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言葉の地図「ことナビ」ができるまで。現地調査を体験レポート。

駅構内で現地調査をするボランティアさんの画像

夏真っ盛りの8月3日、池袋駅で行われたことばの道案内(略称:ことナビ)のイベントに参加しました。

ことナビは、言葉の説明による道案内「ことばの地図」を制作している認定NPO法人です。首都圏を中心とした全国の各施設や駅構内の言葉の地図をWebサイトやアプリで公開しています。
参考:言葉でナビをする。道案内の先にある「ことナビ」が目指す社会とは。|Spotlite(内部リンク)

今回のイベントは一般の方を対象にした体験会で、中学生から大人まで世代も職業も様々な参加者が4名集まりました。

地図を作るための現地調査の様子をご紹介します。

現地調査を体験

オリエンテーション

今回の体験会では、まず自己紹介のあと、代表理事の市川浩明(いちかわ ひろあき)さんから活動の目的や地図の制作方法、視覚障害者の生活についてお話がありました。
時計の文字盤に見立てて状況を説明するクロックポジションは、ことナビでもよく使うそうです。

最後に顧問の塚本正明(つかもと まさあき)さんから誘導法についての基礎知識を学び、いざ現地に出発です。

市川さんを誘導しながら歩くボランティアさんの画像
移動の誘導も全てボランティアさんが行う。

現地調査

1箇所の地図を制作するために、現地調査を複数回行います。
理由は、視覚障害者でも見え方や歩行速度、経験などが違うため、なるべく多くの方に有益なものになるよう、精度を高めるためだそうです。

今回はその1回目でした。

ルートは、「有楽町線池袋駅南通路西改札口から東京藝術劇場地下入り口(2b出口)」です。

有楽町線池袋駅南通路西改札口の改札を撮影した画像
ここからスタート

役割

今回は4名のボランティアが、次の役割を交代しながら行いました。

  • 距離を測る
    目印までの距離を測定します。
  • 記録する
    所定の用紙に記録します。
  • 誘導する
    市川さんを誘導します。
  • 全体を確認する
    通行の妨げにならず、安全に作業できるように声をかけます。

現地調査には視覚障害者が必ず1名加わり、当事者の目線から気付いた点などをフィードバックします。
普段は、視覚障害者1名と晴眼者2名の3名のチームで行うそうです。

作業① 位置関係の把握

まずはじめに、スタート地点から目的地まで通して歩きます。この時に大切なことは次の2つです。

  • 移動時間を測る
    視覚障害者が単独で歩行される場合は、状況に合わせて少し時間を加えて目安の所要時間とします。

  • スタート地点(今回の場合、改札)を背にして立った時に、目的地がどの方向にあるかを知る
    中途半端な角度で何回も曲がっていると、これがとても難しい…方向感覚を鍛えるトレーニングにもなりそうです。
時計を見ながら時間を確認するボランティアさんの画像
目的地までの所要時間を確認する。

作業② 距離の測定

1度スタート地点に戻り、細かな記録を行います。
まず、ロードカウンターを使い、点字ブロックの分岐や階段など目印までの距離を測ります。そのあと、点字ブロックの形状や階段の段数などを所定の用紙に記録します。

ロードカウンターのメモリを読んでいるボランティアさんの画像
メーターを見て、距離を確認する。

作業③ ソフトへの入力

現地調査が終わると、独自のソフトに結果を入力していきます。
このソフトのすごいところは、単語や定型文を選択して数値を入れるだけで道案内が完成するところです。

そうすることで、人によって言葉遣いや説明の方法が異なることなく、統一した仕様にできます。

記録用紙を見ながらパソコンに入力するボランティアさんの画像
単語や文を選択したり、数値を入力するだけでよい。

体験会を終えて

参加者からの感想をご紹介します。

  • 私たちがスマホで地図を見ながら歩くと、歩きスマホになってしまいます。ことナビは音声だけで聞けるので、晴眼者にとっても便利で安全なものになるのではないかと思いました。
  • 視覚障害者を誘導する時にどういうことに気をつけなければいけないかが分かりました。これからは誘導の方法だけでなく、本当のバリアフリーはどうものかを考えていきたいです。
  • 点字ブロックの状態に違和感を覚えました。これは本当に誰のためのものなんだろうということを改めて考えさせられました。

普段、視覚障害者と接していない方だからこそ、新鮮な視点から、多くのことに気付くのかなと感じました。

会議室で話をするボランティアさんとスタッフの画像。
和やかな雰囲気で話が弾む。

参加者からの疑問

先程の感想の中に「点字ブロックの状態に違和感を覚えた」という意見がありました。
実際に参加者から疑問の上がった箇所をご紹介します。

曲がっている

点字ブロックが斜め45度に曲がり、すぐに真っ直ぐに戻っている画像。

進行方向に直進するだけなのですが、点字ブロックは少しだけ斜めに曲がって、元に戻っています。

切れている

敷地の境目で、1度警告ブロックが轢かれて、点字ブロックが分断されている画像。

こちらも直進するだけなのですが、一旦点字ブロックが切れて、横断する形になっています。
敷地の境目なのかもしれませんが、実際のユーザーである視覚障害者にとって意味はなさそうです。

最後に

地図の制作は想像を超える手間と時間がかかる作業でした。
この大変な労力と体系化された仕組みがあるからこそ、質の高い地図が安定的に供給されていたのです。

視覚障害者が暮らしやすい社会になるための切り口は様々で、Spotliteにも活かすべき視点がたくさんありました。

現地調査は、土日を中心に首都圏で定期的に行われているそうです。
見学や体験参加も大歓迎とのことなので、ぜひ1度足を運んでみてください。

お問い合わせはこちらまで。
認定NPO法人ことばの道案内 メール:info@kotonavi.jp

Webサイト

認定NPO法人 ことばの道案内(外部リンク)

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(駅に関する情報は、下記の「kotonavi Stathion」をダウンロードください。)

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この記事を書いたライター

高橋昌希

1991年香川県生まれ。広島大学教育学部卒業後、国立障害者リハビリテーションセンター学院修了。視覚障害者のための福祉施設での勤務を経て、ガイドヘルパーの仕事を行う。教員免許(小学校・特別支援学校)を保有。歩行訓練士。Spotlite発起人。

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高橋昌希

1991年香川県生まれ。広島大学教育学部卒業後、国立障害者リハビリテーションセンター学院修了。視覚障害者のための福祉施設での勤務を経て、ガイドヘルパーの仕事を行う。教員免許(小学校・特別支援学校)を保有。歩行訓練士。Spotlite発起人。

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