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聞いてみた・やってみた

「休日が1日あれば、同行援護を活用して旅行を楽しめます!」視覚障害のある群馬叶恵さんが香川弾丸旅行に行きました

フライト中の飛行機から窓の外の翼を写した写真。ピンク色の雲が画面下に広がっている。

視覚障害者の外出をサポートする福祉サービスの同行援護。散歩や買い物などの日常的な場面だけではなく、旅行の際も利用できることをご存知でしょうか。

今回は、同行援護を利用して日帰り旅行を楽しんだ群馬叶恵さんの体験談をお届けします。目的地は、うどんで有名な香川県。ガイドヘルパーを利用しながら、思い出に残る旅行を実現させたと話す群馬さんに、旅の様子をたっぷりと聞きました。

群馬叶恵さん略歴

進行性の緑内障により、文字は見えず、光がぼんやり見える程度。あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師の国家資格を所持し、一般企業でヘルスキーパー(企業内理療師 )として勤務。視覚障害者のバスケットボール「ブランドニュー・バスケ」の活動も行っている。

左手にハンドマイク、右手にバスケットボールを持って、イベントで「ブランドニューバスケ」の説明をしている群馬さん。
群馬さんは、4月のイベントでブランドニューバスケの説明をしてくださいました。(写真撮影:Spotlite)

同行援護を利用して、香川県を巡る

─今回、香川県への日帰り旅行を楽しまれたそうですね。旅行に行こうと思ったきっかけは何でしたか?

群馬さん きっかけは、高校生のときに好きだったアニメ『ヘタリア』の再放送を見たことです。世界の国々を擬人化したアニメなので、世界旅行に行きたいと思いました。でも私、「飛行機が落ちたらどうしよう」「ハイジャックされたらどうしよう」と想像して怖くなってしまって、飛行機がすごく苦手なのです……。まずは一人で飛行機に乗れるようになろうと、フライトが数時間で済む国内旅行を選びました。

香川県にしたのは、うどんが大好きだからです。また、同行援護事業所みつき(※)さんの対応地域に香川県も含まれており、現地でみつきの同行援護サービスを利用できると知ったことも理由のひとつです。

※同行援護事業所みつきは、Spotliteの運営会社である株式会社mitsukiが運営している福祉サービスです。

─飛行機はいかがでしたか?

群馬さん これまでも飛行機に乗ったことはあったのですが、いつも誰かと一緒だったので、一人で乗るのはやっぱり怖かったですね。わずか1時間半のフライトでしたが、半分くらいの時間は泣いていました(笑)。

滑走路を飛び立つ飛行機のイメージ写真。
(写真素材:Unsplash)

─旅の行程と、どのように同行援護を利用したかを教えてください。

群馬さん 同行援護は、旅先の香川だけで利用させてもらいました。

往復ともに飛行機に乗る自信がなかったので、行きは夜行バスを利用し、帰りだけ飛行機に乗りました。


まずは仕事を16時に終えたあと帰宅し、支度をしてから新宿に向かいました。新宿駅からバスターミナルまでの道のりに交番があったので、お巡りさんにお願いして、一緒に行ってもらったのはありがたかったです。

バスの乗り降りや途中休憩では、乗務員さんの手を借りました。21時過ぎに新宿を出発して夜中に移動し、高松駅に着いたのは朝7時。一人でいる緊張と旅への期待で、車内ではあまり眠れませんでした……。

ガイドヘルパーさんとの待ち合わせは8時半でした。待ち合わせまで1時間半ほどあったので、駅周辺をぶらぶらしたり、駅員さんが教えてくれたコンビニでお土産を見たりしていました。

その後ガイドヘルパーさんと合流し、観光名所や飲食店を巡りました。眠れていませんでしたが、楽しくて、元気にまわることができましたね。

帰りは搭乗口までガイドヘルパーさんに来てもらい、19時過ぎに同行援護は終了。空港から飛行機では、グランドスタッフや乗務員の方々に手を貸してもらいながら、ひとりで飛行機に乗って帰宅しました。

うどん、赤灯台、金刀比羅宮……盛りだくさんな日帰り旅行

ざるに盛られた冷やしうどんの写真。
(写真素材:Unsplash)

─旅行当日までの準備はどのように進めましたか?

群馬さん 旅行は7月末だったのですが、みつきさんに相談したのは2カ月前の5月末。現地のガイドヘルパーさんが決まったのは6月上旬でした。

行きたい店をインターネットで調べて、出発の2週間前くらいにはガイドヘルパーさんに共有しました。当日は、高松駅で集合する約束をしました。

─香川では、どのように過ごされましたか。

群馬さん 今回の旅のメインは、やっぱりうどん。おいしいうどん屋さんを巡り、5杯も食べちゃいました。やっぱり本場は違いますね。ひねりのない感想ですが、本当に美味しかったです!

