebサイトやアプリで公開しています。

今回は活動の概要を紹介するとともに、代表理事の市川浩明(いちかわ ひろあき)さんに大切にしている思いや利用者からの反響などを伺いました。

認定NPO法人ことばの道案内とは

認定NPO法人ことばの道案内(略称、ことナビ)は、主に地図や画像等を理解することが困難な視覚しょうがい者や視力の低下した高齢者の方々のために、言葉の説明による道案内、言わば、言葉の地図を制作することを大きな活動の目的にしております。

認定NPO法人ことばの道案内HP

実際の「言葉の地図」

「言葉の地図」だけではイメージが湧きにくいと思いますので、実際に公開されている地図の冒頭部分をご紹介します。

Web上で開いたことばの地図の一部を切り抜いた画像
Webサイトの「言葉の地図」

JR線 横浜駅〔JR線横浜駅南改札から 相鉄線1階改札まで〕

改札口から相鉄線1階改札口までのおよそ徒歩4分、距離89メートルの道案内を行います。
目的地は改札口を背にして、およそ右まえ2時うえの方向にあります。
点字ブロックは、ほぼ完全に敷設してあり、道案内も点字ブロックに沿って説明します。

1 改札口を背にして通路を正面12時の方向へ6メートルほどすすむと、T字形の点字ブロックがあります。(注意:途中、1メートルほどの右側に柱があります。注意おわり)参考あり。

(参考:点字ブロックのある有人改札室より案内します。点字ブロックの左9時方向に、券売機があります。参考おわり)
 
2 T字形の点字ブロックを右3時の方向へ15メートルほどすすむと、点字ブロックの分岐があります。参考あり。
(参考:点字ブロックの分岐は正面12時方向と左9時方向に分岐しています。途中、点字ブロックの分岐は1カ所で、7メートルほどで左分岐があります。参考おわり)

さらに14の項目まで案内が続きます。
横浜駅では、他の私鉄やバスからの乗り換えも含めて、9つのルートがありました。

各施設や駅を合わせて全部で2500件が登録されているそうです。

メンバー

認定NPO法人ことばの道案内では、約40名ほどが活動しています。
その中で地図の制作を行う度に参加してくれる方を募り、現地調査を行います。

学生から社会人まで様々な方が活躍しています。

ことナビはなぜ必要?

利用しやすい

「スマホのナビアプリを使えば?」「ガイドヘルパーがいれば大丈夫なのでは?」などの疑問が湧いてくるかもしれません。

ことナビは文字の読むだけで目的地までの移動ができるように作られたものです。
そのため、携帯やパソコンの音声読み上げ機能さえ使えれば、複雑なアプリの操作を覚えたり、ガイドヘルパーを依頼する必要がなく、利用しやすいのです。

スマホでナビのアプリを開いているイラスト

単独で移動する手がかりになる

視覚障害者が一人で知らない場所に行った時、点字ブロックが存在するだけでは移動することができません。
ことなびがあれば、目的地までの目印の使い方を知ることができ、一人で歩行するときの手助けになります。

駅構内の通路に点字ブロックが敷設されている画像
分岐までの距離や形状を言葉で説明する。

ことばの地図の制作方法

ことばの地図を制作するまでの手順をご紹介します。

場所を決める

以前は、メンバーと共に「美味しいラーメン店をまとめよう」ということで、都内のラーメン屋を集中して取り組むこともありました。

約10年前、東京都北区と連携したのをきっかけに、自治体や鉄道会社の委託事業や共同事業として行うことが増えました。そのため、計画に沿って公共交通施設や駅を中心に行っています。
首都圏が多いですが、国体の開催に伴い九州地方の地図を制作したこともあります。

また、スポンサーとして協力してくれているコンビニや居酒屋のチェーン店では、各店舗までの地図も制作します。

現地調査

場所が決まると、現地調査です。1箇所の地図を制作するために、現地調査を複数回行います。
理由は、視覚障害者でも見え方や歩行速度、経験などが違うため、なるべく多くの方に有益なものになるよう、精度を高めるためだそうです。

