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暗闇での対話は発見の連続。ダイアログ・イン・ザ・ダークの可能性とこれから。

参加者が感想を書いたポストイットが貼られている掲示板を撮影した画像。

8月中旬、Spotliteの高橋がダイアログ・イン・ザ・ダークの期間限定イベントに参加しました。

ダイアログ・イン・ザ・ダークとは、暗闇の中の世界を体験するドイツ発祥のソーシャル・エンターテイメントです。

参加者は完全に光を遮断した空間の中へグループを組んで入り、暗闇のエキスパートであるアテンド(視覚障害者)のサポートのもと、様々なシーンを体験します。

これまで世界41カ国以上で800万人を超える人々が体験。日本では1999年に初開催され、22万人以上が体験しています。
(参照:ダイアログ・イン・ザ・ダークHP


今回は、イベントのレポートと、アテンドとして活躍する瀬戸さんのインタビューをお伝えします。

SUMMER in the dark 2019

まずはイベントのレポートです。

一般向けに期間限定で開催された「SUMMER in the dark 2019 」という夏祭りに参加しました。

「短い夏を濃く楽しむ、暗闇の中の夏祭り」というキャッチコピーに違わぬ屋台あり、盆踊りありの楽しいお祭りでした。

ダイアログ・イン・ザ・ダークの入口を撮影した画像

お祭り会場に入る前に

約30名の参加者が2つのグループに分かれ、円になって椅子に座りました。

それぞれのグループに、2名のアテンドがつきます。
私のグループのアテンドは、「クラゲ」さんと「せとせっと」さんでした。
(暗闇の中では、アテンドも参加者もあだ名で呼び合います。)

会場に入る前には、暗闇で使うお小遣いをもらい、2人組になり、白杖を手渡されます。
これで準備は完了。いよいよお祭り会場に入ります。

夏祭りの会場の入り口を撮影した画像
この先に、暗闇の世界がある。

暗闇の夏祭り

当たり前ですが、本当に何も見えません。光がないので、しばらくすれば目が慣れてくるということもありません。いつまで経っても真っ暗です。

屋台は、かき氷やスーパーボールすくいなどさまざま。

お金の区別は、周りのギザギザなどで判断します。私の相方は、「銅の匂いがするから10円?」と、嗅覚を使っていました。(そして正しく支払っていました!)

かき氷の味は、ブルーハワイとイチゴの2種類。私たちは、店員さんが味を決める「お任せ」にしました。

買ったものを持ったままうろうろしていると、たまたま出会ったアテンドの誰かがベンチまで案内してくれました。
「普段は私が視覚障害者の誘導をしているんだけど…」という不思議な気持ちと、突然ぶつかる周りの人たちに怯えて、アテンドの名前を聞くのを忘れてしまいました。

かき氷はイチゴかなと思って食べましたが、結局正解は分かりません(笑)

スーパーボールすくいは、何回やっても取れる気がせず、途中、少しだけ手でボールの位置を確認してしまいました。(今更ですが、ズルしてごめんなさい)

いくつか取れた中から、1個だけ持って帰っていいとのことで、「青がいいな」と思いながら選びました。

盆踊りでは、最初は恐る恐るでしたが、いつの間にか自分の世界に入って自由に踊ることができたのも暗闇ならではでしょうか。

夏祭りが終わった後、参加者とせとせっとさんが笑顔でお話している画像
右のハッピを着ているのがアテンドの「せとせっと」さん

お祭りを終えて

暗闇に入る前と同じように2つのグループに分かれて椅子に座り、参加者とアテンドで一緒に感想を共有します。

「移動する時や円になった時、あれだけ気軽に手を繋げるんだから男女なら恋に落ちるよね」という、女性の意見に妙に納得しました。

スーパーボールの色を確認すると、念が通じたのか、青でした。
ふと、視覚障害者の中には自動販売機やコンビニのおにぎりをランダムで買う人がいるという話を思い出しました。

