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「親子の心のよりどころ」視覚障害のある子どもと保護者の会「つばさの会」とは?

つばさの会オリジナル商品のマスキングテープをアップで撮影した画像。
写真撮影:Spotlite

視覚障害のある子どもと保護者の会「つばさの会」は、神奈川県内の家族が中心となり、スポーツ教室や体験イベント、保護者の勉強会など子どもも大人も楽しめる活動を行っています。

また、オリジナル商品のマスキングテープやシールも製作・販売しています。

代表の亥埜 理絵(いの りえ)さんにつばさの会ができた経緯や活動内容、オリジナル商品に込めた思いなどを伺いました。

つばさの会とは

「見えない子たちのための水泳教室をつくろう!」がきっかけで、平成23年に神奈川県の視覚障害のある子どもと保護者でたちあげました。
百聞は一体験にしかず! 実体験の積み重ねが子どもたちの世界を広げます。
人との出会いは親も子も成長するチャンスです!
視覚障害は少数派だからこそ、情報交換や交流を通じて視野を広げることが大切だと考え、スポーツの推進、体験イベント、保護者の勉強会など、子どもも大人も楽しめる活動を行っています。

つばさの会HP
体育館で子どもと大人が40人ほど集まっての集合写真
ファミリーキャンプでの集合写真(写真提供:つばさの会)

インタビュー

つばさの会代表の亥埜 理絵(いの りえ)さんにお話を伺いました。

略歴

神奈川県在住。第一次硝子体過形成遺残(PHPV)により生まれつき全盲の娘を持つ。子育て支援を行うNPOで働く。3児の母。

立っているいのさんの上半身を撮影した画像。
つばさの会代表 亥埜理絵さん(写真撮影:Spotlite)

ーつばさの会の発足は、水泳教室を作ることがきっかけとのことです。どのような経緯があったのですか?
娘が小学校に入学するまでは、盲学校の教育相談や神奈川県ライトセンターの「ひよこの会」など、同年代の視覚障害の子どもや保護者と関わる機会がありました。しかし、小学校に進学すると、盲学校や養護学校、地元の小学校など進路がバラバラになります。さらに、健常の子どもは色々な習い事を始めます。娘はプールが好きだったので、地元の水泳教室に通わせたいと思いましたが、受け入れてくれるところがありませんでした。他の保護者と話をすると、「私たちで会を作って先生を呼ぼう」という話になり、水泳教室を開催しました。


ー「つばさの会」という名前の由来は何ですか?

神奈川県ライトセンターには視覚障害のある未就学児を対象にした「ひよこの会」や、視覚障害児の親を対象にした「にわとりの会」という集まりがありました。そこで、ひよこは成長すると羽が生えるという理由から「つばさの会」と名付けました。


ーお子さんが小学校に進学されたあとも、活動を継続されたのですね。

「水泳教室以外にも活動しよう」ということで、キャンプをしたり、スキー旅行に行ったり、保護者向けの勉強会を開催したりしています。また、日頃からFacebookで情報交換をしています。最初は母親が中心でしたが、「お父さんも育児に巻き込みたい」ということで父親の参加を促していると、父親同士が仲良くなって「おやじの会」もできました。数か月に1回、飲みに行っているようです。視覚障害のある子どもだけではなく、兄弟や親も楽しめる家族ぐるみの会になっています。

笑顔でインタビューに答えるいのさんの画像。
マスクをしていても表情豊かな亥埜さん(写真撮影:Spotlite)

ー活動の中で大切にしていることはありますか?
親同士が積極的に情報交換を行うことで、子どもに色々なことを体験をさせてあげたいと思っています。視覚障害のある子どもの子育てについて、教育相談などでは「普通に子育てをしてくだい。何でもさせてあげてください」と言われることがあります。
私は、全盲の娘が第3子なので、上の子どもたちを育てた経験があるのですが、視覚障害のあるお子さんが第1子の場合、「普通」が何か分からないですよね。
ただでさえ少数派の視覚障害児の子育ては情報が少ないですし、発達段階に応じてたくさんの経験をさせるということをひとつの家族だけで担うのは、とても大変なことだと思うのです。子育て情報も体験も、たくさんの家族で共有できればいいなと思っています。


ーそれぞれの家族のご経験を全員で共有されているのですね。
「こうすれば、上手に着替えができるようになった」というような生活上の工夫や、「あの施設は手で触って分かるものがあった」という情報を得られるのはもちろん、いろんな親子を見ることで、「こんな遊びを喜ぶんだ」と気づいて、子どもの興味の幅を広げることにつながったり、育児のコツを教えてもらえたりもします。健常の兄弟と関わったり、時には子ども同士でケンカをしたりしながら学ぶこともありますよね。

親子がキャンプ場でバーベキューしている様子。
「おやじの会」主催のキャンプでバーベキュー(写真提供:つばさの会)

ーマスキングテープやシールを開発しようと思ったきっかけを教えてください。
子どもが大きくなってくると、点字ブロックの大切さを実感するようになりました。しかし、街頭で「点字ブロックの上にものを置かないでください」と啓発活動をすることには違和感がありました。自分たちの権利を主張して、お願いばかりしている気持ちになってしまったのです。「別の方法で点字ブロックのことを知ってほしい」と思い、ママ友とランチをしている時にマスキングテープを発案しました。その後、「触ってわかる点字付きのものが欲しい」という声を多くいただいたので、実際の点字がついたシールも制作することになりました。