メンバーには視覚障害者が必ず1名加わり、当事者の目線から気付いた点などをフィードバックします。
普段は、視覚障害者1名と晴眼者2名の3名のチームで行うそうです。

現地調査の様子は、実際に体験してきましたので、後日詳しくご紹介します。

駅構内で、ボランティアが必要な情報をメモしている画像
現地調査のレポートもお楽しみに。

メンテナンス

1度制作した場所でも改修工事や店舗の入れ替わりなど、環境はどんどん変化していきます。そのため、定期的に確認作業を行います。

ことばの地図を作成するポイント

+α の情報を加える

移動の手順の他に、「参考情報」と「注意情報」という項目があります。
参考情報は知っておけば有益になる情報、注意情報は危険を避けるために伝えるべき情報です。必要に応じて、項目から選びます。

匂いや音がする場所を記録する

視覚障害者が歩行する際の手がかりとなるのは、点字ブロックだけではありません。
今回は、カフェのコーヒーの匂いや、花屋の前から花の香りがしていたことを記録しました。

通路の脇で、カフェの入口がオープンになっている画像。
営業時間には注意が必要だが、匂いも手がかりになる。

音声ユーザーへの配慮

視覚障害者の中には、スクリーンリーダーを使って音声で確認する人がいます。
地名や固有名詞など、読み上げが困難なものは平仮名で表記します。
また、句読点の位置だけで、音程が変わって聞き取りにくいこともあるそうです。
公開前には音声読み上げでの確認も行っているそうです。

ことナビ代表理事 市川浩明さんのお話

お話する市川さんを正面から撮影した画像
ことナビ代表理事 市川浩明さん

ー実際に利用された方からどのような反響がありましたか?
視覚障害者だけでなく、ガイドヘルパーの方が初めての場所に行く時にことなびを使っているという声を聞いた時は嬉しかったです。
「地図を見ても分からないけど、ことなびなら文字の通りに進めば目的地がある」とおっしゃっていました。まだまだ私たちも気付いていないような、色々な可能性があるのかなと思います。


ー確かに視覚障害者に限らないですね。一方、課題はあるのですか?
街中の正確な情報を入手することです。1度制作した後も定期的に確認作業を行っていますが、常に最新の情報が掲載できている保証はありません。1番早く変化に気付くのは地元の方だと思うので、何か相違点があれば、どんどん教えてほしいです。


ーことナビに関心がある晴眼者に伝えたいことはありますか?
先日、とある施設までの点字ブロックの敷設状況を地図にまとめたPDFを頂きました。でも、目が見えない私たちが一人で理解することはできません。
周りで関わっている人たちの自己満足で終わらせないように、実際に視覚障害者と関わって、本当に必要なことを知るきっかけとして、ことなびを利用してもらえるといいのかなと思います。


ー実際の支援と視覚障害者のニーズが合っていないことがあるのですね。

そうですね。それを避けるためには、本質は何かを常に意識することが大切だと思っています。ことナビの活動はどうしても地図の制作に焦点が当てられますが、それがゴールではありません。視覚障害者が安全に、安心して外出をするための1つの方法としてことなびという選択肢があるだけです。本当はことナビがなくても、街の中でお互いが助け合って暮らせる社会があればいいですよね。
そのため、ことナビに関わってくれる人が視覚障害者の困りごとを理解して自分が社会の中でできることを考えられるような活動にしたいです。

最後に

1箇所の地図を作るために現地調査を複数回行っていることに驚きました。

ことなびは、視覚障害者だけでなく、高齢者や地図を読むのが苦手な人など、多くの人にとって有益なものでした。

自宅から駅、そして駅から職場…いつも当たり前に通っている道も、言葉だけで説明しようすると新しい気付きがあるかもしれません。

ことばの地図をご利用されたい場合は、下記のWebサイトやアプリでぜひ地図をご利用ください。

お問い合わせはこちらまで。
認定NPO法人ことばの道案内 
メール:info@kotonavi.jp

Webサイト

認定NPO法人 ことばの道案内

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公共施設、医療機関、商業施設などのルートが掲載されています。
(駅に関する情報は、下記の「kotonavi Stathion」をダウンロードください。)

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ABOUTこの記事をかいた人

アバター

1991年香川県生まれ。広島大学教育学部卒業後、国立障害者リハビリテーションセンター学院修了。視覚障害者のための福祉施設での勤務を経て、ガイドヘルパーの仕事を行う。教員免許(小学校・特別支援学校)を保有。歩行訓練士。Spotlite発起人。