今年、私にとっては最初で最後の夏祭り。
屋台でスーパーボールすくいをして、盆踊りまで…楽しい時間をありがとうございました。

木製の机の上に、ポストイットやペンが置かれている画像。

インタビュー

アテンドマネージャーの瀬戸洋平(せと ようへい)さんにお話を伺いました。
夏祭りで、私のチームのアテンドをしてくれた「せとせっと」さんです。

現在、ダイアログ・イン・ザ・ダークには約30名のアテンドがいます。瀬戸さんはアテンドの業務を行いながら、採用や教育などにも携わっています。

瀬戸さんが笑顔でお話している画像。
アテンドマネージャー 瀬戸洋平さん

ーいつからダイアログ・イン・ザ・ダークで働いているのですか?
大学生の時、盲学校の先輩から「瀬戸くんに向いてそうなイベントがあるんだけど、やってみない?」と声をかけてもらいました。大学では心理学を専攻していたこともあり、人間関係や人の変化といったことに関心があり、関わったのが始まりです。
2007年から8年ほど一般企業で仕事をした後、2015年から再びダイアログ・イン・ザ・ダークの一員として勤務しています。


ー初めてダイアログ・イン・ザ・ダークのアテンドとして暗闇を案内した時、いかがでしたか?
とても心に残ったのが『人を楽しませることができる』ということです。自分が楽しむという視点から、誰かを楽しませるという逆の視点に気付けたことが大きかったです。


ーそうなんですね。約4年間アテンドをして、やりがいや楽しさに変化はありましたか?
今は対話の場を作ることを意識しています。私は、アテンドの仕事を対話職人と呼んでいます。
ダイアログ・イン・ザ・ダークの体験は、楽しんでいただくプログラムか
ら企業研修のプログラムまでさまざまなものがあり、ご参加いただく方も多様です。その都度、お客様の中にどのような対話の場が作られたら豊かな時間になるのか考えています。


ー実際にアテンドをする中で楽しいことや印象に残っていることはありますか?
参加者の素の様子が1番近くで見れることは楽しさの一つです。例えば、暗闇になった途端一人で歩けなくなって歩き方が変わったり、恥ずかしそうにしながら手をつないだり、子どもが大人を案内していたり…
暗闇の中で感じたことを素直に伝えながら、徐々に仲良くなる様子を見るのが楽しいです。

広報の脇本さんと瀬戸さんが談笑している画像。
広報の脇本ひかるさん(左)と談笑しながら。

ー瀬戸さんが対話職人として意識していることはありますか?
参加者が本音で関わるためには、安心・安全を確保した上で、いかに子ども心や遊び心が疼くかが大切だと思います。頭で考えるだけではなく、自分の中の生き生きした気持ちが動くことで対話が深まります。
人との対話は、1人だと点、2人なら線、3人なら面になります。アテンド中は個々の様子ややり取りされる内容やエネルギーを見ながらどんな形にしていこうか、その場の雰囲気も色づいて見えてきて、どのような色にしていこうか考えています。


ー色づいて見えるとは、どういうことですか?

例えば、場が盛り上がってくれば赤っぽい色に見えたり、静かになると青や緑っぽい色に感じます。楽しいだけが暗闇ではないので、場の色を変化させることを意識しています。
違う言い方をすると、人の癖が出やすい環境です。例えば、積極的な人と消極的な人というのは顕著に出てきます。そこで、色々なゲームやアテンドの声かけによって、意図的に立場や関係性を変えるようにしています。


ーこれからダイアログ・イン・ザ・ダークを通してやりたいことはありますか?

私たちのようなアテンドをたくさん育てていきたいです。現在は30人くらいですが、仮に100人になれば違う動きができるのかなと思います。それはイベントかもしれないし、商品開発かもしれません。
これからダイアログ・イン・サイレンスやダイアログ・ウィズ・タイム(詳細は後述)などが広がれば、アテンドの中でも立場の違う人が増えてきます。これこそダイバーシティだと思います。そんなアテンドたちが広く社会で活躍していくのはとてもわくわくします。


ーダイアログ・イン・ザ・ダークの活動が広がった先、理想とする社会はありますか?
対話が広がると、もっともっと個人や地域、社会が色鮮やかになることだろうと考えています。人は、自分を素直に表現できると、生き生きしてどんどんカラフルになると思うのです。
黒が引き立つためには、白が必要です。赤と言っても、濃い赤もあれば薄い赤もあります。それぞれの色を持った人や地域が混ざり合う、鮮やかな社会になればいいなと思います。


ー暗闇の中で行う体験のまとめに、色の話が出てきたのが新鮮でした。
暗闇でできたことは、本当は普段の日常でもできることです。暗闇はあくまで仕掛けです。暗闇が何かをしたのではなくて、暗闇を体験した人の中に何かが起き、そこからさらに何かが動き出すのだと思います。