ーどのような思いが込められているのですか?
「かわいい」と思って手に取ったものが、たまたまこのマスキングテープやシールだったらいいですね。街を歩いていると、視覚障害のある人に直接声はかけないけれど、そっと見守ってくれている人が案外多いことに気づきます。そんな方への感謝の気持ちが込められています。
ホームページから注文いただいた商品には、子どもたちからの点字のメッセージが入ったセットもあります。点字の50音表も同封しているので、謎解きのような感じで点字を読むのを楽しんでもらい、視覚障害にも興味を持ってもらえると嬉しいです。

オリジナルシールをアップで撮影した画像。ありがとうの点字とかわいいイラストが印字されている。
オリジナル商品のシール(写真提供:つばさの会)

ー娘さんを育てる中で、印象に残っていることはありますか?
子どもたちは、成長するにつれて世界が広がり、選択肢も広がっていくものだと思います。見えない・見えにくい子どもも、小さいときは何でも興味を持ちますし、どんどん吸収していきます。
しかし、娘が小学部に入学した時、盲学校の先生から「お子さんの将来はどう考えていますか?」と聞かれました。「視覚障害の子どもの将来は親が今決めるのか?大きくなるにつれて選択肢が少なくなっていくのでは?」と衝撃を受け、「この子の将来は決めない。自分で選べるようにしたい」と考えるようになりました。


ー現在、娘さんは高校3年生とのことです。これからの娘さんのために亥埜さんが大切にしていきたいことはありますか?
地域で居場所があればいいなと思っています。今は盲学校やつばさの会という居心地のいい場所がありますが、卒業後の進路はみんなバラバラです。 盲学校に通っていると、地域の友達が少ないことがあります。最近、娘は私が働いているNPOのお手伝いをしたり、地元のラジオに出演させてもらったりしています。地域に知り合いを増やすことは本人の安心、安全のためにも大切なことだと思います。


ーつばさの会は皆さんにとってどのような居場所になっているのでしょうか。
子どもたちにとっては、学校以外で子ども同士の関わりができる貴重な場所だと思います。
保護者からは、「子育ての悩みを相談できて気持ちが軽くなった」「1人でがんばらなくてもいいと思えた」「地域で社会参加するきっかけを作ることができた」「親子共ども、心のよりどころだった」など、嬉しいお声もいただいています。
私も、つばさの会の仲間と一緒に子育てができたことで、孤独を感じることもなく、いつも楽しいことを考えて来られました。家族ぐるみで成長させてもらったことに感謝しています。

大きな布を手で持ち、ハンモックのようにして、その中で子どもたちが寝転がっている様子
年1回のファミリーキャンプでは様々な企画を行う(写真提供:つばさの会)

ーこれから取り組みたいことはありますか?
私個人の希望ですが、視覚障害のある子同士の心地良いつながりを大事にしつつ、見える子と見えない子、その家族まで関われるようなことができればいいなと思っています。
これまで、つばさの会の行事に参加するのは、視覚障害のある子どもを持つ家族だけだったのですが、健常の子どもを持つ家族にも参加してもらえるようなキャンプを企画してみたいと考えています。


ー今の社会に対して伝えたいことはありますか?

私は、障害理解という言葉が固くてあまり好きではないのです。例えば、アイマスク体験をした後に「何を学びましたか?」と堅苦しく考えず、「へーそうなんだ」で終わっていいと思います。
障害のある子どもや親に対して「かわいいそう。大変だね」ではなくて、「色んな子どもがいて、その中で見えない子どももいる」ということを知ってほしいです。ヨシタケシンスケさんと伊藤亜紗さんの書かれた「見えるとか見えないとか」という絵本がおススメです。ぜひ読んでみてください。

にこやかな顔でインタビューに答えるいのさんの画像。
終始笑顔でお話しくださいました(写真撮影:Spotlite)

オリジナルグッズ

つばさの会が製作・販売している2種類のオリジナル商品をご紹介します。シールは今年の8月から発売された新商品です。

マスキングテープとシールをアップで撮影した画像。
オリジナル商品のマスキングテープとシール(写真撮影:Spotlite)

マスキングテープ

『点字メッセージ』と『点字ブロック』の2種類の商品があります。
点字メッセージは、エメラルドグリーンの背景に「ありがとう」と「こんにちは」という点字とつばさのイラストが描かれています。
点字ブロックには、2種類の黄色い点字ブロックが描かれています。

<仕様>
15mm×長さ10mm

<価格>
・各1個250円
・おまけカード+ラッピング付き:1個350円、2個セット600円(すべて税込)

シール

オレンジとグリーンの2色が2枚ずつ計4枚を1セットとした『単品セット』と、点字50音表とメッセージカードのついた『メッセージカード付セット』があります。

<価格>
・単品セット:1個200円
・メッセージカード付セット:1個300円(すべて税込)

※20個以上ご購入いただく場合は割引があります。

マスキングテープ、シールの購入は下記のつばさの会HPからご連絡ください。
つばさの会HP お問い合わせページ(外部リンク)

お問い合わせ

つばさの会は神奈川県に在住、在学の視覚障害をお持ちのお子さんと保護者が対象です。お気軽にご相談ください。

つばさの会HP(外部リンク)

この記事を書いたライター

Spotlite編集部

Spotlite編集部は、編集長で歩行訓練士の高橋を中心に、視覚障害当事者、同行援護従業者、障害福祉やマイノリティの分野に精通しているライター・編集者などが協力して運営しています。

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Spotlite編集部は、編集長で歩行訓練士の高橋を中心に、視覚障害当事者、同行援護従業者、障害福祉やマイノリティの分野に精通しているライター・編集者などが協力して運営しています。

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