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ストーリー

オーストラリアの視覚障害者に聞く新型コロナウイルスの影響

レトロな電車の中で、笑顔で座っているジェッドさんの画像

こんにちは、高橋です。4月中旬、オーストラリアに住む視覚障害者のJed Alexander(ジェッド・アレクサンダー)さんに、新型コロナウイルスの影響について電話でインタビューを行いました。

ジェッドさんは、私の大学の先輩、藤田さんからの紹介で昨夏に初めてお会いしました。

今回のインタビューでは日常生活や仕事の変化、政府の支援など、様々な現状をお話してくれました。
※当時と記事公開時点で、内容に相違があるかもしれませんがご容赦ください。

ジェッドさん 略歴

1988年生まれ。現在はオーストラリアの区役所で勤務する。網膜色素変性症を発症し、視力は右目が0.4、左目が0.1。視野は両目とも1度。

東京オリンピックパラリンピックの撮影スポットで記念撮影するジェッドさんと藤田さんの画像。
昨夏、ジェッドさんが来日された際、記念撮影する藤田さんとジェッドさん

インタビュー

ー日常生活の中で、新型コロナウイルスの影響はいかがですか?
レストランや映画館、公共の体育館などは営業していません。スーパーなどの日用品を取り扱うお店は開いていますが、買い占めが起こっていて、野菜や生鮮食品が売り切れています。


ージェッドさんのお仕事の状況はどうですか?
私は普段、区役所で事務の仕事をしています。今回の新型コロナウイルスにより、出勤形態を選べるようになりました。上司は出勤していますが、私は自宅で仕事をしています。


ー他の仕事をされている視覚障害者の方について情報はありますか?
ミュージシャンとして、レストランで演奏をしている視覚障害の友達がいます。彼は、レストランが休業して仕事がなくなったと聞きました。
小学校の教員も仕事ができない状況です。オーストラリアの教員は、春休みや夏休みなどの学校が休みの期間はお給料がもらえないのですが、今回は、本来授業が行われる期間の休業ということで、お給料はもらえているようです。


ージェッドさんは、在宅勤務をするようになったことで困ったことはないですか?
仕事については問題ありませんが、寂しいです。私は一人暮らしをしているので、より一層孤独になりました。生活については、本当は色々なサポートを受けたいと思うときがありますが、遠慮してしまいます。今日の朝、買い物に行く時には家族に手伝ってもらいました。家族以外には頼みにくいのが現状です。


ー日本ではオンライン飲み会なども流行しています。オーストラリアでもオンラインでの交流はありますか?

友達とは、Facebookのメッセンジャーやボイスチャットなどで連絡をしています。私はゲームが好きなので、Discord(ディスコード)というソフトを使って世界中の人とゲームができます。また、映像配信サービスも利用しています。


ーオーストラリアには、障害者の生活を支援する公的な制度はありますか?
国や州、民間など様々な母体が運営するサービスがあります。今もオーストラリアでは、変わりなくガイドヘルパーのサービスは使えます。その他にも、支援制度はたくさんあります。ご飯を作ったりお風呂に入る補助などの最低限の生活のサポートは国や州で行っています。買い物や映画に同行するサポートは、民間の会社に国が支援して行っている場合もあります。私は家族が手伝ってくれるので、現在そのようなサービスは利用していません。


ー政府から個人への支援はありますか?

はい、金銭的な支援を受けました。それぞれ支給される金額が異なり、条件はとても複雑です。例えば、65歳より年配の人、失業者、障害者などは金額が上乗せされます。新型コロナウイルスの感染が長期化して、支援を受けたい人が増えているので、政府はよりサポートを手厚くしようと考えているようです。私も政府から、支援金をいただいています。


ー今の政府に対しての要望は何かありますか?
難しい問題ですが、あくまで個人の意見としてお話します。私は、国には不満をもっていないです。よく対応をしてくれていると感じています。
たくさんお金が欲しい気持ちは誰もがあると思います。しかし、この状況が続けばさらに多くの人が仕事を失って、病院や公共の施設を利用しようとします。今この時も、医療費などをはじめ、国が抱える負担が大きくなっています。
そして、いずれ新型コロナウイルスの問題が解決したとしても、個人も会社も何かしらのサポートを受けなければすぐにはこれまでの生活に戻れないと思います。
そのため、「もっともっとサポートが欲しい」と言うのではなく、今、最低限の生活の質を保証してくれる政府に感謝して、現状に満足することが大切だと思います。国が破綻してしまえば意味がないので、持続可能な社会になるように長い目で考えなければいけないと思っています。

インタビューを終えて

カフェの店内でジェッドさんと高橋が笑顔で映っている画像。
ジェッドさんは、初対面の私にも気さくにお話してくれました

オーストラリアでは国民に速やかに給付金が支給され、「あくまで個人の意見だが政府への不満はない」というジェッドさんのお話が印象的でした。

昨夏、3人で買い物をしたり、東京オリンピックパラリンピックの関連イベントに参加した時、オーストラリアでは障害者は公共交通機関が無料になるなど手厚い支援について教えてくれました。

日本の現状や政策の可否に関してはここで議論しませんが、持続可能な社会を目指す必要性を改めて感じます。

ふと、先日掲載した眼科医・澤崎弘美先生のインタビューでの一言が思い出されました。
「視覚障害者だけに優しい社会はありえません。誰もが住みやすい街は、視覚障害者も住みやすい街であると思います」

国内では感染者が少なくなってきたとはいえ、先行きの見えない不安な状況が続きます。視覚障害者の現状を伝えるニュースも複数目にします。

政府の対応に一喜一憂するだけではなく、広い視野を持ち、自分たちが何をすべきかを考えて行動していきたいと思います。

この記事を書いたライター

高橋昌希

1991年香川県生まれ。広島大学教育学部卒業後、国立障害者リハビリテーションセンター学院修了。視覚障害者のための福祉施設での勤務を経て、ガイドヘルパーの仕事を行う。教員免許(小学校・特別支援学校)を保有。歩行訓練士。Spotlite発起人。

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1991年香川県生まれ。広島大学教育学部卒業後、国立障害者リハビリテーションセンター学院修了。視覚障害者のための福祉施設での勤務を経て、ガイドヘルパーの仕事を行う。教員免許(小学校・特別支援学校)を保有。歩行訓練士。Spotlite発起人。

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