掲示板に参加者が感想を書いたポストイットが貼られているのをアップで撮影した画像。

ダイアログ・イン・ザ・ダークの可能性

ダイアログ・イン・ザ・ダークは、一般の方向けにイベントを行っているだけではありません。

暗闇の対話から広がる様々な可能性をお伝えします。

人材研修

企業を対象に、「コミュニケーション向上」「チームビルディング」「イノベーション能力向上」 「リーダーシップ養成」「ダイバーシティ推進」などのカテゴリーの中から、ニーズに合わせたプログラムを構成します。

現在までに、600社を超える企業で導入されています。

商品開発・マーケティング・プロモーション

見えないことで培われた視覚障害者の豊かな感性を活かして、触り心地や使いやすさにこだわった今治タオルと会津漆器をはじめとした商品を開発しています。

これらの商品は、公式オンラインショップでも購入できます。

また、各企業の製品やサービスを暗闇の中で使用・体験していただくことにより、視覚による先入観にとらわれないフィードバックを得たり、暗闇という非日常空間を使用したイベント企画やプレス発表会なども行っています。

会場の中で、商品を並べている棚を撮影した画像。
タオルと漆器の他には、書籍やTシャツも販売している。

アテンドスクール

対象は、視覚障害者・聴覚障害者・70歳以上の高齢者。20年間にわたり対話のプロフェッショナルを養成してきたダイアログのノウハウと、各専門分野で活躍する講師陣による講義・ワークショップ(約4カ月、全12回)から、「対話を通じて社会を変える」変革者を目指すためのスクールです。
ダイアログのアテンドを目指す方はもとより、学生の方、企業や行政に所属しながらコミュニケーションスキルを磨き仕事に役立てたい方、新たな時代に広く社会で活躍されたい方向けの講座です。

アテンドスクールHP

視覚障害者の方を対象とした「ダークコース」は、9月7日に開講しています。
※参加者の募集は終了しています。詳しくはアテンドスクールHPをご確認ください。

聴覚障害者の方を対象とした「サイレンスコース」は2020年1月、70歳以上の方を対象とした「タイムコース」は2020年秋頃に開講予定です。

ダイアログ・イン・ザ・ダークのこれから

東京に常設会場がオープン

2019年11月22日、東京の明治神宮にダイアログ・イン・ザ・ダーク「内なる美、ととのう暗闇。」がオープンします。

チケット発売は9月24日(火)予定。

対話の森

2020年には、ダイアログ・イン・ザ・ダークに加えて、音のない世界で言葉の壁を超えた対話を楽しむ「ダイアログ・イン・ザ・サイレンス」、歳を重ねることについて考えながら生き方について対話する「ダイアログ・ウィズ・タイム」を合わせた3つのエンターテインメントが体験できるダイアログ・ミュージアム「対話の森®」が東京・竹芝にオープンします。

現在、クラウドファンディングも行っています。前夜祭などの限定イベントに参加できるリターンもあります。
支援はコチラから。

最後に

実は、私は4~5年前に1度体験しており今回が2回目でした。ただ、前回とは会場も内容も異なり、違った気付きがありました。

普段ガイドヘルパーという仕事をしている時とは真逆で、暗闇の中では私がガイドを受け、アテンドの存在が1番頼りになります。

環境によって障害の有無が問題にならなかったり、立場が変わるということを再認識できました。
思うことはたくさんあるのですが、全てを書くと収まりきらないのでこの程度にしておきます。

皆様、ぜひ1度体験してみてください。

会場の入口通路を撮影した画像。左右に、パネルが掲示されている。

この記事を書いたライター

高橋昌希

1991年香川県生まれ。広島大学教育学部卒業後、国立障害者リハビリテーションセンター学院修了。視覚障害者のための福祉施設での勤務を経て、ガイドヘルパーの仕事を行う。教員免許(小学校・特別支援学校)を保有。歩行訓練士。Spotlite発起人。

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1991年香川県生まれ。広島大学教育学部卒業後、国立障害者リハビリテーションセンター学院修了。視覚障害者のための福祉施設での勤務を経て、ガイドヘルパーの仕事を行う。教員免許(小学校・特別支援学校)を保有。歩行訓練士。Spotlite発起人。

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