あとは観光です。今回は、「赤灯台」や「金刀比羅宮」などを巡りました。金刀比羅宮では785段ある階段をのぼってお参りしました。帰りは参道にある無料の足湯に行ったり、アイスを食べたりして過ごしました。

カラフルなあられがトッピングされたソフトクリーム。
(写真提供:群馬叶恵さん)

そのあとは、「ヤドン公園」に行きました。香川県では、「うどん」とポケモンの「ヤドン」の音の響きが似ていることから、ヤドンとのコラボが多いのです。それを夜行バスの中で知り、ポケモンが好きなので、急遽プランに入れてもらいました。ヤドン公園にはヤドンをモチーフにした遊具がたくさんあったので、一通り遊びました(笑)。ガイドヘルパーさんに写真も撮ってもらいました。

参考:ヤドン公園|うどん県PR団ヤドン(外部リンク)

同行援護を利用して「行きたかった場所はすべて行けました」

─今回、旅行で同行援護を利用されてみていかがでしたか?

群馬さん 現地のガイドヘルパーさんとよく相談してプランを組めたので、行きたい場所を効率的に回れました。一人だと周囲の方に聞きつつ移動することになるので、時間が取られてしまうのです。特に今回は日帰りで時間が限られていたのですが、ガイドヘルパーさんのおかげで行きたい場所にはすべて行けました。急遽お願いした場所も案内してもらえて、困ったことやハプニングなどもありませんでした。

日ごろからみつきさんの同行援護は利用しているので、みつきさんに対する信頼感や安心感も大きかったと思います。

─ガイドヘルパーのほか、駅員や乗務員、空港のスタッフ、警官の方たちにも力を借りての旅行だったのですね。声をかけるとき、普段から意識されていることはありますか?

群馬さん 誰かに何かを頼むときは必ず、「いま、お時間ありますか?」と尋ねるようにしています。あると答えていただけた場合に、「ちょっとお手伝いをお願いしてもいいですか?」と伝えていますね。相手にもスケジュールや仕事がありますから、手伝ってもらって当たり前とは考えていません。

公共交通機関やホテルの方たちは、障害者への対応を学ばれていることもあり、いつも快く受けてくださるのでとても助かっています。

2名分の旅費負担がネックに

─視覚障害者に向けて、旅行を楽しむためのアドバイスがあればお聞かせください。

群馬さん 「人の手を積極的に借りる」ということですね。もちろん相手の方が了承してくださればの話ですが、そのほうが迷ったり悩んだりする時間を減らせます。安全面でも良いと思います。

「行ってみたい所があるけど、視覚障害があるから……」と諦めてしまう方は多いかもしれません。しかし私は今回のように旅行先で同行援護を依頼したり、視覚障害者の旅をサポートしてくれるNPOに依頼したりしながら、旅を楽しんでいます。旅行に行きたいけど不安という方は、そういった制度も活用しながら楽しんでみていただきたいです。

イベントみつきエキスポで、視覚障害者のバスケットボール「ブランドニューバスケ」の実演をする群馬叶恵さん。
ブランドニューバスケ実演中の様子。(写真撮影:Spotlite)

─同行援護のこれからに期待することはありますか?

群馬さん 同行援護を依頼できる事業所が、日本各地に増えるとありがたいですね。

あとは、交通費の問題が改善されると嬉しいです。旅行でガイドヘルパーさんに同行してもらう場合、自分の旅費と合わせて2名分を負担しなければなりません。電車やバスなどの公共交通機関には障害者割引があり、本人と介護者の交通費が50パーセントに割引され、実質1人分の料金で利用できるのですが、一部の航空会社や新幹線では割引がなかったり、割引額が少なかったりするのです。

こういった制度が見直されて、視覚障害者がもっと気軽に旅行を楽しめる社会になれば良いなと思います。

─今後、どのような旅行体験をしてみたいですか?

群馬さん 次は鹿児島に行ってみたいです。『ポケふた』と呼ばれるポケモンのマンホールが町中にあるみたいで、写真を撮りに行きたいと思っています。

あとは、また香川に行きたいですね。今回はうどん屋さんを中心に巡ったので、次回はドルフィンセンターという場所で、イルカと触れ合いたいです。

そしていつかは海外旅行にチャレンジしてみたいです!

(アイキャッチ写真素材:Unsplash)
執筆協力:白石果林
取材協力:aki

Spotliteでは、視覚障害者の外出時にガイドヘルパーを派遣する障害福祉サービス「同行援護」の事業所を運営しております。利用者、ヘルパーともに、若年層中心の活気ある事業所です。余暇活動を中心に、映画鑑賞やショッピング、スポーツ観戦など、幅広いご依頼に対応しています。お気軽にお問い合わせください。

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※当事務所は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、および香川県に対応しています。

この記事を書いたライター

Spotlite編集部

Spotlite編集部は、編集長で歩行訓練士の高橋を中心に、視覚障害当事者、同行援護従業者、障害福祉やマイノリティの分野に精通しているライター・編集者などが協力して運営しています。

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