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施設・サービス

ロービジョンの利用者へ配慮したデイサービス。具体的な工夫と想定外のよい影響とは?

エバーウォークの職員が利用者と話をしている画像。職員の背中にエバーウォークのロゴが入っている。

先日、東京都墨田区にある歩行訓練特化型デイサービス「エバーウォーク」へ見学に行きました。

エバーウォークは、以前インタビュー記事で取り上げた吉野由美子さんが通っているデイサービスの施設です。

吉野さんと職員が一緒に行った見えにくさへの具体的な配慮と、想定外だった他の利用者へのよい影響をご紹介します。

参考:「ささやかなことで生活は変わります。視覚障害リハビリテーションの必要性を多くの人に知ってほしいです」吉野由美子さん(記事リンク)

歩行訓練特化型デイサービス「エバーウォーク」とは

株式会社エバーウォークが運営するデイサービスの通所施設です。「100歳まで、歩く」をモットーに、介護保険を利用して歩行に特化したプログラムを提供しています。施設は東京都墨田区を中心に3か所あります。

介護保険やデイサービスの詳細については、下記の厚生労働省のリンクからご覧ください。

介護保険とは?(外部リンク)

どんな介護保険サービスがあるの?

通所介護(デイサービス)とは?

エバーウォークの入り口の画像。黄色い背景に黒字の大きな看板がある。

3つの特徴

  1. リハビリテーションの専門家が常駐
    理学療法士が対象者ひとりひとりについて医学的・社会的視点から身体能力や生活環境等を十分に評価し、それぞれの目標に向けて適切なプログラムを作成します。エバーウォークでは理学療法士が各施設2名以上常駐しています。

  2. 3時間で効率的な運動を実施
    午前、または午後の半日(3時間)滞在で集中的に運動をしていきます。
    一日縛られることがないため、メリハリのある一日を過ごすことができます。余った時間で墨田区の歌教室に行ったり、趣味に時間を有効活用する方もいます。

  3. 歩行の改善にこだわった運動プログラム
    歩行は、様々な要素から成り立つため、単なる筋力トレーニングのみでは歩行の改善は図れません。全身の筋肉や関節、それを制御する神経系や心肺機能など、様々な機能を熟知した理学療法士が個別にアプローチするため、
    より効率的に歩行能力を改善することが期待できます。

    ※株式会社エバーウォークHPより引用

施設紹介

吉野さんが通うエバーウォーク両国店を見学しました。利用者は、5~6人のグループに分かれて、6つのプラグラムを20分ごとにローテーションしていきます。行き帰りは車で送迎してくれるので安心です。

皆様に笑顔で迎えていただき、明るく楽しい雰囲気が伝わってきました。

施設の中で運動プログラムを行っている画像。

見えにくさへの配慮

エバーウォーク両国店で行われているさまざまな工夫をご紹介します。

吉野さんの見え方は、良い方の目の視力が0.15のロービジョンで、視野障害はありません。

吉野さんが自身の見え方を丁寧に伝えることで、店舗管理者の舟越さんを始め、スタッフの皆様と1年以上をかけて少しずつ改善してきたそうです。

全体スケジュールの確認

【改善前】
利用者は、当日のグループ分けと1日の流れをホワイトボードの掲示で確認していました。黒の細いフェルトペンで書かれていたため、吉野さんが読み取ることは難しく、種目が変わるごとに職員に次の種目を聞いていたそうです。

【改善後】
利用者の名前と種目名をそれぞれ太字の活字体で印刷し、磁石でホワイトボードに貼りつけるようになりました。

名札は、吉野さんだけ白黒反転したものになっているため、「吉野」という文字が読めなくても札が白か黒かで自分の名前を判断ができるようになりました。

種目は、それぞれ縁取りの色を変えたことで、ボードから3m以上離れた位置でも確認できるようになりました。

トイレ

【改善前】
空いているか否かを、小さな鍵の窓を見て判断していました。視覚障害の有無に関わらず分かりにくいため、利用者間で何回かトラブルがあったそうです。

【改善後】
「空き」「使用中」というボードを入口にかけて裏返すことで、一目で分かるようになりました。

トイレの入り口の画像。空き状況を示すボードがぶら下げられている。

トレーニングマシーンの操作盤

【改善前】
ボタンが多く、コントラストも高くないため、操作手順が分かりにくかったのです。

【改善後】
必要なボタン以外を覆い、操作手順を示したカバーを取り付けました。
ユニバーサルデザインを学ぶスタッフが、コントラストやフォントを工夫してデザインしているそうです。

トレーニングマシーンの操作盤の画像。

施設内のレイアウト

【改善前】
他の利用者からの要望もあり、マシーンの位置を頻繁に変更していたそうです。

【改善後】
色々な配置を試した結果、マシーンの位置を固定して時計回りに移動すると次の種目に移れるようにしました。そうすることで、ホワイトボードの掲示を見なくても移動できるようになりました。

利用者がウォーキングマシーンを利用している画像。

改善後の効果

もともと吉野さんの見えにくさへの配慮から始まった工夫ですが、他の利用者や職員にとってもいい影響がたくさんあったそうです。その一部をご紹介します。

  • ホワイトボードの掲示を変えたことで、種目の移動時に迷う利用者が減った
  • 利用者同士の衝突や転倒のリスクが少なくなった
  • 利用者が自分でできることが増え、職員が業務に集中できるようになった
  • トイレのトラブルが減った

これらの効果は舟越さんや吉野さんも予想していなかったそうです。

最後に

エバーウォーク両国店は、視覚障害者のための施設ではなく、視覚障害リハビリテーションの専門家が勤務しているわけでもありません。

その中で、1利用者である吉野さんとの対話から様々な改善を行い、多くの利用者や職員への影響があったことは、他の介護施設や病院などで転用できると思います。

次回は、エバーウォーク両国店の施設管理者舟越さんと吉野さんへのインタビューをお届けします。見えにくさへの配慮を始めたきっかけや大変だったこと、大切にしている考え方などを詳しくお伝えします。

舟越さんと吉野さんが椅子に座って話をしている画像。

お問い合わせ

株式会社エバーウォーク(外部リンク)

この記事を書いたライター

高橋昌希

1991年香川県生まれ。広島大学教育学部卒業後、国立障害者リハビリテーションセンター学院修了。視覚障害者のための福祉施設での勤務を経て、ガイドヘルパーの仕事を行う。教員免許(小学校・特別支援学校)を保有。歩行訓練士。Spotlite発起人。

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1991年香川県生まれ。広島大学教育学部卒業後、国立障害者リハビリテーションセンター学院修了。視覚障害者のための福祉施設での勤務を経て、ガイドヘルパーの仕事を行う。教員免許(小学校・特別支援学校)を保有。歩行訓練士。Spotlite発起人。

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